特使1 昭国の特使
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
それは突然のことだった。
孤児院から一ノ宮に戻ってきた私の前に、一目で高貴だと分かる、異国の衣装を纏った集団がいた。
集団の中央に居る、1番背の低い紫衣の若い男性が、私を注視している。
そして唐突に声をかけられた。
「お主、名ハ?」
「アレキサンドライトと申します」
私は相手が誰だか分からなかったが、やんごとなき方なのは分かるので、とりあえず失礼のないように心掛ける。
「世の供にしてやル。一緒に来イ」
異国の服とイントネーションの少し違う話し方、おそらく東の国の方から来た特使だろう。
「恐れながら、私には職務ございます。特使様のお相手は相応しい方がなさいますので」
「我はお主が良イ」
「大変光栄ではございますが、私では相応しくありません」
「相応しいかどうかは我が決めル」
「……」
困った。
国が違うと、こちらの言い分は通じないのだろうか?
騒ぎを聞いた特使付き官吏達が一ノ宮に来て、やんごとなき方々は無事に連れて行かれた。
私が一ノ宮に来てから、第二王子殿下をはじめ、他の宮からも度々来客があった。
しかし特使が直接来るなんて、前代未聞の出来事だった。
✳︎
翌週、クローディア公爵閣下の執務室に出勤した私に、公爵閣下の秘書官が言った。
「セレス君、君には昭国の特別使節団に官吏として付いてほしい」
「恐れながら、私では務まらないかと存じます」
「昭国からの強い希望なのだ」
第二王子ライオール殿下の成人を祝い、二週間程前から各国の特別使節団が王宮に滞在している。
その中で数年ぶりに特使として入国した昭国の使節団について、王宮側が手を焼いているらしい。
各国との文化の違いから特使には特別に上級官吏を付けて、王宮滞在時に不便がない様に取り計らう。
昭国は担当の上級官吏を次々に辞めさせてしまい、王宮の人間を寄せ付けず、公務も滞ってしまっているとのことだった。
王宮側としてはなんとか官吏を付けて公務を進めたいため話し合いを重ねていたところ、昭国はなぜか私を指名してきたと言う。
理由は使節団トップである昭国第一王子ヤン殿下が、私の容姿を気に入ったから。
我が国では高貴な者ほど明るい色合いを持つ者が多い。王族も高位貴族も輝くような髪色か、明るい瞳の色を持っている。
クローディア公爵家もまさにそうだ。
対して昭国は黒髪黒目の人が多く、特使も全員黒髪黒目だ。
私の様に黒い髪で暗い眼の色は上級官吏にはいないため、ヤン殿下は下級官吏の私の容姿を見て気に入ったらしいとのこと。
容姿で気に入れられても、正直気が進まない。
私がどうしたものかと思案していたところ、クローディア公爵閣下とユリウス様が執務室に入ってきた。
いよいよ特使編突入です。
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