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本当の姿を見せる魔法25 本当の姿

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

「レイ、起きた?」


ぼんやりと開いた目が段々に覚醒していく。深い緑の瞳が俺を捉えた。


「ユリウス様、ここは?」

「王都の公爵家別宅。この部屋も久しぶりだ」

「……」


「どこまで覚えている?」

「……」



レイの顔がだんだん青くなる。



「まだ混乱してる?」


「はい、夢かと思っていましたが……たぶん全部覚えています」



レイは上体を起こした。身体は大丈夫そうだ。



「良かった。御両親の最期の言葉はレイにも届いたのだな」


「……えぇ」



レイは頭を押さえて、少し俯いている。


たぶん自分の中で今までの出来事を整理している。

今まで隠していた気持ちも、今回のことでもたらされた感情も。



俺は彼女が落ち着くまで待った。




ふと、彼女の目が瞬いた。


この表情は良く知っている。

俺は彼女が戻ってきたことに安堵する。




「あれ?でも私、旅支度だったはず……」


「それは俺が着替えさせた」


「!」


レイの顔が一転して赤くなる。



俺はレイの顎を持ち上げ、口付ける。

柔らかい、とろける様な感覚。



「んっ、ユリウス様、待って」


「待てない」 



「セレス家に連絡しないと、心配させています」

「俺がしておいた」



「公爵家にも」

「それも平気」



「あと、セバスチャンとモランにも」

「それもしてある」



「ライオール殿下にも申し訳ないことをしました」

「それは後で考える」



「ユリウス様にもたくさんご迷惑をおかけしました」



レイが視線を外す。

深い緑の瞳が、長い睫毛に伏せられる。



宝石アレキサンドライトの石言葉は『秘めた思い』



たぶん、レイは知られたくなかったのだと思う。

『本当の自分』が抱える願いを、

『弱い自分』を隠す様に作られた今の姿を。




ヤン殿下と庭園で話していたのは、このことだったのだ。


ヤン殿下は見抜いていた。


死にたい自分を隠して生きるレイの姿を。

だから矛盾を抱えながら努力する姿を美しいと称して、欲した。



それでも俺は、



「レイ、俺と婚約解消したいか?」



彼女は目を逸らした。



「それは……私が決められるものではありません」



「レイがその気になればできるだろう?

レイの気持ちを聞いている」



「今回の事が許されるなら、私はユリウス様の側に居たいです」



彼女はまだ目を逸らしている。




「俺はレイを手離す気はないから」



俺は手を伸ばしてレイを引き寄せる。

彼女の首筋に唇を落とすと、彼女の身体がビクッと震えた。



「ユリウス様、待って」



「待たない」



「っ」



「『ずっと一緒にいるから』って言っただろう?」



「はい」

 


「本当は何処にも行かせたくない。

自由なレイが好きだけど、同じくらい手離したくない。

閉じ込めて、ずっと俺だけを見て欲しい」



「……」



「俺の『本当の姿』を知って幻滅した?」



「まさか」



「俺もレイの『本当の姿』を知れて良かった」



「……」



彼女は少し切ない顔をした。

消えてしまった『本当の姿』を想ったのだろう。



昨晩までの彼女と目の前の彼女は、本当に同一人物だったのだろうかと疑ってしまう程に異なって見える。



宝石アレキサンドライトと同じ、見る者を惹きつける異なる輝き。

多面性。でも本質は一つ。



どちらの彼女も愛おしい。

だから近付きたくなる。

触れたくなる。

彼女を確かめたくなる。

体温を分け合いたくなる。

 


「ニ度も逃げようとしたんだ。覚悟してくれる?」



俺は彼女の手に指を絡める。

 


「お手柔らかにお願いします」



彼女は微笑んだ。

貴族の笑顔ではない、18歳の年相応の笑顔で。

ここまでお付き合い頂いた方々、ありがとうございました。ここから数話挟んで、最後になる話を投稿できればと思っています。


評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。

ありがとうございます^_^

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