特使18 夜会2
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
ヤン殿下とのダンスを終え私がゆっくり後ろを向くと、目の前に見知った姿があった。
「私と一曲お相手頂けませんか?」
見慣れた手が差し出される。
第二王子の側近であることを示す装飾、王家直属の者を表す正装を着こなした長身の男性。
銀色の髪がシャンデリアの光に輝く。
アイスブルーの瞳は何を考えているのか?
「光栄です。クローディア公爵子息」
私は迷わず彼の手を取る。
彼のリードのせいか、以前の夜会のダンスの時より身体が引き寄せられる。いつもより距離が近い気がした。
「ユリウス様、ライオール殿下の側に居なくてよろしいのですか?」
「一曲だけ許可を頂いている」
「そうでしたか。安心しました」
「レイ、話に聞いていたが、その衣装は予想以上に似合っている。もう連れ帰りたい」
「それは困ります。まだお互い仕事が残っています」
「こちらは終わった。いつでも動いていい」
「ありがとうございます。ユリウス様もお忙しいのに……」
「愛しい婚約者の頼みだから」
「ふふ」
彼とこの様に話すのは、王宮の空き部屋で会ったあの日以来だ。
この夜会が終われば、各国の特使を見送って一連の行事が終了となる。
殿下の側近としての務めをこなし、私の事まで案じてくれるユリウス様には感謝しかない。
頂いた温かい気持ちを、私は彼に返せているだろうか?
曲が終わり手を離そうとすると、ユリウス様が手の甲を口付ける。
優雅な所作で思わず見惚れてしまった。
「レイ、十分に気をつけて」
その言葉で、私は胸がいっぱいになる。
これから私がすることは、また彼を心配させるだろう。
それでも送り出してくれた彼に、私はいつか報いることができるだろうか?
「はい。行ってきます」
私も、彼の手を離しがたかった。
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