2.第2話 闇の結界と、試練の山道
(前回までのあらすじ)
フレデリク(フレド)はパーティと共に魔王本拠地への旅をスタート。氷竜を撃破し、黒氷の山脈を登り始めたが、道中は厳しい試練が続く。フレドの「南の暖かい国で静かに暮らす」願いは、魔王討伐の旅の中で何度も蘇るが、根が真面目すぎる性格が彼を前に進ませる。
黒氷の山脈は、名前の通り黒く輝く氷の峰々が連なる荒涼とした場所だった。
空気は冷たく、風が鋭く肌を刺す。
俺の【霜王の加護】のおかげでパーティは耐えられているが、
普通の人間なら凍傷で動けなくなるだろう。
「寒い……でも、フレドさんのおかげで暖かいよ!」
ティオが息を白く吐きながら、笑顔を見せる。
エリナが地図を片手に。
「この山脈には魔王の結界が張ってあるわ。
闇の霧が視界を奪い、幻覚を見せて道を誤らせるの。
フレドさんの氷雪魔法で霧を凍らせて突破できるかも!」
ガルドが剣を磨きながら。
「よし、結界突破したら魔王の城が見えてくるはずだぜ。
フレド、頼むな!」
リリが雪を踏みしめ。
「……雪、ステーキみたい」
俺は山道を登りながら、
内心でぼやいた。
(……結界か。
俺のスキルで凍らせるのは簡単だけど……
なんでこんな寒いところで戦ってるんだ?
南のビーチなら、今頃波打ち際でビール飲んでるはずなのに)
数時間後、霧が濃くなった。
視界が10メートル先までしか見えず、
空気が重く感じる。
闇の結界だ。
突然、霧の中から幻覚が現れた。
ガルドの前に、巨大なドラゴンが。
エリナの前に、炎の怪物が。
ティオの前に、闇の触手が。
リリの前に、無数の影の弓手が。
「くそ、何だこれ!」
ガルドが剣を振り回すが、ドラゴンは消えない。
エリナが火魔法を放つが、怪物は再生する。
「幻覚よ! でも、本物みたいに痛いわ!」
ティオが叫ぶ。
「みんな、落ち着いて! 回復するよ!」
リリが矢を放つが、影に当たらない。
「……本物じゃない……?」
俺の前にも、幻覚が現れた。
それは、フィヨルドヘイムの王宮。
父上と兄上が立っており、
「フレド、義務を果たせ。王族の務めだ」
と責め立てる。
(……来るなよ。
俺はもう家出したんだ)
でも、幻覚は消えない。
痛みが体を走る。
闇の結界は、心の弱さを突くらしい。
根が真面目すぎる俺は、
「ほっとけない」と思った。
みんなの幻覚を解かないと、全滅だ。
「みんな、俺に任せて!」
俺は【氷雪支配】を発動。
霧全体を凍結させ、
闇の粒子を氷の結晶に変える。
視界がクリアになり、幻覚が次々消えていく。
ガルドのドラゴンが砕け、
エリナの怪物が凍りつき、
ティオの触手が粉砕。
リリの影が散る。
俺の王宮の幻も、氷の欠片となって落ちた。
パーティ全員が安堵の息を吐く。
「フレド……また助かったぜ」
ガルドが肩を叩く。
エリナが抱きつく。
「結界突破! フレドさん、完璧よ!」
ティオが涙目。
「怖かったよ……ありがとう!」
リリが頷く。
「……霧、ステーキのスープみたい」
俺は息を整え、
山道を進んだ。
結界を抜けると、景色が変わった。
黒氷の峰々が迫り、
頂上に魔王の城のシルエットが見える。
黒い塔が空を突き刺し、
周囲を闇のオーラが覆っている。
「着いた……魔王の城だ」
エリナが息を飲む。
ガルドが拳を握る。
「よし、最終決戦だ!
フレド、お前のスキルで道を開け!」
でも、俺の心は揺れた。
(……ここまで来た。
魔王を倒せば、終わりだ。
みんなと約束したビーチ旅行。
静かに暮らせる)
山道の最後の試練が待っていた。
城への橋に、魔王の親衛隊が立っている。
闇の騎士10体、
リーダー格のデーモン将軍。
将軍の剣が闇を纏い、
一振りで岩を砕く。
「人間ども、ここまでか。
魔王様の城に近づくとは、愚かな」
戦いが始まった。
ガルドが将軍に挑むが、押される。
エリナの火が闇に吸収される。
リリの矢が弾かれる。
ティオの回復が追いつかない。
「フレドさん!」
エリナの叫び。
俺は前に出た。
【霜王の加護】で闇を冷やし、
【氷雪支配】で騎士たちの足を凍らせる。
【北風の咆哮】で吹雪を起こし、
将軍の剣を凍結。
でも、将軍は強い。
闇のバリアで耐え、反撃してくる。
(……こいつ、魔王の側近か)
【オーロラの導き】が囁く。
弱点は胸の闇の核。
「ガルド! 俺が抑えるから、核を狙え!」
ガルドが跳び上がり、
剣で核を砕く。
将軍が崩れ落ち、
騎士たちも次々倒れる。
勝利。
橋を渡り、城の門前に到着。
パーティが俺に集まる。
「フレド……お前がいなきゃ無理だった」
ガルドの声が震える。
エリナが涙を拭く。
「これで魔王討伐よ……みんなで!」
俺は門を見つめ、
静かに呟いた。
(あと一歩……
倒せば、ようやく南の国で……
静かに暮らせるはず)
でも、城の門が開き、
魔王の咆哮が響いた。
最終決戦の幕が開く。
静かに暮らせない俺の悲劇は、
クライマックスを迎える。
――続く
(第2章 第2話 終わり)




