本当の姿を見せる魔法2 王女の外遊
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
第二王子ライオール殿下の成婚の儀まであと9ヶ月というところ、近隣国の王女が我が国に外遊することが決まった。
本来なら国賓を招くために十分な準備期間を取るのだが、王女の強い希望で急遽決定したらしい。
その国とは友好関係を築いて長いが、王女の我儘さは我が国に伝わる程だった。
王女は我が国の第二王子と同じ年で、何度か交流もある。
そのため急な国賓をもてなすのは第二王子ライオール殿下となった。
成婚の儀の準備は順調に進んでいるが、予定外のことに負担感は否めない。
そのため王女側も短期の外遊ということで、なんとか折り合いをつけた。
俺は忙しいながらもレイとの成婚に向けて、幸せな日々を過ごしていた。
けれど思いがけない出来事が起こる。
✳︎
「それでリブウェル公爵子息とユリウス様は、連日忙殺されているのですね」
「タタ王女は末っ子だから甘やかされて育てられて、とにかく我儘なの。
私が身重でなければ厳しく言ってやるのに!」
「シルフィーユ様、あまり興奮されるとお身体に障りますから」
王女滞在中、王女の話し相手を高位の貴族令嬢が務める。
いつもならライオール殿下の婚約者ミア様とシルフィーユだが、シルフィーユが妊娠して動けないため、他の侯爵令嬢が代わりを務めている。
ところが、この侯爵令嬢とタタ王女が合わないらしい。
度々場が険悪になるため、この度レイがミア様の秘書官として、場に同行することになった。
タタ王女は根が悪い人ではないのだが、思ったことをすぐ口にする様な堪えどころのない人だった。
本音と建前を使い分ける高位の貴族令嬢とは総じて合わないようだ。
父上と母上は現在昭国を訪れており、しばらく公爵家の引き継ぎができない。
それを知ったライオール殿下が、レイにミア様の秘書官として王宮に出仕するよう要請した。
レイが下級官吏だった頃、ミア様はレイを秘書官として引き抜きたかったようだが、それは叶わなかった。
だからレイが今回短期的に秘書官として出仕することができるよう、ライオール殿下が手を回されたのだった。
✳︎
「レイ、また王宮に上がるから、これつけてくれる?」
俺は自分の左耳の飾りと同じ物を見せる。
特使付き官吏の時にも渡した、精神を操作する系統の魔法を跳ね返す魔導具だ。
「ユリウス様、今回はあくまでミア様の秘書官ですし、魔導具は付けなくても良いのではないですか?」
「でも心配だからつけてくれる?」
「今回はライオール殿下のご意向ですし、何かあってもユリウス様が守ってくれますから」
「……」
「……」
「……もしかして、つけたくない?」
「……だって、痛いから……」
レイが目を伏せて、恥ずかしいそうに言う。
やばい、かわいい。
その後、理性が飛んだ。
最近、レイがようやく甘えてくれるようになったと思う。
もともと彼女は何でも一人でやってしまう。
しかも一人でできてしまう。
だから頼られると嬉しくなってしまう。
それにとても物分かりが良い。
しかも全てを言わなくても、すぐに察してしまう。
だから我儘を言わない。
なので、我慢せずに自分の気持ちを正直に言ってくれると嬉しくなってしまう。
俺は結局「彼女のお願い」を聞き、魔導具を付けなかった。
お付き合い頂いている方、いつもありがとうございます。こちらの話はユリウス視点で進みます。
どうか彼らのこれからを見守って頂けると幸いです。
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