表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/14

2.第1話 魔王本拠地への旅立ちと、変わらぬ願い

(第1章完結から数ヶ月後)

ラグナス街の北門は、朝霧に包まれていた。

俺たち「ガルドの冒険隊」は、馬車を引いた馬を前にして立っていた。

荷物は最小限。

でも、みんなの表情は決意に満ちている。

ガルドが剣を肩に担ぎ、豪快に笑う。

「よし! いよいよ魔王本拠地だぜ!

 フレド、お前の氷雪魔法があれば、どんな闇も凍らせてやる!」

エリナが杖を回しながら。

「王都からの情報だと、魔王の城は『黒氷の山脈』の奥にあるわ。

 氷の山脈……フレドさんのホームグラウンドね!」

ティオが荷物を確認しながら。

「みんなの体調管理は僕に任せて!

 フレドさんも、疲れたらすぐ言ってね」

リリが弓を背負い、静かに。

「……魔王の首、ステーキ100人前」

俺は馬車の横に立ち、

深く息を吐いた。

(……ここまで来ちまったか)

第1章の防衛戦から、俺の生活は一変した。

街の英雄、氷の守護者、王国からの勲章……

全部受け取ったけど、

「王族の血筋を認め、王位継承権を……」という話は全力で拒否した。

俺はフレドのままでいたい。

ただの旅人、ただの冒険者でいたい。

でも、パーティの面々が

「一緒に魔王倒そう!」

「フレドがいなきゃ無理だ!」

と何度も頼んできた。

根が真面目すぎる俺は、

「少しだけ……本拠地まで手伝うか」

と、またほっとけない病を発動させてしまった。

今、俺たちは魔王本拠地へ向かう旅の真っ只中だ。

馬車が動き出し、街の門をくぐる。

後ろから市民たちの声援が聞こえる。

「フレドさん! 魔王倒して帰ってきて!」

「街を守ってくれてありがとう!」

「英雄たち、がんばれー!」

俺は手を軽く振り返し、

内心でぼやいた。

(……英雄って呼ばれるの、慣れないな。

 俺はただ、みんなの生活を守りたかっただけなのに)

旅の初日は順調だった。

森を抜け、丘陵地帯へ。

道中で出てきた魔物は、

俺の吹雪一発で凍結。

パーティの連携も完璧で、ほとんど戦闘らしい戦闘にならない。

夜、キャンプを張った。

焚き火を囲み、干し肉とパンで夕食。

ガルドがビールを飲みながら。

「フレド、お前さ……

 なんでそんなに強いのに、家出してたんだ?

 王族の血筋だって噂もあるけど、本当か?」

俺は火を見つめながら、静かに答えた。

「……本当だよ。

 フィヨルドヘイム王国の第二王子だった。

 寒い国で、堅苦しいしきたりが嫌で……

 いや、嫌いってわけじゃなくて。

 俺は義務はちゃんと果たしてきた。

 外交も、交流も、全部。

 でも、ある日、南の国の結婚式に行って、

 太陽がギラギラ照りつけて、夜でも暖かくて、

 みんな笑ってビール飲んで踊ってるのを見て……

 あそこに住みたいと思った。

 静かに、誰にも邪魔されず、

 ビーチで昼寝して、波の音聞いて暮らしたいって」

エリナが優しく微笑む。

「それで家出したのね……

 でも、結局どこに行っても巻き込まれてる」

ティオが頷く。

「フレドさん、根が真面目だから……

 ほっとけないんだよね」

リリがぼそり。

「……フレド、ビーチでステーキ焼く?」

俺は小さく笑った。

「そうだな。

 魔王倒したら、みんなで南のビーチに行こう。

 俺の理想郷で、ステーキ食ってビール飲んで、

 静かに暮らすんだ」

ガルドが拳を握る。

「約束だぜ!

 魔王倒して、みんなでビーチだ!」

その夜、俺は寝袋の中で空を見上げた。

星が綺麗だ。

南の国はもっと星が近くて、暖かい風が吹くはずだ。

(あと少し……

 魔王を倒せば、ようやく静かに暮らせる)

でも、根が真面目すぎる俺は、

どこまで行ってもほっとけないことを知っていた。

翌朝、旅は続いた。

黒氷の山脈の麓に近づくにつれ、

空気が冷たくなり、雪がちらつき始めた。

エリナが言う。

「ここからが本番ね。

 魔王の城は山の頂上にあるわ。

 道中、強力な守護獣や闇の結界があるって」

俺は頷き、

【霜王の加護】を軽く発動。

パーティ全員の周囲を暖かく保つ。

(寒さは俺の得意分野だ。

 ここなら、俺のスキルが最大限活きる)

山道を登り始めて数時間。

突然、地面が揺れた。

「来るぞ!」

ガルドが剣を構える。

雪煙の中から現れたのは、

巨大な氷竜。

魔王の守護獣の一つだ。

体長20メートル以上、

鱗が黒く輝き、息を吐くだけで吹雪を起こす。

ティオが震える。

「で、でかすぎる……!」

リリが矢を番える。

「……フレド、頼む」

俺は前に出た。

(氷竜か……

 俺のスキルと相性最悪……いや、最良か?)

氷竜が咆哮し、

黒い吹雪を吐き出す。

俺は【氷雪支配】で対抗。

自分の吹雪をぶつけ、

相手の攻撃を相殺。

「みんな、下がって!

 俺が抑える!」

氷竜が突進してくる。

俺は【北風の咆哮】を最大出力で放つ。

巨大な吹雪が氷竜を包み、

動きを封じる。

でも、氷竜は耐える。

闇の力が加わっているせいか、

凍結が効きにくい。

ガルドが叫ぶ。

「フレド! 援護するぜ!」

パーティが動き出す。

エリナの火魔法で鱗を溶かし、

リリの矢で目を狙い、

ティオが俺の体力を回復。

ガルドが斧で足を斬る。

俺は【オーロラの導き】に導かれ、

弱点を見抜いた。

氷竜の首の付け根に、闇の結晶が埋まっている。

「そこだ!」

俺は全力で【霜王の加護】を集中。

氷竜の体をさらに冷やし、

結晶を露出させる。

ガルドが跳び上がり、

剣で結晶を砕く。

氷竜が絶叫し、

体が崩れ落ちた。

勝利。

パーティ全員が息を荒げ、

俺に集まる。

ガルドが肩を叩く。

「フレド……お前、ほんとに化け物だな」

エリナが笑う。

「これで魔王の城まであと少しよ!」

俺は雪に座り込み、

空を見上げた。

(あと少し……

 魔王を倒せば、

 ようやく南の暖かい国で……

 静かに暮らせる)

でも、心のどこかで、

この旅が終わっても、

また何か新しい「ほっとけない」ことが起きる予感がした。

静かに暮らせない俺の悲劇は、

まだ終わらない。

――続く

(第2章 第1話 終わり)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ