第5話 洞窟の秘密と、勘違いの代償
(前回までのあらすじ)
フレデリク(フレド)は冒険者パーティ「ガルドの冒険隊」に加入し、初クエストを氷雪スキルで成功させた。報酬も上々だったが、抜けようとしたところでギルドから特別依頼が。内容は「街外れの洞窟に潜むレアモンスター退治」——実はフレドの隠れ家で、自身のスキル痕跡が原因だった。「ほっとけない」性格が災いし、フレドは仕方なく引き受けることに。
翌朝、パーティは洞窟へ向かった。
俺は荷物を最小限にまとめ、いつでも逃げられるように準備していた。
クエストをこなしたら、すぐに南へ移動するつもりだ。
ガルドが地図を広げて言う。
「この洞窟、最近氷の痕跡が見つかってな。
レアモンスターの『アイスゴーレム』が出たって噂だ。
報酬金貨5枚! フレドの魔法なら一撃だろ?」
エリナが興奮気味。
「アイスゴーレム! 素材が高く売れるわ!
氷の結晶取れたら、魔法道具作れるかも!」
ティオが少し不安げ。
「でも、危なくないかな……フレドさん、頼りになるけど」
リリがぼそり。
「……腹減った。早く終わらせて飯」
俺は内心でため息をついた。
(……レアモンスターなんかいない。
あれは俺の【北風の咆哮】の残骸だ。
洞窟調べて「何もいませんでした」で終わりだろ)
洞窟に到着。
入り口は昨日と同じ、木々が覆い隠している。
俺の寝袋の跡とか干し肉の残骸とか、絶対残ってるはずだ。
ガルドが剣を構え、先頭に立つ。
「よし、入るぞ! みんな警戒しろ!」
中に入ると、すぐに問題が発生した。
エリナが地面を指差す。
「見て! ここ、凍ってるわ!
やっぱりレアモンスターの仕業ね!」
ティオが震える。
「ひゃあ……寒いよ……」
リリが嗅覚を働かせる。
「……匂い。干し肉の匂い」
ガルドが頷く。
「間違いない! 奥に潜んでるぞ!
フレド、魔法の準備を!」
俺は慌てて止める。
「待って、みんな。
これ、ただの……」
でも、遅かった。
洞窟の奥から、低い唸り声が聞こえてきた。
「グルルル……」
本物のモンスターだ。
(……マジかよ)
どうやら、俺のスキル痕跡に釣られて、本物のモンスターが巣食っていたらしい。
『フロストスライム』——氷属性のスライムで、触れると凍傷を負う中級モンスター。
しかも3体。
洞窟の寒気を吸って、俺の痕跡を巣に利用していた。
ガルドが突っ込む。
「来い! 俺が引きつける!」
エリナの火球が飛ぶが、スライムは氷で耐性が高い。
効果薄い。
ティオの回復が追いつかない。
リリの矢も凍りついて折れる。
「みんな、ヤバいぞ! 引け!」
ガルドが叫ぶ。
その瞬間、俺の「ほっとけない病」が爆発した。
(……パーティが全滅したら、俺のせいだ。
痕跡残したの俺だし……)
【氷雪支配】を発動。
洞窟全体の温度を操り、スライムの体をさらに冷やし固める。
「みんな、下がって!」
続けて【北風の咆哮】。
吹雪が洞窟を埋め尽くす。
スライムたちは凍りつき、砕け散った。
戦闘終了。
パーティ全員が息を吐く。
ガルドが俺を抱き上げる勢いで喜ぶ。
「フレド! またお前のおかげだ!
すげえ! あんな吹雪、一瞬でスライム全滅だぜ!」
エリナが目を輝かせる。
「氷対氷の戦い! フレドさんの魔法、完璧すぎるわ!
これ、ギルドで報告したらランクアップ確定よ!」
ティオがホッとして。
「助かりました……フレドさん、ありがとう!」
リリが満足げ。
「……素材、いっぱい。売ってステーキ」
俺は地面に座り込み、頭を抱えた。
(……またやった。
静かに暮らしたかったのに……)
洞窟の奥を調べると、俺の寝袋と荷物の残骸が出てきた。
みんなが不思議そうに見る。
エリナが首を傾げる。
「これ……誰かの隠れ家?
干し肉の袋とか、寝袋とか……」
俺は慌てて誤魔化す。
「さ、さあ? 前の旅人かな……
まあ、レアモンスター倒したし、クエストクリアだろ?」
ガルドが頷く。
「そうだな! 素材もたんまりだ!
ギルドに戻ろうぜ!」
ギルドに戻り、報告。
受付のお姉さんが驚く。
「フロストスライム3体!?
しかも洞窟の痕跡も解明!
報酬倍増よ! 金貨10枚!
あなたたち、街の英雄ね!」
パーティは大喜び。
街の人たちが集まってくる。
「冒険者さんたち、ありがとう!」
「洞窟のモンスター、怖かったんだよ!」
「今度、酒場でおごるよ!」
……まただ。
俺は有名になり、表彰されそう。
パーティは「次はもっとデカいクエスト!」と盛り上がる。
(暖かい南のビーチ……
いつになったら行けるんだ……)
でも、根が真面目すぎる俺は、
また「少しだけ手伝うか」と考え始めていた。
静かに暮らせない俺の悲劇は、
まだ続く。
――続く
(第5話 終わり)




