特使21 逃げた先には
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
「アレクさん!」
2階からユエ執務官の声がして、バルコニーに駆け寄り、身を乗り出して下を見る姿が、私の瞳に映る。
私は身体が落下している間、それをスローモーションの様に見ていた。
そろそろ地面に叩き付けられるかと思う時、私の体はしっかりと抱き留められる。
それは覚えのある腕、そして包まれる彼の匂い。
見覚えのある銀の髪とアイスブルーの瞳。
「ありがとうございます、ユリウス様」
「俺は受け止める自信はあったけど、まさか本当にやるとは……」
「ユリウス様なら大丈夫だと思ってましたから」
「レイが落ちる瞬間は寿命が縮んだ」
ユリウス様は顔を伏せて、長いため息を吐いた。
「心配かけてごめんなさい。助けてくれてありがとうございます」
「悪いと思うなら、次はもっと安全なプランを提案してくれ」
「分かりました」
私は横抱きにされたまま、ユリウス様に運ばれて馬車に乗せられる。
このままユリウス様と一緒にクローディア公爵家別宅に向かう。
ユエ執務官の話から、夜会を抜けても良い状況になっているので問題ないだろう。
馬車の中でユリウス様に一連の出来事を報告をした。
ユリウス様は私がヤン殿下の妃に勧誘されたこと、身体の自由を奪う香や術をかけられたことを聞いて大層不機嫌になった。
こうなることは予想できたが、彼に隠し事はしたくなかった。
以前、官吏になったことを秘していた時のような顔をさせないためにも。
「ユリウス様からお借りしている魔導具のおかげで助かりました」
私は自分の左耳の銀色の飾りを触る。もう痛みはほとんどない。
「まさか本当に使うことになるとは思わなかった」
ユリウス様はそう言いながら私を抱き締めた。
結局、また彼に心配をかけてしまったと反省する。
同時に、また彼に助けてもらったのだと実感する。
なんでも一人で済ませていた自分が、あまつさえ他人に相談してから動くなんて。
あの頃の自分からは、思いもよらない変わりようだ。
それもこれも、ユリウス様に初めて助けて頂いた時から。
自分が守られていると実感する時、必ず彼の姿が側にあることに気付く。
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