異国の姫3
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
夕方、ユリウス様が帰宅された。
私は平静を装ってお出迎えする。
「ユリウス様のおかげで、ライオール殿下とミア様にもご挨拶が出来ました」
私は笑顔で応える。
彼は私の顔をじっと見た後、私の手を引いて足早に自室に入った。
「レイ、王太子殿下からの命のことは聞いた。
だが一体なぜ?」
「私にもわかりません。
たぶん黒髪の女性役が必要だったのではないでしょうか?」
私は分かりやすい答えを用意していた。
「……」
でもユリウス様には通じないようだ。
「レイ、王太子殿下とはどんな話をした?
昭国の舞台観劇の際に、エスコート役を務めたのだろう?」
「はい、王太子殿下をエスコートした際に、殿下は舞台の元になった昭国の言い伝えについて尋ねられました」
「王太子殿下は明らかにレイを気に入っているようだが?」
「側近の妹としてお気遣い頂いているのかと」
「……」
ユリウス様はため息を一つ吐いた。
「俺が王太子殿下の名代で、ドレール領に視察に行くことになった」
「!」
一瞬、血が沸騰しそうになった。
王太子殿下からは聞かされていない事柄だからだ。
瞬間、この状況から考えられる最悪の未来を想像してしまった。
「ユリウス様が、王太子殿下の名代ですか?
それはまた……」
私は声が震えそうになるのを抑えて答えた。
王太子殿下は強制的に彼を巻き込んだのか。
自分が動揺しているのがわかる。
だからといって最悪の結果になるとは限らないのだから。
「ああ。
外交責任者である父上が不在の今、息子の俺が王太子殿下にかわり、異国の姫の相手を務めるのは不自然ではないだろう、との仰せだ」
王太子殿下の側近が複数いる中で、第二王子の側近をわざわさ指名するなんて。
こんな理由はこじ付けだ。
ユリウス様も何かおかしいと思っているのだろう。
ただライオール殿下にも話を通された上で正式に命が下されているだろうから、ユリウス様が断ることなんてできない。
王太子殿下は私の性格をわかってやっている。悔しいが、このやり方は今の私に対して一番効果がある。
あとユリウス様の性格もよく分かっている。私のために彼が動く場合の、対応能力まで見込んでいるのだろう。
ここまでくると、今の私の説明だけでは足りない。
だが確証のないことを口にするのは憚れる。
余計な憶測を呼び、彼を余計に心配させるからだ。
だから確実な、明らかな情報は共有する。
「ユリウス様、巻き込んでしまい申し訳ありません。
……王太子殿下は私に何か期待されているようです」
「期待?」
「王太子殿下は、私が見込んだ者がその後飛躍を遂げていると仰っていました。誤解だと申し上げたのですが」
「実際父上のことはそうだろう?レイのことがきっかけで内政も外交も掌握している」
「もしきっかけが私であったとしても、宰相閣下本来のお力があればこそ。一番の誤解は私が見込んでいると、意図的に捉えられてしまっているところです」
「つまりレイの目を見込んで、今回の命が下されたということ?
まあ行き先を聞いて、思い当たらないわけではなかったが」
「はい。ドレール地方は私も昔行ったことがあります。元ドロール領の時に」
いつもありがとうございます。
『異国の姫』の後に最後の話入りたいと思います。引き続きお付き合い頂ければ幸いです。
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