魔導具
お立ち寄り頂きありがとうございます。
こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
「ユリウス様、もう王宮から下がりましたし、魔導具をお返ししても良いですか?」
私は意を決して、ユリウス様に直談判する。
以前トライしたけど結局有耶無耶になってしまっていたので、今回こそは!
「俺としては心配だから付けておいてほしい」
ユリウス様がいつもの顔で言う。
「ですが公爵邸にいるのですし、もう大丈夫かと思います。
ユリウス様の大事な魔導具のスペアなので、何かあった時のために持っていて欲しいです」
この魔導具はユリウス様のお祖父様がユリウス様のために作られた特別な物。
ユリウス様が身につけている物と、私がお借りしている物の2つしかない。
魔術研究者として名高いクローディア前公爵閣下の技術なので、失った場合には再現が難しい代物だろう。
「何かって何?」
ユリウス様は涼しい顔で言う。
返してもらう気がなさそうだ。
これでは困る。
「ユリウス様の耳に付けてある方が壊れてしまった時にすぐにつけられるように」
「だとしても、大丈夫だ」
「なぜそう言い切れるのです?」
「俺はもう自分で対処できるから、魔導具が壊れても平気」
「私は平気ではないです」
「どうして?」
「ユリウス様が魅了の魔法とかにかかったら嫌だから」
そもそも我が国に魔法が使える人は少ない。だから魅了の魔法が現存するのかはわからないが、とにかく有名な魔法なのだ。
魔法は効果が一時的なものが多い。
魅了の魔法はまさにそうで、この魔法にかけられてトラブルにあったという話で有名な魔法だ。
私としては精神を操作する系統の魔法全般にかかってほしくないが、一番有名な魔法を挙げて説得を試みてみた。
「……」
ユリウス様は、相変わらず涼しい顔をしている。
うーん、私の熱意は伝わっていないのだろうか?
「……魅了の魔法なら、もうかかってるけど」
「え⁈どういう意味ですか?」
「レイしかいらない」
私は堪らず目を逸らした。
ああー、これはシルフィーユ様をモデルにした恋愛小説にあったシーンと同じ。
彼に真顔でこんなセリフ言われたら、一回で恋に落ちてしまう。なんて破壊力。
既に挫けそう。
でもここで引くわけにはいかない。
「……なら、私のお願いを聞いて下さい。
私も、ユリウス様が他の誰かのところに行くのは嫌です」
なんとか最後の力を振り絞って伝える。
たぶんここで折れたら、ずっと魔導具を返せないままになりそうだから。
「そんな顔されると、まずいな」
「お願いユリウス様、外して…んっ」
また唇を奪われて、言葉が続けられない。
前回もこれで有耶無耶になってしまった。
私は意識が持っていかれそうなのを堪えて、なんとか後ろに下がった。
唇が離れる。
ユリウス様の目をみる。
アイスブルーの瞳に、いつか見た獰猛な気配を感じた。
「ずっと一緒にいてくれるなら、いいよ」
「っ」
再び口を塞がれて、正直その後のことは覚えていない。
どうして彼相手だと思ったようにいかないのか、結局分からない。
いつも敗北してしまう。
ただ翌朝には魔導具が外されていたので、なんとか目的を達成したのだった。
次に繋がる話をいくつか投稿してから、個人的に一番書きたかった話を投稿する予定です。
引き続きお付き合い頂けると幸いです。
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