異国の姫17
お立ち寄り頂きありがとうございます。
こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
ドレール伯爵と配下の者はジーク隊によって捕らえらた。
船を含む証拠品も全て押収され、捕らえた者とともに騎士団に引き渡される予定だ。
私はジーク隊長にお礼を言う。
フェンを通じて隊長に渡したメモには、巷を騒がす人攫いがドレール領の港にいることと、私の名前だけを記した。
メモを見た隊長はナユタ領主と掛け合い、ドレール領との境の森まで護衛を配しておいた。
するとドレール領から女性達が逃げてきたのでこれを保護し、同行していたフェンに事情を聞く。
その後隊長自らドレール領に駆け付けてくれた。
攫われた女性達はジーク隊によってナユタ領で保護されている。彼女達は幸い大きな怪我もなく、家族にも連絡済みとのこと。
彼女達の身に起こったことは、すぐには癒えないだろう。
連れ去られて閉じ込められて怖い思いをしたし、隣国に連れて行かれればその後どうなったかはわからない。
ただ自分の足で逃げたということと、それを手助けした他人がいたということは、彼女達の今後の救いになるのではないかと思う。
仮に他人に救ってもらえたとしても、結局自分を立て直すためには、自身の足で立たなければならない。
貴族なら一生護衛に守ってもらえるかもしれないが、平民ならなおさら、自分で自分を守って生きていかなければならないのだから。
また手助けしてくれた他人がいたという事実があれば、これからも人を信じられるかもしれない。
ユリウス様の指揮の元、ドレール領は騎士団の管理下に置かれ、兄を含む王太子殿下の部下により関係者が全て拘束された。
ドレール伯爵の書斎から物的証拠も押収され、伯爵子息の奥方が不法行為について証言もしているとのこと。
押収された証拠の中には隣国の貴族に繋がるものがあり、これを元に王太子殿下は隣国に対して犯罪者引渡条約の締結を迫るだろう。
✳︎
「ユリウス様、助けて下さりありがとうございました。あとドレール伯爵をこちらに差し向けて下さったことも」
伯爵が港町に来るように、ユリウス様が仕向けてくれた。私がお願いしていたからだ。
私は港町にいる者が伯爵の配下だとわかるようにしたかった。捕縛した場合、捕縛した本人の証言以外に、明らかに指示関係があることをわかるように残したかったからだ。
「だとしても自分の髪を切るなんて」
ユリウス様は、私が切った髪のあとに触れる。
「少し切っただけですよ。大半の髪は結っておいて伯爵からはわからない様にしていただけです」
ナイフで適当に切ったから、あとで切り揃えないとだな。
「良かった」
「ふふ、ユリウス様が私の髪を気に入って下さっているので、今度切る時は事前に言います」
「髪だけじゃない、全部気に入っている」
「それは光栄です」
「でも、さっきの男との会話は気に入らない。
レイに馴れ馴れしい。なんで『ヒメ』って呼ぶの?」
ユリウス様が途端に不機嫌になってしまった。
最近の彼は感情を表に出す様になってきたと思う。
「彼にも探している人がいるのです。
だから大丈夫ですよ。根は良い人なので。
ちなみに私は自分から名乗ってないので、彼が勝手に付けた私の呼び名ですよ」
「レイはあいつに気を許している」
「許していないですよ。私が刺されそうになったのはご覧になっていたでしょう?」
「レイの合図がなければ、あいつを氷漬けにしていたぞ」
「それは困ります。
私は彼を王太子殿下に会わせたいのです」
「王太子殿下に?」
「彼は腕の良い付術師です。
きっと王宮の役に立つでしょう。
コウは長年、仕える主君を探していたのです。
彼は王太子殿下の冷酷で非情な部分を気に入ると思いますよ」
「……」
ユリウス様は何か思うところがあったようだが、黙って私を抱き締めた。
そしてポツリと言う。
「その『コウ』って名前呼びするところが、気を許していると思う」
「うーん、そう言われましても昔の癖で」
「俺のことも名前で呼んでくれたら許す」
「いきなり他の人の前ではできませんが、2人きりの時に呼ぶのはどうですか?
ユリウス」
「……成婚まではそれで我慢するか」
やっと笑ってくれたので、私もホッとする。
またこの居場所に帰って来れたことを、嬉しく思う。
だから私も自然と笑顔になってしまう。
「私の『特別』な方のお願いなので、
最大限に善処します」
いつもお付き合い頂き、ありがとうございます。
『異国の姫』あと3話です。
最後まで見届けて頂けると嬉しいです。
評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。
ありがとうございます^_^




