特使4 着任
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
「この度、昭国付き官吏になりましたアレキサンドライト・セレスです。よろしくお願い致します」
「アレキサンドライト、よう来タ。ここに座レ」
「ヤン殿下、何かご用でしょうか?」
「用ならあル。お前と話したイ。お前は何が好きダ?好きな物を用意させよウ」
ヤン殿下は、一言で表すと「我儘な若君」という様子だった。
王宮で供されるものを全て拒み、周りを常に取り巻きで固めているような状態だ。
特使として、これでは国のためにはならないと思うが、周りはヤン殿下の機嫌を伺うばかり。
「殿下、お気遣いありがとうございます。私は本が好きです。昭国の本があれば見てみたいです。
ただこれからの予定を確認しないと、殿下とお話ができません。予定の確認ができる方と、護衛の方をご紹介頂けますか?」
「うむ、仕方ないのウ。予定はこのユエに、護衛はシャオタイに聞くがよいゾ」
「ありがとうございます、殿下」
取り巻きの背後から長身で細身の男性が進み出る。
ユエと名乗るこの方はヤン殿下の執務官。
殿下の側近で事実上のNO.2だろう。
面長でニコニコしているが細目の奥で何を考えているか悟らせない、大層な曲者だ。
対してシャオタイと名乗るこの方は図体が大きく引き締まった身体で、いかにも誠実な武人という風体だ。
使節団のメンバーを一見したところ、彼が一番強いと思われる。
他の取り巻きは個々に役割はあるが、ユエ執務官とシャオタイ護衛長の言うことは聞くみたいだ。
私は手早くユエ執務官に今後の予定を確認し、シャオタイ護衛長と警護をプランを確認した。
「アレキサンドライト、まだカ?
本も用意できたゾ」
「殿下、お待たせ致しました」
私はヤン殿下と少し離れた位置に座し、殿下の話を聞く。
殿下は昭国の本を数冊広げて、写真を見ながら説明して下さった。
事前の資料では殿下は22歳と私より年上だが、話すと幼い印象を受けた。
殿下は第一印象は横柄な感じを受けたが、今はそのようには感じなかった。
むしろこちらに気を遣って好意的に振る舞ってくれている様だ。
おそらく取り巻きを連れて外に出ている時は、わざと横柄な態度を取るのだろう。
主人として威厳が必要な場面があるからか?
私が本を覗き込んでいると、後ろで束ねた髪を持ち上げられた。ヤン殿下だった。
「アレキサンドライトは綺麗な髪と眼をしておル。深い緑色の瞳の者は我が国にはおらぬから珍しイ」
「そうですか……」
私は自分の容姿でこのようにキラキラした瞳を向けられたことがない。しかも容姿が理由で仕事で厚遇されるとは、なんとも居心地が悪い。
しかし私はそんな気持ちを切り離す。
今は自分の役割に集中しろ。
特使滞在期間中に予定している公務を終わらせ、両国の架け橋になれるように。
そのためには特使団の方々に快適に過ごしてもらわなければならない。
ヤン殿下の相手をしながら、さりげなく使節団のメンバーを観察していく。
この部屋にいるのは取り巻きで護衛兼お世話係というところ。
他のメンバーは隣室に移動した。殿下とは少し距離がある雰囲気で、姿からして文官が多い様だった。
まずは主要メンバーを把握して、王宮と連携が取れるようにするべきだろう。
1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。
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