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サラ様2

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

私はユリウス様と共に別宅から公爵邸に帰ってきた。


王宮でのことは公爵邸にも連絡されており、エリザベス様とサラ様は私を大層心配されていたそうだ。

そのため、私はなるべくお2人のために時間を取るようにしている。



「レイお姉様、今日は私が見つけます」


「サラ様……」


「じゃあ、隠れて下さい」


「わかりました」



今日もサラ様とかくれんぼだが、サラ様が初めて自分から「見つける方」を希望された。


私はサラ様の侍女達とアイコンタクトで成長を喜び合う。

侍女達の中には、サラ様の成長に涙を浮かべている人もいた。


私も同じ気持ちです。


最近のサラ様は成長著しい。

御年5歳に御成になり、背も少しずつ伸びて愛らしい天使から美しい少女になった。


淑女教育も始まっていて、言葉遣いも相まって小さなレディそのものである。



そのサラ様に見つけてもらえるなんて光栄な遊びだろう。さて、どこに隠れよう?


子供との遊びは、本気の駆け引きだ。


子供は天才、大人が手を抜いているとわかると途端にモチベーションが下がる。

一方で、こちらの出す課題が難しすぎてもモチベーションが下がる。

だからその子の最適解に合わせて、課題を設定できた時の成長効果は計り知れない。


サラ様の最適解を慎重に見極めて、次に繋がる一手になれるだろうか?


しかし、この歳でかくれんぼの隠れる側になるとは思わなかった。室内で隠れられそうなところはあるかな?


サラ様は体の小ささを活かした場所に隠れることが多い。だから同じような場所は私には難しい。


サラ様は什器の中に入っている事もあった。部屋に備え付けられた扉の中とか、クローゼットの中とか。

だが大人の私が入って壊したら困る。


そうすると室内で隠れられる場所って意外と少ない?


とりあえず今日は、サラ様となるべく同じやり方で、一度隠れた場所からは動かないようにしよう。



タッタッタ


軽い足音が近付いてくる。


ガチャ


扉が開く音がして、誰が入ってくる気配。


タッタッタ


迷いのない足音。


ギシッ、バサッ、


「あれ?いない」


サラ様の声が可愛い。


ギシッ、タッタッタ、バタン


私はひょこっと顔を出す。

サラ様は行ってしまった。


ここは私が使わせてもらっている部屋で、私は窓際の厚いカーテンの後ろに隠れていた。


すぐに見つかってしまいそうな場所だが、一つ工夫をしておいたのだ。


寝台に布団を敷いて、中に枕を入れて、人が隠れているように見せかけておいた。


部屋に入ったサラ様はすぐに寝台を確認して、いないと分かって他の部屋を確認しに行ったらしい。


わかりやすい場所にフェイクを仕込んでおいて、注意を引いてみたのだ。

素直なサラ様にはないテクニック、彼女は気付いてくれるだろうか?


さて、サラ様がこの部屋に戻って来るまでしばらくかかるだろう。私はカーテンの後ろで座って待つことにした。小さくなって、気配を消して……。



✳︎



ん?

私うとうとしていた?

あれ?今何時?


私は立ち上がって窓から外を見る。

既に薄暗い。


開始から2時間くらい経ってる?

かくれんぼはどうなったのだろう?


部屋の外は静かだ。

他の所を探しているのだろうか?


ユリウス様が帰ってくる時間になるだろうから、様子を見に出て行こうか?


タッタッタ


軽い足音、サラ様だ。


バタン


「お兄様、私ここを一番に探したのです」

サラ様の声だ。


「サラ、あれは?」

あれ?ユリウス様の声だ。


「私は寝台に隠れていると思って、布団を退けたらこうなっていたのです」


「へえ……

サラ、この部屋の他の場所は探した?」


「まだ、

あっ!」


シャー


カーテンが開けられる。


「レイお姉様、見つけました」


サラ様が満面の笑みで見つけて下さった。

私はサラ様を抱き上げる。


「サラ様、見つかってしまいました。

良くわかりましたね。すごいです」


「ふふふふ、お兄様と一緒に探したのです」


「そうでしたか。

ユリウス様と一緒に探すのは楽しかったですか?」


「うん。すごく楽しい」

「良かったですね」


私はユリウス様の方を見る。


ユリウス様は「良かったな」いう顔をしていた。

こういう時しか見られない『兄』の顔をしている。


私はサラ様をそっと下ろす。

サラ様はユリウス様の元に走って行く。


「お兄様、ありがとうございました。

また一緒に探して下さい」


「わかった」


わー、目の保養。

美しい兄妹。


サラ様が嬉しそうだ。

輝くような笑顔が眩しい。


最近のサラ様は、自分からユリウス様やエリザベス様に話し掛けるようになってきた。

今までは相手が忙しいから遠慮していたのだろうが、短い時間でも積極的にコミュニケーションを取ろうとしている。


私は扉の外の侍女達とアイコンタクトで成長を喜び合う。


もう人見知りしなくなったサラ様。

彼女の世界は広がりつつあるのだろうか?


まだ何者でもない、だから何者にもなれる時期だと思うと、余計彼女が眩しく見える。


寂しさを知っている分、人に優しい、素敵な大人になるだろう。


サラ様が侍女達の元に行ったのを見届けて、私は彼に声をかけた。


「ユリウス様、お帰りなさいませ。

サラ様と一緒に探して下さり、ありがとうございました」


「レイらしい隠れ方だった」


「私らしいとは?」


「分かりやすい理由を用意して、本音を隠すところ」


「私はユリウス様にもう隠していることはないですよ」


「もう?今までは隠しごとをしていたんだ?」


「全てお仕置きされてますから、隠しごとはなるべくしないことにしました」


「それは賢明だ」


あれ、ユリウス様が意地悪な顔になっている。


「むぅ」


「ははっ」


「次はもっと難しいところに隠れます」


「まあ、どこに隠れても無駄だと思うけど」


確かに頭脳戦で勝てる気がしないなぁ。

ならば、せめて居場所がわかる術にはかからないようにしないと。

本当の姿を見せる魔法まで見届けて頂いた方々、いつもありがとうございます。

最後の話に行く前に、次に繋がる話をいくつか投稿したいと思っています。お付き合い頂ければ幸いです。


評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。

ありがとうございます^_^

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