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特使17 夜会

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

王家主催の、特使を歓迎する夜会が始まる。


第二王子殿下の成人の祝いに各国の特使がその国の正装で出席するので、いつもの夜会とは全く違う、異国感が漂う雰囲気だった。


ヤン殿下は東の国に多い、いわゆる長袍だ。昭国では高貴な色と言われる薄紫衣を纏い、颯爽と歩く。


いつもの幼い我儘若君は、公務だと全くの別人になる。

貴公子というのが相応しい、洗練された所作と高貴な者だとわかる独特の雰囲気。


完全な外交モードで周囲を圧倒してゆく。

高位の正装も相まって、生まれついての王子だということが良く分かる。


お付きのユエ執務官をはじめ、供は薄青の長袍で統一されている。

長身な彼らを従え、ヤン殿下を先頭に歩く一行は、遠目にも目立つ集団だ。


そんな中に下級官吏の私も同行しているのだから、周囲も余計にざわざわとしている。


王宮で流れている噂のせいかと思うが、今回は私にも注目してもらうことに意味がある。正確には、私が着ている衣装に目を向けさせたいのだ。


昭国一行は揃って、国王陛下と王妃陛下に挨拶をする。

ヤン殿下の陛下への奏上も完璧で、内心ホッとする。

国王陛下と王妃陛下の心証も良さそうだ。


「そなた、セレス伯爵令嬢か?見違えたな」


国王陛下からお言葉があり、私は恭しく応じる。


「はい。特使付き官吏の務めのため、夜会にも同行させて頂いております」


「セレス伯爵令嬢、素敵な装いね。昭国の衣装かしら?」


「王妃陛下、光栄にございます。昭国の伝統の衣装をもとにして、我が国の素材で作ったものにございます」


「素敵なデザインで興味深いわ」


「お褒めの言葉を賜り光栄にございます。宜しければ、後程王妃宮にお持ち致します」


「楽しみだわ。ぜひお願いね」


私は昭国のデザインの衣装を纏っている。

光沢のある薄い黄色地に青と緑の刺繍、白の差し色で、ウエストから裾が広がる華やかな衣装だ。


昭国伝統の女性衣装を、我が国でも好まれそうな仕様にカスタマイズした。

セレス領で生産した布地を使い、王都の商会の協力のもと再現したのである。


1週間と短い期間であったが、ドレスのような複雑な縫製ではないのでなんとか間に合った。


「昭国のデザインを用いた衣装を製作する権利を認める」というのが、私がユエ執務官に出した誓約書の大まかな内容だ。


我が国の夜会用のドレスは、パニエを付けてスカートの広がりにボリュームを出している。一方、昭国の女性の衣装は身体のラインに合わせた裾の広がり方で美しく見せるようだ。


ドレスよりシンプルなデザインで、服自体がドレスよりは重くない。この点は女性に受け入れられる可能性がある。


衣装が王妃様の目に留まったのは好都合だ。

女性陣に興味を持ってもらえれば、昭国の文化の周知に繋がる。


第二王子ライオール殿下に挨拶した際は婚約者のミア様も興味を示して下さり、新しいデザインに対する感触は悪くないようだった。


ライオール殿下の後ろに控えているユリウス様を見るといつもの無表情だったが、何か言いたそうな目をしていた。



✳︎



舞踏会の時間帯になり、私はヤン殿下にエスコートされフロアに入る。


いつもなら目立つ真似はしたくないのだが、今回は注目してもらってなんぼ。しかもダンスをしても大丈夫な性能の衣装だと証明しないと、この国で流行らせることができないだろう。


ヤン殿下は夜会までにダンスをきっちり仕上げてきた。もう誰と組んでもきちんとリードできる。夜会の作法も心配ない。



「アレキサンドライト、世はきちんとできておるか?」


「素晴らしい出来です。殿下、自信をお持ち下さい」


「お主も衣装がよう似合っておる。このままお主とだけ踊るわけにはいかぬのか?」


「これも特使の務めでございますので。殿下とダンスをお待ちのご令嬢にお譲り致しませんと」


ヤン殿下と私のダンスについて、周りの評価もまずまずの様だ。


今のヤン殿下は完璧な貴公子だ。


黒いサラサラとした光沢のある髪を飾り紐で束ね、切れ長の目に黒曜石のような瞳。


長身で細身だが、我が国の男性よりもさらに線が細い様に感じる。手足が長いのでダンスも良く映える。この会場では少ない黒髪と黒目は、逆に神秘的に見えるだろう。


そのためか、私達はかなり注目されているようだ。


それを全く気にする素振りもなく、殿下は私だけを見ていた。ダンスの相手だから当然なのだが、彼の視線の意味を勘違いしそう。



「殿下のお相手が出来て、光栄でした」



「世も楽しかった。これからは特使として役目を果たすことにしよう」


「ご立派です、殿下」


「どこにいても、世の無事を祈っていてくれるか?」


「もちろんでございます。

護衛官もおりますので安心してお過ごし下さい」


ヤン殿下とのダンスを終え、一礼して手を離した。

評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。

誤字報告も感謝です。

ありがとうございます^_^

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