本当の姿を見せる魔法1 シルフィーユ
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
「レイ、帰るぞ」
「ユリウス様」
「ちょっと、ユリウス!迎えが早いのではなくて?私まだセレス嬢と話し足りないわ」
「動けないシルフィーユと違って、レイは忙しいからな」
「本当、こんなに動きにくくなるものとは思っていなかったわ。だからセレス嬢とお話するのが私の楽しみなのに、もう時間なの?」
「シルフィーユ様、また伺いますので」
「絶対ね!約束よ」
「ロバート、後は頼む」
「わかった。セレス嬢、いつもありがとう」
「勿体無いお言葉です、リブウェル公爵子息」
俺とレイはイヴェル侯爵家から馬車に乗ってクローディア公爵邸に帰る。
ロバートと成婚したシルフィーユに赤子ができ、シルフィーユは現在実家に里帰りしている。
産月はまだ先だが、心配したシルフィーユの両親が大事を取らせて屋敷から出さないらしい。
ロバートもシルフィーユの体調を心配していて、今はイヴェル侯爵家から王宮に通っている。
屋敷から動けないシルフィーユがレイと話したがるので、レイはたびたび見舞っているのだ。
「シルフィーユがいつもすまないな。我儘に拍車がかかっているようだが」
「出産を控えられて、そういう時期もあるのだと思います。私は構いません」
「俺は構う。レイがシルフィーユばかりでは困る」
「ふふ……善処します」
レイは官吏を辞し、クローディア公爵家に婚約者として入った。
未来の公爵夫人になるべく母上からの引き継ぎも始まったが、優秀な生徒らしく、すんなりと進んでいるらしい。
あとは社交を通じて、周囲にその立場を知らしめてゆくようだ。
シルフィーユは社交界でも確固たる地位にいる。そのためシルフィーユの元にレイが呼ばれるのも、彼女なりの気遣いらしい。
「レイはシルフィーユのどこが良いんだ?」
「たくさんありますが……1番は強くて美しいところです」
「まぁ、彼女に口で勝てる者は少ないかもな」
「それもありますが……シルフィーユ様は『悪いことを悪い』と断じることができるお方です。特に貴族社会では口に出すことができない場合も多いですが、シルフィーユ様はできます。その有り様が強くて美しいのです」
「それはシルフィーユの実家の身分が高いからだろう?」
「はい。身分の高い方だからこそ、シルフィーユ様自身の強さのままでいられるのでしょう。取り繕われていない美しさに惹かれてしまいます」
「ライオール殿下もそうかもな」
「はい。身分が高いゆえに許される奔放さや傲慢さを正しいことに用いて下さるのは、私のような者にとっては救いなのです」
「レイも強くて美しいと思うけど」
「強いなら、護衛は外して下さい」
「却下」
「むぅ」
「ははっ」
「美しくはないですが、強く在りたいとは思っています。弱い自分を隠せますから」
レイはあまり自分のことを語らないが、初めて「弱い自分」と言ったのが印象に残った。
俺は後々、この意味を知ることになる。
お付き合い頂いている方、いつもありがとうございます。こちらの話はユリウス視点で進みます。
どうか彼らのこれからを見守って頂けると幸いです。
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