第4話 冒険者デビューと、予想外の依頼
(前回までのあらすじ)
フレデリク(フレド)は洞窟で静かに隠遁生活を始めるはずが、狼型モンスターを氷雪スキルで撃退した痕跡が見つかり、冒険者パーティにスカウトされてしまった。根が真面目すぎてほっとけず、「少しだけ手伝う」と了承。パーティに加入することになり、暖かい南の国への旅はまた遠のいた。
ラグナス冒険者ギルドの支部は、街の中心部にあった。
木造の大きな建物で、中は酒場みたいに賑やかだ。
クエストボードが壁に貼られ、冒険者たちが酒を飲みながら談笑している。
俺はパーティの面々と一緒に受付カウンターに立っていた。
リーダーの剣士、ガルド。
ガタイがよく、髭面の30代男。脳筋タイプで、笑顔が豪快。
魔法使いの女性、エリナ。
20代後半の美女で、氷雪魔法は使えないけど火と風が専門。好奇心旺盛。
ヒーラーの少年、ティオ。
まだ10代後半で、純粋無垢。回復魔法が得意で、パーティの癒し系。
斥候の少女、リリ。
20代前半のエルフ混血で、弓と隠密が専門。クールだけど意外と食いしん坊。
この4人に、俺が加わった形だ。
「よし、フレド! ギルド登録完了だぜ!」
ガルドが俺の肩をバンバン叩く。
受付のお姉さんが笑顔でカードを渡してきた。
『冒険者:フレド
ランク:E(仮登録)
所属パーティ:ガルドの冒険隊』
「……ありがとうございます」
俺はカードを受け取り、内心でため息をついた。
(少しだけ手伝うだけだ。
一回クエストこなして、旅費もらったら抜ける。
絶対に深入りしない)
エリナが目を輝かせて寄ってくる。
「フレドさんの氷雪魔法、すごかったわ!
どうやってあんな吹雪出したの? 教えてよ!」
「いや……ただの家伝の技で……」
ティオが頷く。
「僕、フレドさんみたいな強い人入ってくれて嬉しいです!
これでみんな安全に冒険できるよ!」
リリがクールに言う。
「……飯、食おう。腹減った」
ガルドが笑う。
「そうだな! まずは歓迎会だ! 俺のおごりで飲むぞ!」
……こうして、俺の冒険者デビューは始まった。
翌日、初クエストの日。
クエストボードから選んだのは、簡単なもの。
『森の薬草採取と、周辺の弱いモンスター討伐』
報酬は銀貨10枚。パーティで分けると一人2枚くらいだ。
(これならすぐ終わる。
薬草集めて、適当にモンスター倒して、解散)
森に入り、薬草を探す。
リリが先導し、みんなで散開。
ティオが楽しげに言う。
「フレドさん、こっちの薬草はどう?」
「うん、それで合ってる。
根元から丁寧に抜いて……」
俺は無意識にアドバイスした。
王宮の教育で、薬草学も叩き込まれてたから。
エリナが感心する。
「フレドさん、薬草詳しいのね!
私たちいつも間違えて採っちゃうのに……」
ガルドが笑う。
「ははは! フレドは多才だな!」
(……また余計なこと言ってる)
薬草採取は順調に進んだ。
でも、問題はモンスター討伐パート。
森の奥で、グレイストーン・ウルフの群れが現れた。
今度は5匹。
昨日より多い。
ガルドが剣を抜く。
「よし、俺が前衛! エリナ、援護!
ティオ、回復! リリ、弓で削れ!
フレドは後ろから魔法で!」
戦闘が始まった。
ガルドが突っ込み、狼を斬る。
エリナの火球が飛ぶ。
リリの矢が命中。
ティオがみんなを回復。
でも、狼の数が多く、ガルドが押され気味だ。
「くそ、こいつら賢いな! 囲まれてる!」
その時、俺の中でスイッチが入った。
(……ほっとけない)
【氷雪支配】を発動。
地面を凍らせ、狼の足を滑らせる。
続けて【北風の咆哮】で小さな吹雪を起こす。
狼たちは凍りつき、動きが止まる。
ガルドたちが一気に倒した。
「すげえ! フレドの魔法で勝てたぜ!」
「ありがとう、フレドさん!」
「僕、死ぬかと思った……」
「……飯、増やせ」
パーティ全員が俺を称賛する。
クエストは大成功。
ギルドに戻り、報酬を受け取る。
受付のお姉さんが言う。
「すごいわ! ウルフ5匹も倒したの?
しかも薬草の質が最高級!
追加報酬出るわよ!」
ガルドが喜ぶ。
「フレドのおかげだな!
次はもっとデカいクエスト行こうぜ!」
俺は慌てて言う。
「……いや、俺はこれで抜けようかと……」
エリナが目を丸くする。
「えー! なんで? みんなで冒険楽しいのに!」
ティオが悲しげ。
「フレドさん、いなくなったら寂しいよ……」
リリがぼそり。
「……まだ腹減ってる」
ガルドが肩を抱く。
「まあまあ、落ち着け!
実はよ、ギルドから特別依頼が来てるんだ。
『街外れの洞窟に潜むレアモンスター退治』
報酬、金貨5枚!
フレドの氷雪魔法なら楽勝だろ?」
俺は固まった。
(……あの洞窟? 俺の隠れ家?)
どうやら、俺が狼を退治した痕跡が「レアモンスターの気配」と勘違いされたらしい。
ギルドが調査依頼を出していた。
(……俺のせいかよ)
根が真面目すぎる俺は、
また「ほっとけない」と思った。
「レアモンスターなんていないはずだけど……
まあ、確認だけなら……」
パーティ全員が大喜び。
「やった! フレドがいるなら安心だぜ!」
「一緒にレア素材ゲットしよう!」
「報酬でごちそう食べようね!」
「……ステーキ」
こうして、俺の冒険者生活は本格化してしまった。
暖かい南のビーチは、
まだまだ遠い。
――続く
(第4話 終わり)




