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特使19 会場の外では

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

私は他の方からのダンスの誘いをやんわりと断りながら夜会の会場を出る。


少し離れたところに、ユエ執務官が待っていた。


彼と一緒に昭国特使の離宮に急ぐ。


離宮内の庭で、使節団の同行者2名がシャオタイ護衛長と複数の護衛官に押さえつけられていた。


同行者のうち、ヤン殿下を襲撃した者を捕えたのだろう。


襲撃の後はヤン殿下のガードが固かったため、この夜会に乗じて殿下を亡き者にしようと企んだようだ。


シャオタイ護衛長に曰く、捕えた者は指示した者の名を吐かないと言う。


ユエ執務官を見ると大して焦っていない。

既に物的証拠は押さえたのだろう。


私は捕えられた者にそっと近付き、耳元で小さく囁く。


「扣留私货」


2人はピタリと動きを止めた。


その後、シャオタイ護衛長の尋問中に指示された者の名を吐いたそうだ。


これで帰国後は、ヤン殿下の命を狙う派閥を一掃できるだろう。



✳︎



昭国特使の離宮を離れた私は、王妃様にお見せする昭国デザインの衣装一式を王妃宮に届けた。


金色に近い黄色をメインに我が国伝統の装飾を施した衣装と、ロイヤルブルーの地に白の繊細な刺繍の入った衣装の2点を用意した。


どちらも、王妃様の髪色に合うだろう。

これで、少しでも興味を持ってもらえるといい。


これで私の「昭国の文化を広める」任務は一旦終了となる。



あとは義母であるセレス伯爵夫人とクローディア公爵夫人がサロンで話題を広めて下さるだろう。



ユリウス様の妹君のエリザベス様にも興味を持って頂きモデルとして着用して頂ければ、新しもの好きの若年層を取り込めるかもしれない。


いやいや、可愛らしい彼女を利用するようなことはいけない。


自分を諌めてから、今後の商品展開に思いを馳せた。



✳︎



夜会会場に戻ろうとすると、ユエ執務官に呼び止められる。


夜会会場にいるヤン殿下の元に戻る前に、捕えた同行者について私に報告しておきたいと言う。


ユエ執務官に続いて、夜会会場の昭国の控え室に入る。


控え室には、昭国特有の香が焚きしめられているようだ。


私は強い香りが苦手なので、なるべく吸わないようにする。


椅子に腰掛け、ユエ執務官と向かい合う。


ユエ執務官曰く、同行者の自白を含めて、殿下を害する派閥を失脚させる証拠は揃ったとのこと。


ヤン殿下の身の安全に繋がる良い報告で、私は安心した。



「ところでアレクさん、捕えたあの2人に何を言ったのデスカ?」



「大したことではありません。そもそも私は昭国の言葉は話せませんし」



「まあ、そういうことにしておきまショウ。

アレクさん、我々は明日の夜には帰国シマス」



特使団が決めた、当初の予定通りの日程だ。

私の任務もあと僅かだと、改めて思った。



「改めてこの度はご協力ありがとうございマシタ。アレクさんのおかげで目的が達成できて、無事に国に帰れマス」



「私は自分にできることをしただけです。ユエ執務官とシャオタイ護衛長の指示のおかげかと思います。私も明日までしっかり務めさせて頂きます」



「明日までと言わず、長くお務め頂けまセンカ?」



「どう言う意味ですか?」



「以前にヤン殿下の妃にならないかと、お誘いしましたヨネ?私は本気で考えておりマス」



「以前にも申し上げましたが、私ではヤン殿下に相応しくありません。お断り申し上げたはずでは?」



「そのようなことはないデショウ?国王陛下から直に声を掛けられる程のご令嬢なのダカラ。

ヤン殿下さえ良ければアレクさんを昭国に迎えたいと、明日陛下に奏上しようと考えておりマス」



ニコニコして冗談を言ったのかと思ったが、ユエ執務官の目は真剣だった。

彼はどうやら本気で考えているようだ。


明日は、国王陛下と特使の謁見が予定されている。特使が帰国の挨拶をするのだが、その場で陛下に奏上されるのは正直避けたい。

国の正式な記録に残ってしまう。



「ヤン殿下は、承知なさらないと思いますが」



「殿下はアレクさんなら良いと言いマスヨ。

貴方のことを大層気に入ってイル。

貴方も感じているでショウ?」



「私には分かりかねます」



「出来れば貴方にはこのまま、帰国までこの部屋で大人しくしていて欲しいのデス。後は全てこちらで致しマスノデ」



「それはどういう意味ですか?

私が夜会の会場に戻らなくても良いと?」



「ヤン殿下には、私からお伝えしてありマス。アレクさんはお疲れになったので、先に退出スルト」



「流石、手際が良いですね」


私は気分が悪くなってきた。




「お褒め頂き光栄デス」


ユエ執務官は細い目を嬉しそうに細めた。

評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。

ありがとうございます^_^

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