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美人な師匠の愛が重い  作者: 乙黒


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第二十五話 ブロートⅡ

太陽が頭上に照り付けるこの日、僕はエンリケさんに呼び出されていた。

『ブロート』のパーティーメンバーと初めて会う日である。

場所はここ『セウ』でも人気のカフェだった。外観の花壇には様々な色の花が飾られており、隙間から見える中もおしゃれなように見える。パーティーの顔合わせは、そのパーティーが普段使っているブリーフィング室を使う事が多いけれど、弱小パーティーである『ブロート』にそんなものはない。

だけど、最初の顔合わせに気を使うエンリケさんが、ここを指定したようだ。


僕は幾何学的な模様が描かれた木製の扉を開けて中へと入った。からんからん、とベルの音が鳴る。

中は窓から光が差し込む明るい空間だった。

様々な木製の机の上に白いクロスが引かれ、清潔な雰囲気を感じる。まだ昼にもなっていない時間だったので、店内に客は殆どいなかったが、大きなテーブルにだけ人が五人ほど座っていた。

それもおしゃれな店内に似合わない者達だった。

その中に見知った顔であるエンリケさんがいて、僕に気がついた瞬間に手を大きく振って僕を手招いてくれた。


僕はエンリケさんが指定した席に座る。

僕と対面するようにエンリケさんは座っていて、その左右にはそれぞれ二人ずつ座っている。きっと誰もが『ブロート』のメンバーなのだろう。


「さて、ティエ君、まずは朝の挨拶からと行こうか、おはよう」


 随分と丁寧に言うエンリケさんに、僕も「おはようございます」と頭を下げた。


「私はこの日をとても嬉しく思うよ。だって『ブロート』に待ちにまった新しいメンバーが入るのだからね。仲間達も君の事を誰もが待ち望んでいたさ」


「そうなんですか……」


大層に言うエンリケさんに僕は、そこまでの価値がある人じゃないんだけど、と思いながらも曖昧に頷いた。


「まあ、そんな話は置いといて、今日はやっとティエ君が来た歓迎会だ。料理を楽しみながら自己紹介と行こうではないか」


そういうとエンリケさんは店員を呼び、事前に頼んでいた料理を出すように言っていた。

それからすぐに前菜が出された。簡単なグリーンサラダであるが、“海の向こう”から手に入る香辛料がふんだんに使われた贅沢な料理である。


「まず、私だね。ティエ君には一度したと思うけど、二度とない場だ。もう一度自己紹介したいと思う。私はエンリケと言う。アビリティは『ラミナ』。持っている剣の切れ味を少しだけ上げるアビリティで、いずれはロシャ・フォルミガぐらい簡単に斬りたいんだけど、今の私では細い足を断ち切ることぐらいしか出来ないんだよ」


エンリケさんは残念そうに語る。

そのアビリティは冒険者が持っているアビリティの中で、自身の剣の持つ威力を上げるという、最も数が多く、その威力の上げ方も無数にあるアビリティの一つだ。

手元から遠くに行けると言う特徴はあるけれど、僕のアビリティも似たようなものだ。


でも、僕とエンリケさんの違いはロシャ・フォルミガの足を斬れるか、斬れないかだろう。

僕は斬れない。

新人でこの威力なのだから、きっとエンリケさんは成長すればもっと凄い冒険者になるのかな、とさえ思ってしまう。


「さて、次はベンハミンにしようか。彼はベンハミンって言うんだ。いかつい顔をしてとても寡黙だけど、とても優しい男でね、とても信頼している男なんだ」


「よろしく頼む――」


エンリケさんは自分の右隣にいる大男に紹介をしてくれた。

彼のアビリティは『血のサンゲ・ジェアダ』といって、斬ったモンスターの血を刀身に纏わせ切れ味を少しだけ上げるらしい。エンリケさん曰く、『ラミナ』よりも切れ味は上がるけど、その為にはモンスターを倒すか自信を傷つける必要があるらしい。

どっちが強いのかは僕にはよく分からない。


「その次の仲間が私の左にいるスティファーだ。彼女はね、『真夜中のメーヤノイテ・コルジャ』というアビリティでね、特定の時間だけ強くなるらしい。僕も詳細は聞いたけど、強くなるのが夜でね、私たちは夜に冒険に行かないから詳しくは知らないんだ」


「よろしく~」


 スティーファーさんはだるそうに手を振っていた。

 彼女はくすんだ金髪を無造作に伸ばしていて、グラマーな体をした女性であった。化粧っけなんてほとんどないし、ロングヘア―の髪の気だってぼさぼさ何だけど、どこか魅力の溢れる人だった。小声でエンリケさんから教えてもらったんだけど、魅力的な容姿をしているから男性からはとても人気な女性らしいんだ。


「で、ティエ君から見て左にいるのがエドワードだ。彼は南の国出身でね、少し肌が他の人とは違うんだけど、優秀な男さ。アビリティは『大山猫のリンセ・ペルナ』といって、俊敏な脚力を得る事が出来る。敵を翻弄することができる。いつも彼には助かっているんだよ」


「宜シク。実ハマダ言葉ガ不自由デネ。間違ッタ言葉ヲ喋ルカモ知レナイカラ、先二誤ッテオクヨ」


エドワードさんは片言だった。

彼は日に焼けた浅黒い肌をした筋骨隆々の男だった。実家にいた時に船で物資を持ってきてくれる異国の人と似たような容姿をしていた。エキゾチックで、男らしい人だった。


「最後がリ-リオちゃんだ。彼女はね、このパーティーで唯一“ギフト”を持っている。ギフト使いは貴重だから、とても需要があるんだけど、縁が合ってこのパーティーに所属しているんだ。とても有用なメンバーなんだよ」


「よ、よろしくお願いします!」


最後に紹介してくれたのが亜麻色の髪をした白いローブを着た子だった。フードに隠れているので顔はよく分からない。小柄な体躯をしていて、椅子にちょこんと座っている。

声の高さがところどころ外れていて、緊張しているようだった。


「さて、これが私のパーティーの『ブロード』だ。迷宮に潜るのは基本的に昼からだ。朝は皆仕事をしているからね。駆け出しだと、冒険者だけで食べていくのは大変だから」


僕も漁師の真似事をしているけど、皆それぞれ別の仕事をして食べていくのに必死なようだ。

世の中には実家が力を持っていて、駆け出しの内は仕送りがある冒険者もいるらしいけど、『ブロード』にはそんな冒険者は一人としていないらしい。皆、夢である冒険者になるために必死に働いているようだ。


「これが私のパーティーだよ。まだまだ皆ダイヤの原石でね、実力が全然足りていないんだよ。でも、全員やる気はあるし、その為に全力で努力している。皆、頑張ってくれると思うから、ティエ君にもとても期待しているよ」


「はい! 精いっぱい頑張ります!」


僕は椅子から立って勢いよく頭を下げると、新しく仲間になる人たちから温かく迎え入れられた。

それからは今後の冒険について深く話し合う。

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