本当の姿を見せる魔法16 提案
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
次の日の夕方、タタ王女からレイに謝罪したいと申入れがあった。
またタタ王女の国から王族付き魔法士が到着したので、レイの様子を見させてほしいと言う。
レイが記憶を失ってから8日、国内で確認した限りでは彼女の記憶を取り戻す有効な手段が見つからない。
そのためライオール殿下とロバートが、タタ王女の状況を相手国に説明した上で、国一番の魔法の使い手を我が国に派遣してもらうように交渉してくれていた。
王宮内ではタタ王女が起こしたことも知れており、相手国としては早急に片を付けて、王女を帰国させたいのだろう。
王宮側としても、騒動を長引かせるわけにはいかなかった。
俺はライオール殿下とロバートと、タタ王女の謝罪の場に立ち会う。
タタ王女も流石に反省して、レイにきちんと謝罪していた。
タタ王女は秘書官として同席していたレイのことは気に入っていたようで、本当に申し訳ないと思っていた。
謝罪の後、王族付き魔法士がレイの様子を何らかの魔法をかけて診断する。
魔法士曰く、タタ王女の『本当の姿を見せる魔法』が不完全な状態でかかっているとのことだった。
『本当の姿を見せる魔法』とは隠された心の内が表層に出てくる魔法で、例えば本音を言ってしまうとか、素の自分が出るとか、だそうだ。
本来王宮の中では魔法と魔術は使えないが、脅威にならないと判断される術は使える。
例えば、自分の身を守る防御系の術などは使えるのだ。
『本当の姿を見せる魔法』は脅威ではないと判断されたようだ。
タタ王女は魔法が未熟のため、特定の誰かを狙っても場にいる全員に魔法をかけてしまうらしい。
レイはミア様のことも考え、全員に魔法がかからないように庇ったのだと推測された。
タタ王女の魔法は威力からしてせいぜい3日程度の効果しかないそうだ。
けれどもレイが魔法にかかってから既に3日以上経過しており、未だ解除されないのはレイが咄嗟に使った魔法のせいではないかと思われる、とのこと。
しかし何の魔法かは王族付き魔法士でも特定できないそうだ。
記憶退行の原因はレイにかかった魔法のせいだとわかったが、解除方法がわからないことに俺は愕然とする。
我が国は魔法が稀なので、相手国の魔法士の方が当然に詳しい。それが解除できないというと打つ手がなくなる。
もちろん国内でも対処できる者を引き続き探しているが、現在魔法が使える者はほとんど王宮に召し上げられている。その上で今まで対応できていなかったのだ。望みが薄い。
さらに精神に干渉する魔法は魔術では打ち破れないとされ、我が国の魔導具を頼ろうにも原因となる魔法を特定しないと使えない。
そもそも魔導具は用途が限られるので、こういう対処には向いていないのだ。
「タタ王女のせいでセレス嬢を害してしまったことを本当にお詫び申し上げます。
我が国として、できることがあれば何でも致します」
王族付き魔法士が恭しくお辞儀をする。
レイは表情を表に出さないまま、魔法士に尋ねた。今日も生気のない人形の様だ。
「お心遣い頂きありがとうございます。
確認ですが、現在私にかかった魔法を解くことはできないのですね?」
「大変申し訳ないのですが、その通りです」
「では私個人からお願いしたいことがあります。
私に魔法を教えて頂けないでしょうか?
基礎的なことを3日程度、御教示頂けるだけで結構です」
「基礎的な魔法をですか?どうして?」
「現状、自分にかかった魔法は自分で解くしかありません。
しかしながら私は独学ですので、基礎から学び直して解除を試みたいのです」
「な、なるほど。解除の手助けになるのでしたら喜んで承ります」
「ライオール殿下、宜しいでしょうか?」
「セレス嬢の希望に添おう」
「ありがとうございます、殿下」
ライオール殿下は早速王太子殿下に掛け合って、許可を取ってくれた。
王宮内で他国の魔法士に魔法を習うなど前代未聞の事だったが、王太子殿下は面白そうに笑って、快く許可を出したそうだ。
レイの提案は、確かに誰もが思い付かなかった案だった。
今更、古代魔法を習って自分で解除を試みるなんて、無謀としか思えないだろう。
だが、彼女がある程度魔法を使えると知っている俺は落ち着かなかった。
彼女は一体何を考えているのか?
この話も残りわずかとなりました。
どうか2人のこれからを見届けて頂けると幸いです。
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