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月の精霊5

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

「セレス嬢、改めて巻き込んで済まなかったね」


「王太子殿下の御身がご無事でなによりです。

恐れながら、ご自身を囮に使う様な真似はお控えられた方がよろしいかと」


「あれ?気付いていたの?」


「妃殿下を伴われていない上、護衛騎士一人でしたので」


「鋭いね。本当は妃と観劇に興じるつもりだったんだけど、私を害そうとする者があるとの情報が入ってね。良い機会だから使わせてもらった。

君の兄は優秀だしね」


「だとしても兄の負担が大きくなりますので、次からはもう少し御考慮頂けますと……」


「兄思いなんだね。だから君も手を出したのか。

君は人を見る目がある。

ブロウ家の一件といい、密輸品の一件といい、私の即位前に貴族の膿を出せるのは喜ばしいことだ。

誰かのおかげでね」


「殿下の忠実な臣下の働きと存じます。

私も兄を誇りに思っています」


「まあ、今はそういうことにしておこう。

ところで今日の働きについて褒美をとらす。

希望はあるかい?」



「では、私が此処にいた事実を秘してください」



「どうして?王族の危機を救ったんだよ?」



「恐れながら、この様な格好が明らかになると家にも迷惑をかけますので」



「名声より、家のことを気にかけるの?

ああ、ユリウスにバレたら困るからかな?」



「それ以上の詮索は、何卒御容赦を」



「ははは、面白い子だ。わかった。

君は弟の友人の大事な婚約者だ。

これからもよろしく頼むよ」



「勿体無いお言葉にございます」



✳︎



迎賓席に押し入った賊は7人、うち4人を兄がその場で倒し、残りは廊下で捕縛した。

階段から逃げた仲間は劇場の出口で、王太子殿下の側近と騎士団に捕縛されたそうだ。観客に紛れていた仲間と、劇場近くで待機してしていた仲間ももれなく。

王太子殿下の側近は優秀だ。


観客のうちこの騒動に気付いた者は少なく、無事に舞台の幕が閉じた。


「レイ、その格好は似合っているけど、危ないことに首を突っ込むのはいけない」


「お兄様、私は会場スタッフなのです。お客様の安全を守るのは当然でしょう?」


「全く、昔から変わっていない。

身近な物を武器にできるか考えるところ!

あと剣だってそうだよ!

公爵家に入ったからもう大丈夫だと思っていたのに」


「お兄様には昔からご心配をおかけしておりましたが、もう大丈夫ですよ。

さすがに公爵家で剣は振れませんから」


「ちなみに、この状況はクローディア公爵子息は知っているの?」


「そこは何卒ご内密に」



✳︎



王太子殿下と兄を見送り、急いで劇場の裏口から出る。表にはまだ王太子殿下の部下達がいるので、裏口から出て馬車を拾うことにする。



予定よりも遅くなってしまったので、商会に寄って着替えるのは難しいかもしれない。

とりあえず目立つ格好なので、ローブを被りながら急いで歩く。


どうしようか考えながら歩いていたら、路地を曲がったところで人とぶつかりそうになった。



「失礼しました」



私は俯いて謝ってから、横を通り過ぎようとする。




するといきなり腕を掴まれた。



驚いて相手の顔を見ると、見知った人だった。




銀色の髪に整った顔立ち、

アイスブルーの瞳が驚いたように私を凝視してる。




「……レイ?」




!!


どうして裏路地に、この方が⁈

今はまだ王宮にいるのではないの?



「ひ、人違いでは?」



私は咄嗟に顔を伏せる。



王太子殿下も兄だって、最初私だと分からなかったから大丈夫なはず。

今だってローブを被っているし、フードで顔は隠れているはず。



腕を離そうとすると、より引き寄せられた。

そしてフードを下げられる。



私は顔を上げられない。

視線が痛いほど突き刺さるから。



「へえ、知り合いに良く似ているけど、このままではわからないな。顔が良く見えないと、腕を離してあげられない」



私は恐る恐る顔を上げる。


ユリウス様はいつもの無表情で私を見下ろしている。

目が笑っていない。



これは……かなり、まずい。




するとユリウス様は、貴族の笑顔を浮かべて優雅に微笑んだ。



「失礼、人違いだったようだ。

しかし巷で噂の『月の精霊』が手に入るとは運が良い。このまま連れ帰ってしまおう」




「!」



バレてる。

そして怒っている。




折角、王太子殿下と兄に口止めできたのに。




その後、私はその格好のまま公爵邸に連れて帰られ、部屋に連れて行かれ、ユリウス様にきっちりお仕置きされた。



エリザベス様やサラ様は心配して下さったが、諸事情によりしばらく部屋から出られなくなってしまった。



「俺がレイを見間違えるとでも?」



優雅に微笑むユリウス様を見て、

このようなことは二度とするまいと

私は誓ったのだった。

ここまでお読み頂いた方、ありがとうございました。この後は前作を通して個人的に一番書きたかった話を投稿予定です。初回は今日の夕方になるかと思います。

引き続きお付き合い頂けると幸いです。


評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。

ありがとうございます^_^

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