第二十八話 ブロートⅣ
このパーティーのリーダーであり、冷静沈着に見えていた彼が一番に喜んでいた。とてもいい笑顔だった。
『ブロート』の仲間達もそれに追従するように喜んでいる。
以前にエンリケさんが言っていたことだけど、僕が入る前にパーティーメンバーがいなくなった時から、『ロシャ・フォルミガ』を一度として倒せたことはなかったらしい。
それがやっと倒せたのだ。
これが初めて見るパーティーの姿だと僕は感動していた。
「エンリケさん、おめでとうございます」
彼らの声が一通り収まってから僕は言った。
「ありがとう! ティエ君! 君のアドバイスのおかげだよ! 私たちの戦い方はどうだったかな?」
エンリケさんは興奮した声をしていた。
「素晴らしかったと思います! それぞれが自分のアビリティやギフトをいかして戦っていました!」
「次は君も入るんだよ! 準備はいいかい?」
「はい! 大丈夫です!」
僕は大きく返事をした。
次は僕がこのパーティーで、冒険者としての価値を示す番だ。
◆◆◆
それからほどなくして、新しい『ロシャ・フォルミガ』を見つけた。もちろん先ほどの個体からはカルヴァオンを取り去った後にである。
だが、新しい『ロシャ・フォルミガ』を見つけてから三匹ほど見逃した後に草原で漂っている『ロシャ・フォルミガ』に狙いを定めた。
次に戦うモンスターをこの個体に決めたのには理由は幾つかある。
先に見つけた『ロシャ・フォルミガ』は二体が共に行動していた。まだ二体同時に『ロシャ・フォルミガ』と戦う事は安全のために避ける事にした。そしてもう一体の『ロシャ・フォルミガ』は先ほど倒した個体よりも1.5倍ほど体格が大きくて強そうだったので諦めたのだ。
そして僕たちが次に見つけた個体は、先ほど『ブロート』で倒した個体よりも小さな『ロシャ・フォルミガ』だった。
エンリケさんは「あれにしよう」、と皆に確認する。
誰もが頷いた。
エンリケさんはまず、僕に指示を出した。
「牽制は行けるかい?」
「任せて下さい!」
僕は二つ返事で頷いた。
すぐに『空の剣』を発動させる。いつでも剣をモンスターに飛ばせるように、と。
「じゃあ、私から行くから、援護を頼んだ!」
エンリケさんは『刃』を発動させながら目標の『ロシャ・フォルミガ』突っ込んで行く。
エンリケさんはやはり先ほどと同じく、真正面から『ロシャ・フォルミガ』の頭へとアビリティで強化した剣を振り下ろす。それは『ロシャ・フォルミガ』の固い頭の牙と激突した。切れはしない。お互いに互角のまま、エンリケさんの剣は弾かれたのである。
それと同時に僕はアビリティを使って、『ロシャ・フォルミガ』の周りに剣を配置して東西南北から同時に攻撃し始めた。だが、どれも弱いが、僕の仕事は十分に果たせている。
『ロシャ・フォルミガ』は僕の剣に対応するために、両手足をばたばたと動かしていつものように旋回し始める。その動きはいつも僕が倒している時の動きである。
「今だっ!」
エンリケさんは強く叫んだ。
それと同時に他の仲間が一斉に斬りかかった。
まずはベンハミンさんだ。彼のアビリティは先ほど『ロシャ・フォルミガ』を倒した事によって、切れ味がより増していた。その一撃は『ロシャ・フォルミガ』の足を一撃で刈り取っている。
スティファーさんはまだアビリティが使えないのか、僕のアビリティに合わせて剣を使いながら『ロシャ・フォルミガ』を翻弄している。エドワードさんも戦い方としてはスティファーさんと一緒だ。
様々な陽動によって『ロシャ・フォルミガ』を惑わし、エンリケさんとベンハミンさんによって足を斬り取って無防備にした後、動けなくなった『ロシャ・フォルミガ』をエドワードさんが『大山猫の爪』を使った事によって一瞬で頭部まで移動し、剣を突き出して剣を手放した。その一撃で『ロシャ・フォルミガ』の口内を破壊し、やがて『ロシャ・フォルミガ』は動かなくなった。
「うぉおおおおおお!!!!」
自らの力でモンスターを倒したエドワードさんは、歓喜のあまり何も持っていない右手を天に突きあげていた。
「ティエ君、君のおかげだ!」
エンリケさんは僕にすぐに駆けよって喜びの笑みを浮かべていた。
「そんな僕なんて……!」
「いやいや、君の『ロシャ・フォルミガ』の倒し方と、優秀なアビリティのおかげだよ! これで僕たちはもう一歩次に進める! 大きな成果さ!」
エンリケさんは興奮していたようだった。
それからの僕たちは『ロシャ・フォルミガ』に勝った事を少しだけ全員で分かち合った後、小さなカルヴァオンをはぎ取った。
その後、二体の『ロシャ・フォルミガ』を倒した。先ほどよりも動きは洗練されている。まず僕のアビリティによる初撃によってモンスターの動きを制限し、他の仲間が足などを攻撃して行動を阻害する。それから余裕のある者がとどめを刺すのだ。一度目はエンリケ、二度目はベンハミンであった。
この日はなんと、四体の『ロシャ・フォルミガ』を討伐した。
それは『ブロート』にとって久しぶりの快挙であった。




