第6話 英雄の表彰と、街の新たな危機
(前回までのあらすじ)
フレデリク(フレド)は洞窟の特別クエストで、自身の痕跡が引き起こした勘違いを氷雪スキルで解決。フロストスライムを撃退し、パーティは大成功を収めたが、またしても街の英雄扱いされてしまう。報酬は倍増し、みんなから感謝されるが、フレドの静かな生活はますます遠のく。
ギルドの報告後、パーティは街の広場に戻った。
そこには、予想外の群衆が待っていた。
「冒険者さんたちだ! 洞窟のモンスターを倒した英雄たち!」
「ありがとう! これで森が安全になったよ!」
「市長が表彰式を準備してるって!」
商人たち、住民たち、子供たちまでが俺たちを取り囲む。
拍手と歓声が響く。
ガルドが得意げに胸を張る。
「ははは! みんな、ありがとうよ!
でも本当の功労者はこのフレドだぜ!」
エリナが笑う。
「そうよ! フレドさんの魔法がなければ、全滅だったわ!」
ティオが照れくさそう。
「僕たち、みんなで頑張ったよ……」
リリがぼそり。
「……ステーキ、食べたい」
俺は群衆の視線に耐えきれず、顔を伏せた。
(……また目立ってる。
表彰式? 冗談じゃない。
今すぐ南へ逃げたい……)
でも、俺は
みんなの笑顔を見て「ほっとけない」と思った。
(少しだけ……表彰受けて、すぐに抜けよう)
表彰式は街の中央広場で即興的に行われた。
市長——ふくよかな中年男——が壇上に立ち、
俺たちにメダルを授与した。
「ガルドの冒険隊の皆さん!
特に新加入のフレド殿!
君たちの活躍で、ラグナスはますます安全になった!
感謝の意を込めて、名誉市民の称号を授与する!」
拍手が沸き起こる。
市長が俺に握手しながら囁く。
「ところで、フレド殿。
君、酒場の『南風の杯』で働いてたそうだな。
あの繁盛ぶり、街全体に波及してる。
実は相談があるんだが……」
俺の心臓が止まりそうになった。
(……来るか)
表彰式後、市長の執務室に呼ばれた。
パーティの面々もついてくる。
市長がため息をつきながら言う。
「実は、街の経済が少し停滞してるんだ。
君の酒場改革で一時的に活気づいたが、
今度は交易路のモンスターが増えて、物資の入荷が遅れてる。
商人たちの不満が高まっててな……
君のような経済の天才に、相談に乗ってもらえないか?」
ガルドが驚く。
「経済? フレド、お前そんなこともできたのか!?」
エリナが目を輝かせる。
「すごい! 多才すぎるわ!」
俺は頭を抱えた。
(……酒場の件がバレてる。
いや、表彰式でみんなが話してるから当然か……)
俺は
また「ほっとけない」と思った。
(街が停滞したら、パーティのクエストも減るだろ?
交易路が危ないなら、みんなの生活が……)
「わかりました。
少しだけ……アドバイスします」
市長が喜ぶ。
「ありがとう! では、早速!」
それから俺は、無意識に王族教養を発動させた。
まず、交易路の地図を見て分析。
「このルート、モンスターの巣窟になってるんですね。
迂回路を提案します。
ここから東へ迂回すれば、距離は伸びるけど安全。
その分、輸送費を抑えるために、共同輸送システムを導入。
商人たちがグループで護衛を雇う形にすれば、コスト20%ダウン。
在庫管理は酒場の時と同じく、回転率を計算して……」
市長と商人代表たちがメモを取る。
パーティの面々も感心して聞いている。
ティオが囁く。
「フレドさん、頭いいんだね……」
リリが頷く。
「……経済、ステーキ買えるようになる?」
数時間後、アドバイスは終了。
市長が感激。
「これで街は復活だ!
フレド殿、君は本当に街の救世主だ!
追加報酬として、金貨20枚!
今度、街の経済顧問になってくれ!」
俺は慌てて断る。
「いや、俺はただの冒険者ですから……
これで失礼します」
パーティと一緒に執務室を出た。
ガルドが肩を組む。
「フレド、お前すげえな!
魔法だけじゃなく、頭脳も一流かよ!
これで俺たちのクエストも増えるぜ!」
エリナが笑う。
「そうだわ! 次は交易路の護衛クエストとか来るかも!」
俺はため息をついた。
(……また巻き込まれた。
街の経済活性化、俺のせいだ……)
その夜、宿で荷物をまとめた。
今度こそ逃亡だ。
もっと南の港町へ。
ビーチリゾートへの船が出てるはず。
でも、窓から外を見ると、
街の灯りがさらに明るくなっていた。
商人たちが早速俺のアドバイスを実行し、
夜市が開かれている。
(少しだけ……街が良くなったな)
俺は小さく笑った。
でも、すぐに顔をしかめた。
(いやいや! 俺は静かに暮らしたいんだ!
このままじゃまた表彰だ!)
翌朝、早朝に宿を出ようとした瞬間、
ドアがノックされた。
「フレド! ギルドから緊急クエストだ!
魔王軍の斥候が近くに出たってよ!
お前のスキルが必要だ!」
ガルドの声だ。
俺は天を仰いだ。
(……どこまで行っても、静かに暮らせない)
暖かい南の国への道は、
さらに遠回りになった。
――続く




