特使27 別れ
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
私は昭国使節団のメンバーに別れの挨拶をする。
護衛官や同行者の中には私と同じ歳の娘がいる人もいて、なんやかんやで好意的にしてもらっていたな、と思う。
本当に良い方達に恵まれた。
私はシャオタイ護衛長と握手をする。
彼は我が国の言葉は単語数個程度しかわからないから、また辞書を使って別れの挨拶をした。
するとシャオタイ護衛長がユエ執務官を呼び、何か言っている。
ユエ執務官は苦い顔をしている。
2人は長い付き合いだと聞いている。タイプは違うけど、仲が良い様だ。
2人の様子を眺めていた私に、ユエ執務官は気まずそうに言った。
「アレクさん、色々ありがとうございまシタ。
あと、捕えたあの2人に何を言ったのデスカ?
シャオタイが聞きたいそうデス」
気まずそうな顔の意味察して、私は少し可笑しくなる。
ユエ執務官は私の答えを予想していながら、敢えて聞いているのだ。
シャオタイ護衛長のお願いには弱いのかな?
「『密輸品は押さえました』と言いました。
ユエ執務官は、先程宰相閣下からお聞きになったと思いますが」
ユエ執務官はやっぱりという顔をした。
昨晩を経て、ユエ執務官は結構表情を出すようになったと思う。
「はあー、貴方の指示デシタカ。
全くとんでもない方ダ」
ユエ執務官にしては大袈裟に言う。
「ふふ……昭国に連れて行かなくて正解でしょう?」
ユエ執務官は私の言葉にびっくりした顔をして、それから初めて声を立てて笑った。
「はははっ、それはどうでショウ?
ヤン殿下がお望みならそうも行きまセン。
まあとりあえず昭国として、貴方個人に引き続き便宜を図りまショウ」
可笑しそうな顔をしたユエ執務官は、少しヤン殿下に似ていると思った。
「私はしがない官吏です。もう見返りがないですよ」
「ならば貴方個人に投資ヲ。また連絡シマス」
そう言ってユエ執務官は手を出した。
私は少し意外に思った。
本来なら身分が下の私から手を出すところだからだ。
「道中お気をつけて。
ヤン殿下と皆様のご無事をお祈りしております」
私は初めて彼と握手をした。
昭国の独特の香の香りがした。
ここまでお付き合い頂いた皆様、いつもありがとうございます。特使編もあと3話になります。
彼らのこれからを見守って頂けると嬉しいです。
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