本当の姿を見せる魔法7 過去2
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
しばらく沈黙が場を支配した。
俺の様子を慮ってのことだろうが、落ち着いた頃を見計らってモランが後を続ける。
「新しいご家族様との王都での生活が落ち着かれた頃から、お嬢様は度々領地に来る様になりました。お一人で来て、領主館で必要な指示を出されてから、お一人でどちらかに行かれてしまうのです」
彼女は1人で行動できる知識や技術を持つようになってから、攫われた子供達を探していた。
しかし王宮で目覚めた現在、目的としているものは全て果たされていた。
「お嬢様は目的を果たすために生きている様に感じることもありましたので、その『目的』がなくなった今、どのようなお気持ちなのか察するに余りあります」
モランは目を伏せて言った。
幼い頃から彼女を見守る者として、痛々しいくらいに彼女の身を案じている。
「私も……お嬢様は御両親を亡くされた時と同じで、ある種の『危うさ』を感じております。
あの時は知識も技能もない少女でしたが、今は能力を兼ね備えた上で『危うい』ことを心配しております」
セバスチャンも目を伏せて言う。
一番大変な時のセレス家を彼女と支えた彼が、役目を辞してからも彼女を心配する気持ちが痛いほどわかった。
俺はセバスチャンに聞いた。
「レイの魔法の技術は貴方が教えたのでしょう?
彼女にかけられた魔法について、貴方なら何かわかりませんか?」
「申し訳ございませんが、私には分かりません。
今の私に術を使える力はございませんので」
「そうですか。貴方は彼女にどのような術を指導されたのですか?」
「私はセレス家の儀式に関わることだけをお伝えしました。もしそれ以上にお嬢様が術を使えるとしたら、それはお嬢様自身で身に付けられたものです」
「そうですか……」
「亡きご両親は魔法を使える方々でした。
だからお嬢様は小さな頃から魔法を使える素養があったのです。しかも自由な発想で、また見様見真似で、術を使う練習は幼い頃からなさっていましたから」
セバスチャンとモランが退出する。
部屋にはセレス伯爵と俺が残された。
セレス伯爵はおずおずと口を開いた。
「クローディア公爵子息、
誠に言い難いのですが……レイが私に『このまま記憶が戻らなければ自分の好きにして良いか?』と聞いてきました。
あの子の今までを考えると、私としては家門に縛られずに好きに過ごしてくれればと考えております」
「それは……婚約解消もあり得るということですか?」
「クローディア公爵家には大変申し訳ないことですが、記憶が戻らなければ、あの子には重荷になるだけかと……」
「……」
俺は言葉を失った。
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