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その時は本気で逃げることにします〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様、続〜  作者: みのすけ


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異国の姫8

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

私はカグヤの部屋でやる事を済ませる。


さらにフェンから借りたお仕着せに着替える。

彼女に後のことを頼んで、カグヤ部屋を出た。


すぐ隣の部屋に入る。

ここはフェンに割り当てられている部屋だ。

窓を開けて、身を乗り出す。



案の定、窓枠の上に縄梯子がかかっていた。

梯子を引っ張って強度を確認する。



梯子を上がって行くと、上の階の部屋の窓が開いていた。

梯子はこの部屋から繋がっている。



私は慎重に部屋に入る。


暗闇から人影が現れる。


給仕服を着ている、長い深緋色の髪を三つ編みにしている男性だ。

ヒョロリとした体躯が特徴的で、私にシャンパンを配ったドレール伯爵家の使用人。



彼は深緋色の瞳をこちらに向けて、口を開いた。



「ヒメ、久しぶり。俺の事覚えている?」



飄々とした雰囲気、独特の髪色と瞳、

私は記憶を頼りに答える。



「……コウ?」



「あたり!何年ぶり?

ここで会うとか、運命感じちゃうねー」



この話し方、変わっていないな。



「私もこんなところで会うとは思わなかった。まさかとは思うけど、コウが探していた人がドレール伯爵?」



「まさか。あんなくそジジイ、こっちから願い下げだよ。息子は変態だしさ、ヒメに薬飲ませて、色々しようとしたんだよ」



なるほど、先程のシャンパンは伯爵子息の指示だったのか。夕食会の時の様子といい、辻褄は合う。



「それを教えてくれようとしたんだ。

助かったよ。

瞬きでサインしているの、他にはバレなかった?」


瞬きの長短で文字を伝える伝達方法は、出会った頃に彼が私に教えてくれたことだった。

海では灯火信号として使われているらしい。


「バレないよ。だってここの使用人は伯爵のいいなりだもん。ろくな奴がいない」


ということは、この屋敷に彼の協力者はいないのか。

一人で行動しているということは潜入中か?


それで私に接触してくるということは……。

偶然なのか、必然なのか?


「そうか、では本題。

コウはただの親切で私に薬が盛られていることを教えてくれた訳ではないよね?

何が狙い?」


彼相手に、駆け引きはあまり意味がない。

過去の経験から私はストレートに聞くことにする。


「はははっ、何かヒメが昔の雰囲気になってきた。俺の運命の人がヒメならいいのになー」



「はぐらかさないでくれる?

私に話すということは仕事で潜入している?」


「ヒメはいつも話が早いから、会話が楽しめないよ。俺はたくさん話したいのにー」


「で、何を協力してほしいの?」


「はははっ、やっぱヒメはいいねー。人に優しいところと、人を寄せ付けないところがある。

ねえ、やっぱ俺の運命の人にならない?」



「……話がないなら戻る」



「ごめん、ごめん、また会えるとは思わなかったから嬉しくてさ。じゃあ、真面目に。

伯爵は長い黒髪の女の子を集めて、隣国に出荷するつもりだよ。ほら、隣国ってあれでしょ?この国と条約を結んでないから、国境を越えると事実上手を出せなくなっちゃうやつ」


「犯罪者の引き渡し条約が締結されてない。

隣国ではこちらの国の者が捜査できないから事実上手出しできなくなる」


「それそれ、それを利用して隣国で一旗上げたいらしいよ。この国の昭国ブームと同じ事を隣国でやるつもりみたいでさ。

俺の目的はその攫われた子達を助け出すこと」


私は一息吐く。


「変わってないね、そういうところ。

それで伯爵に攫われた子達が監禁されている場所は?」



「港町の何処か、しかわからない。

あそこは狭いながら入り組んでいるからさー。

だからヒメに攫われてほしいんだ。

俺も一緒に行くからさ」



なるほど、ドレール家は私も隣国に出荷したいのか。王太子殿下はこれを狙っていたのか?



「港町?

それで、その子達を助け出した後は?

当然見張りや追手がいるでしょう?」



誰かを守りながら逃げるのは、正直難しい。

技量がないとできないし、技量がないなら人数をかけないと、守る方も守られる方も共倒れしてしまう。

自分の身を守る方が遥かに楽だ。



「それはこれで」



コウが紐のついた長い針を数本見せる。

紐には細かな文字がかかれているが、普通の人には読めないだろう。



「それ、結構大掛かりじゃない?できるの?」



「俺を疑っている?前より腕上げたよー」



「疑ってはいない。

環境的にできるか確認しただけ。

ちなみにこの屋敷に、伯爵のやろうとしていることの証拠はある?」



「えーと、伯爵の書斎に隠し部屋がある。

その中に隣国の貴族との繋がりがある」



「伯爵の書斎に隠し部屋があるのか。

隣国の貴族と繋がりがあるとして、関わっているのは伯爵だけ?」



「ここの家門と奥さんの家門。

だからヒメは明日奥さんの誘いを受けてね」



「夫人の家門までグルなのか。結局ドロール家を切っただけで、他もクロかったのかな?

私が承知しなかったらどうするつもり?」



「そしたら皆殺しで良くね?

悪いことしてるんだし」


そう言って彼は、心底楽しそうに笑う。

一緒に三つ編みも揺れる。

飄々とした雰囲気で一見強そうには見えないのだが、彼が本気を出せば、たぶんできる。


彼は人身売買をしていた貴族を潰して、この国を出たからだ。もう9年くらい前のこと。



「はぁ、分かった。私を連れて行く時に、周りの人達に危害を加えない様にして。

あと動きやすい服とローブを用意しておいてほしいんだけど」


コウは欲しかった答えを得た様で、満面の笑みで楽しそうに言う。


「りょーかい、じゃあ明日ね。

楽しみにしてる」

いつもありがとうございます。

『異国の姫』長くなってしまっておりますが、引き続きお付き合い頂ければ幸いです。


評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。

ありがとうございます^_^

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