異国の姫20
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
王太子宮の庭園を後にして、ユリウス様がポツリと言う。
「俺も、レイは大人しく守られていてほしいと、いつも思っているよ」
彼の本音だとわかる。
しかし私の今までを考えると、声高に言えないのだろう。
でも本音を言ってくれたのが嬉しいので、素直に応える。
「はい、これからは大人しくしています」
「本当?」
「はい、もう感覚も戻りましたし無茶はしません。
居場所がわかる術の気配も、察する事ができなくなってしまいましたし」
「そうなのか」
「どうも、私の『特別』な方の側にいると、
私は安心してしまうようで」
「それは悪くないな」
「それに、ユリウスが守って下さるのでしょう?」
「ああ」
ユリウス様はにこやかに私の手を取る。
しかし、、、しばらく私の指を見てから、徐ろに言った。
「だが……コウから聞いたのだが、港町で自分を囮にして追手を引きつけたんだって?」
ギクっ。
迂闊だった。
コウに口止めするのを忘れていた!
こんな短期間に2人は仲良くなったのだろうか?
先程の様子だと、コウはユリウス様のことを気に入っちゃったのかも。
あっ!
コウはコミュ力が半端ないんだった‼︎
しかし時は既に遅い。
「囮なんて、大したことはしておりませんよ」
私は瞬時に淑女の仮面を被る。
「危ないから止めたのに聞かなかったとか?」
ユリウス様も貴族の笑顔で答える。
やばい、これは機嫌が急降下している。
さっきまで和やかな雰囲気だったのにー!
「……少し、おにごっこに興じていただけですよ。心配なさることはありません」
「そういえば、身体に小さな傷があるな。
しかも複数。もっと良く検めるべきだった」
私は思わず手を引っ込めようとしたが、握られた手は離してもらえなかった。
「私も不注意で指を切ることくらいあります」
場の空気が急激に下がっている。まずい。
「もう隠しごとはしないことにしたのではなかったか?」
既に済んだことだから、わざわざ言って心配はさせなくても良いかなと思ってただけで、
隠すつもりは……少しはあったかもしれないけど、
ああ、どう言えば良い⁇
「いえ、あの、その……」
そうこうする間に場の空気が氷点下に達し、私は身体が凍りつきそうだった。
「とりあえず、しばらく部屋で大人しくしていてもらおうかな」
「……」
優雅に微笑むユリウス様を見て、私は氷の魔法にかかってしまったようだ。
どうして彼に対しては、いつも上手くいかないのだろうか?
彼が何枚も上手なのは分かっているが、全く勝てる気がしない。
勝負するまでもなく負けてしまうなんて、これも『特別』な人に対する効果なのか?
その後クローディア公爵邸に帰り、私はきっちりお仕置きされた。
そしてユリウス様の予言通り、諸事情によりしばらく部屋から出られなくなってしまった。
そうこうするうちに、クローディア公爵夫妻の帰国の日になってしまった。
私はなんとか部屋を出て、無事にお出迎えをする。
もしも出迎えの場にいないと、クローディア公爵夫妻を心配させてしまい、結果理由を説明することになるので、ここはなんとか死守する。
クローディア公爵夫妻の帰宅を笑顔で迎える一方で、今後かくれんぼやおにごっこは遊びの中だけでやることにしようと、私は固く誓ったのだった。
ここまでお付き合い頂いた方々、ありがとうございました。次回から最後の話に入りたいと思います。
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