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再会

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

この日、私は王太子殿下の招きで王太子宮の庭園に来ていた。これからお会いする御方とは約1年ぶりの再会となる。


第二王子殿下の成婚の儀に伴い、各国の使者が訪れている。


王太子殿下は王族側のホストで使者達をもてなしているが、この国には特別な計らいを許すのだろう。

東の大国にして王位継承争いが落ち着いたこの国は、ますます存在感が増している。我が国としても重要視している相手なのだとわかる。


颯爽と現れた御方は濃い青い袍を纏っていた。

臣下としては最高位になったからだろう。

年若いが侮れないという雰囲気、人の上に立つ者の貫禄が備わっている。


「アレクさん、お久しぶりデス」


やはりこの人は王宮では目立つと思う。

それをもう隠す必要がないのだと思い、少し安心している自分がいる。


「お目にかかれて光栄です。宰相閣下」


私は礼をとる。


「なんだか堅苦しいデスネ。

以前のように呼んで下さって結構デスヨ」


かつて『ユエ執務官』と呼ばせて頂いていたこの御方は、昭国の内政と外交の長になった。


「ふふ……さすがにそうは参りません」


冗談を言う様子が少し可笑しくて、私も敢えて軽い調子で返す。


庭園にあるガゼボで、私はユエ宰相閣下と向かい合い近況報告をする。

私が後宮に入る前までは手紙でやり取りをしていたので、大概のことはお互い知っている情報だった。

それを元に今後の展望を語り合う。

やはり直接会って話す方が、情報量が多いと感じる。


「ところでアレクさん、そろそろ我が国にいらっしゃいまセンカ?貴方の興味を引くものがたくさんありマスヨ。貴方は自分で直接見て判断するタイプの人でショウ?」


「ありがたいお言葉ですが、私は官吏を辞した身ですので」


「最近まで侍女をなさっていたのデシタネ?

あの方は面白がっておられまシタ」


「不本意ですが、ご期待に添えたようなら何よりです。ヤン殿下はお元気ですか?」


「ええ。

ただ殿下にとって、我が国は狭いのかもしれマセン。いつもつまらなそうなお顔をなさいますので、アレクさんに来て頂ければそれも解決シマス」


「ヤン殿下が大器でいらっしゃるのは、既に分かっていらしたのではありませんか?

ユエ宰相閣下ともあろう方が、随分と弱気でいらっしゃる」


「弱気……そうかもしれマセン」


ユエ宰相閣下の、このように自信のない物言いを聞いたのは初めてだった。

いくら有能とはいえ、20代で大国の宰相を務めるのは異例のこと。さらに本来の姿に戻ったヤン殿下を支えるのだから、この方が感じるプレッシャーは計り知れない。

同じく忠臣であるシャオタイ護衛長改め、シャオタイ総帥がいるから大丈夫だと思っていたのだが。


「……宰相閣下、宜しければ私の友人を紹介させて頂けませんか?閣下のお力になれるかもしれません」


「アレクさんのご友人デスカ?

それはそれで興味がありマスガ……」


私は席を立って、庭園の隅に控えていた方の手を取る。

少し緊張気味のその方は一息吐いて、私の求めに応じた。


「宰相閣下、ご紹介致します。

私の友人のフェンでございます」


しばらくして、宰相閣下のポーカーフェイスが完全に崩れる。


「あ、姉上……?」


フェンはユエ宰相閣下の唯一の異母姉に当たる。


「久しいな、ユエリャン」


やはりフェンは、ユエ宰相閣下を本名で呼べる数少ない人だったのだと確信する。


「アレクさんの友人トハ……?」


「実はお嬢様の侍女をしていたことがあってな」


フェンが照れ臭そうに言う。


「アレクさんがお嬢様⁈姉上が侍女⁈」


このように戸惑う宰相閣下を見られるとは思わなかった。


「フェン、宰相閣下には少し説明が必要なようです。お願いできますか?」



✳︎



私は一旦席を外し、庭園の隅に控えていた。

ユエ宰相閣下とフェンの話が終わったタイミングで場に戻り、3人で歓談する。


するとユリウス様が現れた。

ここに来たと言うことは、王太子殿下と何かしらのやり取りをしたのだろう。


「おやおや、これはユリウス・クローディア公爵子息。ご機嫌麗シュウ」


「こちらこそ、お目にかかれて光栄です、ユエ宰相閣下。私の婚約者と面会を希望されたそうで」


ユリウス様とユエ宰相閣下は握手を交わす。

あれ、この2人面識があったのかな?


「まだ逃げられていなかったのデスカ?

アレクさんが自由になれば我が国に呼べると思いましたノニ」


「どうも宰相閣下の冗談を真に受ける輩もおりますので、軽口はほどほどになさった方が良いかと存じますが」


「冗談を真に受ける輩がいるとは残念デスナ。そのような国にいてはアレクさんも大変でショウ?いっそ我が国に留学なさってはいかがデスカ?」


「おかげ様で成婚を控えておりまして、しばらく国外に出るのは難しいと思います。そろそろ諦めて頂けませんか?」




2人で握手をしたまま、何を話しているのだろう?


私はフェンを気遣っていたので少し離れた場所にいた。

なぜか場の空気が冷たく感じられて、ユリウス様とユエ宰相閣下の方を見遣る。


隣ではフェンがクスクスと笑っている。

状況を飲み込めていないのは、私だけのようだ。


その後ユエ宰相閣下は帰国を伸ばして、しばらく我が国に滞在することになった。


ユリウス様は苦々しい顔をしていたが、ユエ宰相閣下とフェンが交流する時間が取れるのは喜ばしいと思う。

お付き合い頂いている方々、いつもありがとうございます。完結まであと3話、明日が最後の投稿になりそうです。

登場人物達のこれからを見届けて頂けると嬉しいです。最後までご一緒できれば幸いです。


評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、メッセージ頂いた方、毎回励みになります。

誤字報告も助かります(活動報告でお礼申し上げております)。

いつもありがとうございます^_^

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