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本当の姿を見せる魔法14 安心

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

翌日、俺がレイの様子を見に行くと、彼女のところにオリバー上級騎士が来ていた。


俺は2人の会話を邪魔しないように、部屋の外で待つ。


「お兄様、お身体は大丈夫ですか?」


「心配かけたね、レイ。

もともと体調に変化はないから大丈夫だよ」



「それは良かったです。

もう職務に戻られたのですか?」



「ああ、今日から復帰したよ」



「そうですか、良かったです。

お兄様、私はもう大丈夫ですから、お仕事に注力して下さい」



「レイ」



「頻繁に様子を見に来て下さるのは嬉しいですが、本来の職務が疎かになることを、私は望みません」



「分かった」



「お兄様のご無事をいつもお祈りしております」



「うん」




オリバー上級騎士が部屋から出てきた。

俺に気付き、挨拶をする。



「クローディア公爵子息、この度は王太子宮の調査にご協力頂きありがとうございました。

おかげで早期に職務に復帰できました」



「私はできることをしただけです。

ところでオリバー上級騎士、少し宜しいですか?」



俺はオリバー上級騎士と連れ立って、人のいない方へ歩く。



「あの、レイのことを伺ってもよろしいですか?」



「どのようなことでしょうか?」



「その、今の彼女は私の知っている穏やかな様子とは随分違っていて、なんというか……」



「気配が鋭い?」



「えっ、ああ、そうです。

良く分かりましたね?」




「私は勘は良い方なので。

と言っても、使い魔にも気付かなかったくらいなので、説得力がないですが」




「使い魔の姿を隠す術式が使われていたため、気付かなくても仕方ないと思います。

ただ、レイが『使い魔はオリバー上級騎士に対して害意がないから気付かなかったのではないか』と言っていました」



「そうですか。

確かに私は緊急時の方が勘が鋭くなるようです。

実はこれはレイが気付かせてくれたことなのですよ」



「レイが?」



「レイと一緒に暮らすようになってしばらくして、彼女に言われたのです。『それは天性の才能だから伸ばすべきだ。だから剣術を続けてほしい』と。

当時私は子爵家の嫡男になってしばらく経っていたのですが、お恥ずかしいことに全く慣れなくて。

好きだった剣術の時間を諦めて後継者教育を受けていたのですが、剣術を続けられるようにレイが両親を説得してくれたのです」


「そうでしたか。

その、彼女はどうして分かるのでしょうか?

彼女にも天性の才が?」



「当時私は自分のことばかりで分からなかったのですが、今ならなんとなくわかる気がします。

レイは天性の才というよりか、必要に迫られて身についてしまった類のものかと」



「……」



「クローディア公爵子息は、家令からレイのことを聞いたと思いますが、その、危ない目にあったことがありまして。おそらくその経験から身についてしまった類のものかと思います。なんというか、危険と隣り合わせの空間にいると研ぎ澄まされる感性というか」



「身に付いてしまう程、危険な目に遭っていたということですか?」



「私達と一緒に暮らす前のことなので、私もよく知りません。レイはそう言うことは話さないから」



「……」



「レイが剣を扱えることは、家族の中では、たぶん私しか知らないと思います。

彼女は心配をかけたくなかった様で、特に母と弟の前ではそういう姿を見せなかった」



「そうでしたか」



「ただ危険から離れれば、感覚はだんだんと薄れていきます。だからクローディア公爵子息の知るレイの気配とは違うのでしょう。以前のあの子は、貴方の側だと安心しているのがわかりましたから」



「……」



オリバー上級騎士は職務に戻っていった。




彼との話で腑に落ちることはあった。

それで魔術を破ることができる程になるのかは、わからないが。



そしてオリバー上級騎士の言葉、

以前のレイは、俺の側だと安心してくれていたのか?




もちろん俺は彼女のことを守りたかったし、彼女を全ての悪意や危険から遠ざけたかった。


だから彼女がそういうことに巻き込まれることを心配していたし、巻き込まれてしまうと落ち着かなかった。


いつもは無表情だと言われているのに、顔に出てしまう程に。

彼女に関することだと、頭より先に身体が動いてしまう。


自分がやることは、彼女のためとは言いながら、結局は自己満足だと分かっている。

彼女の笑顔を守りたいという自己満足。

だが結果として彼女が安心してくれる環境作りに役に立っていたならいいと思う。



だから術返しの魔導具を身に付けさせなかったことが悔やまれてならない。

もう遅いのは、分かっていても。




「魔導具が痛いから付けたくない」と素直に言ってくれたレイを思い出す。

我儘を言わない彼女が、初めて言ってくれたわがまま。


レイが頼りにしてくれるのも、だんだんと甘えてくれるのも嬉しかった。


それは安心してくれていたからなのだろうか?


だとしたら、どんなにいいだろうか……。

これから終盤に向けて話が進みます。

どうか彼らのこれからを見届けて下さると幸いです。


評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。

ありがとうございます^_^

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