結婚式
お立ち寄り頂きありがとうございます。
こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
私は王立大聖堂の通路を一人で歩いている。
白いドレスを纏って、手にはブーケ。
この先に進むと、ユリウス様が待っている。
これから結婚式に臨む。
婚礼の衣装はお義母様プロデュースの渾身の作らしい。
今までのウェディングドレスとは形が違うらしく、身体のラインに合わせた裾の広がり方で美しく見せるそうだ。
ドレスをはじめ、式の準備にご尽力頂いたお義母様には頭が上がらない。無事に式を挙げられるのはお義母様と家令のおかげだと思う。
今日この日を迎えられて嬉しいと思っている自分と、今この時になっても、成婚することを信じられていない自分がいる。
ビヴィ公爵子息なら「花嫁としての自覚が足りないのではないか?」とか言われそうだ。
その彼は大聖堂で参列してくれているだろう。
お義母様によると、参列の関係を調整することが一番難しかったとのこと。
なぜか王族が軒並み参列しているとか、
東の大国の使者が参列しているとか、
王立研究所の偉い教授とか、
商会の偉い人とか、
私が「さすがクローディア公爵家の交友関係は広いですね」と申し上げたら、お義父様とお義母様は2人でため息を吐いていた。
それで聖堂に入らない人達に挨拶しながら、この通路を進んでいる。
王弟妃宮の使用人達、
官吏時代の同僚達、
孤児院の子達も来てくれていた、
院長先生も、
「ヒメ、めっちゃきれい」
王太子殿下の側近の衣装を着たコウがいる。
「お嬢様、お綺麗です」
王太子殿下の側近の衣装を着たフェンがいる。
今この場所で会っていることが不思議に感じる。
出会った時は、それぞれの場所で、
各々の人生を懸命に挑んでいた。
死にたい気持ちを隠して、生き続けようとして、
優しさ故に世界を諦めて、それでも諦めないように努めて、
自分を殺しても、守りたい者のために抗って、
それが孤独であろうとも、遺されたものを守るために自分を律し続けて、
定めを受け入れて、その教えを全うするために世界を彷徨って、
自由を願われても自由になれずに、それでも自由になる道を探して、
有限の時間の中の、一時を過ごしたそれだけの関係なのに、強烈に存在を焼き付けた人々。
その輝きが心に残る、輝く宝石のように。
これもまた綺麗なもの。
人の中に見る綺麗なもの。
嗚呼、世界にはこんなにも綺麗なものがあったのか。
まだこの世界に期待できる。
生きていたいと思える。
それに気付かせてくれたのは、ユリウス様。
自分1人では辿り着けなかった境地。
「レイ、緊張してる?」
ようやく所定の場所に辿り着いた私に対して、ユリウス様はわざと面白そうに言う。
こういう場に慣れているとはいえ、余裕な表情を崩さないのは、いつもすごいと思う。
「してます」
この扉を開けたら、参列席には錚々たる方々が揃っている。さすがに緊張する。
だけどユリウス様の隣にいれば、きっと乗り切れると思えるから不思議だ。
私はユリウス様を見上げて言った。
私と揃いの白い衣装を着こなす彼が、一段と眩しい。
髪を上げているから端正な顔がよく見える。
「ユリウス様は『王子様』みたいですね」
私はいつかのユリウス様を思い出して、同じセリフを口にする。
それに気付いたのだろうか?
アイスブルーの瞳が優しくこちらを見て言う。
「貴方が1番綺麗だ。『お姫様』」
目の前に見慣れた手が差し出される。
私よりも一回り大きな、温かな手が。
アイスブルーの瞳に宿る、温かな眼差しが。
私は、彼の手を取る。
そのための努力を、これからも、し続けるために。
彼を幸せにして、
自分が幸せになるために。
その日、私とユリウス様は成婚した。
婚約してから早2年、私は19歳になっていた。
お付き合い頂いている方々、いつもありがとうございます。完結まであと2話、本日が最後の投稿になりそうです。
登場人物達のこれからを見届けて頂けると嬉しいです。最後までご一緒できれば幸いです。
評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、メッセージ頂いた方、毎回励みになります。
誤字報告も助かります(活動報告でお礼申し上げております)。
いつもありがとうございます^_^




