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後宮36

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

「レイ!」 


「……ユリウス様」


彼の様子から、急いで駆けつけてくれたのがわかった。


「連れて行け」


ユリウス様の声で騎士達が入ってくる。

王都で私をつけていた男達と昭国人の男が連行された。


部屋にはユリウス様と私の2人きりになる。


「レイ、時間切れだ。

ビヴィ公爵家は王太子殿下が抑えられた」


その言葉を聞いて、私は残念な気持ちになった。


「そうですか……」


ビヴィ公爵家内部の動きは、間に合わなかったか……。

できれば公爵家の自浄作用で、関わっていた貴族を廃してほしかった。


王太子殿下が介入されれば、ビヴィ公爵家の処分は免れない。その内容次第で、ルイーゼ様と王弟殿下に影響が及ぶ。


私は、できればそれを避けたかった。




「レイの気持ちはわからなくもないが、不法行為は許されない」


「はい、わかっています」


ユリウス様は私の手を取り、巻かれた包帯を見る。


「それに、レイにこんなことをする輩を野放しにすることはできない」


ユリウス様の雰囲気が一気に険悪になる。

空気が急速に冷える。


「あ、あの、昭国の船乗り達は何も知らなかったので」


「そちらはコウとフェンが掌握している」


私はホッとする。

昭国の言葉が話せるフェンがいれば、悪いようにはされないだろう。


私は気持ちを切り替えて、微笑む。


「ユリウス様、助けて下さりありがとうございます」


「無事で良かった」


ユリウス様が私を抱き締める。

険悪な雰囲気が収まったのでホッとした。


「王弟妃宮の使用人が巻き込まれたのです。

そちらがどうなったか、ご存知ですか?」


「大事ないと聞いている」


「良かった」


「証拠を押さえて、船に乗り込むつもりだった。

遅くなって悪かった」


私は首を振る。

その前に動いたのは私の意思だった。

私は私の目的のために、船で彼の助けを待たなかった。


私の目的はユリウス様を危険に巻き込まないこと、

また王太子殿下が介入する前にこちらで場を収め、ビヴィ公爵家の地位をなるべく落とさないこと。

ルイーゼ様に影響が及ばないようにするために。



「私は大人しくお話していただけですから」


「……レイが先程の者達をどうするつもりだったのか、敢えて聞かないことにする」


「今回はきちんと守られていましたよ」


「まあ……そうだな」


「ふふ……私も成長しました」



しばらく抱きしめられたままだったが、急に身体が離される。なんだかユリウス様の視線がささる。


「ところで、その服装は何?」


あれ?

ユリウス様の顔がまた険悪になった。


「えっ?あぁ、着ていた服が濡れてしまって、商館の人からお借りしたのです」


これはチャイナドレスという名前のワンピースらしい。お姉様方が用意してくれた服の中で、なるべく露出の少ないものを選んだ。まあ足はスリットが入っている分、見えるけれど。


「それはたぶん……いや、とりあえずこれを着て」


ユリウス様が上着を貸して下さった。


「ありがとうございます」


「しかし、どうして服が濡れた?」


「えぇと……ここは海の側なので……」


私は淑女の仮面を被る。

もうやってしまったことを言うのはやめる。


「港で騒ぎがあったそうだな?

なんでも王宮の侍女らしき女性が、船から海に落ちたとか。

まさかレイではないよな?」


ユリウス様が貴族の笑顔で答える。


「……」


軽々に答えられないため、私は微笑んで耐える。


「騒ぎを起こして、自分を攫った者を呼び寄せようとした?それを現行犯で捕らえて、王太子殿下に介入させないようにしようとした?」


「……」


思考を読まれているかのようで、逃げ道がなくなってきた。


「全く無茶なことをする。

それに証拠さえあれば他国の船を止めることもできる。王太子殿下の権限があれば可能なことはレイも分かっていただろうに」


ユリウス様はため息を吐く。

諦めている時の顔をしていた。


「……ごめんなさい」


私は頭を下げて素直に謝る。

心配かけてしまったことを反省する。


ユリウス様が私を守ろうとする気持ちも理屈ではないので、私はこれからもなるべく心配させないように努めようと思う。





「とりあえず、今日は一緒に帰ろうか」


その言葉の抑揚を聞き、恐る恐る顔を上げると、ユリウス様が貴族の笑顔でこちらを見ていた。


過去の経験から、これはまずいやつ。


私はユリウス様から素早く離れようとする。


「いえ、王弟妃宮の方々も心配しているので、私はこれから後宮に戻ろうかと……」


私は淑女の仮面を被り直し、必死に抵抗を試みる。


ユリウス様は私の両肩を掴んだまま、離してくれない。


「『もう無茶はしない』のではなかったか?

何が無茶なことになるのか、きちんと話そうか」


ユリウス様が貴族の笑顔で言う。

顔が近い。

美しいという圧に押し潰されそうだ。


過去の経験から、これは逃げられないやつ……。


その後ユリウス様と公爵家別宅に直行した私は、話して諭された末にお仕置きされた。


どうして気付くとこのパターンなのか?

学習しない自分を叱咤する。


翌日はなぜか身体が重くて起き上がれず、王弟妃宮に戻るのは翌々日からとなった。


身体が重いのは海に飛び込んだせいなのか、そうではないせいなのか、もはやわからない。


動かない身体を引きずりながら、金輪際無茶なことはしないと、私は固く誓ったのだった。

お付き合い頂いている方々、いつもありがとうございます。

完結まであと9話、最後まで見届けて頂けると嬉しいです。


評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、メッセージ頂いた方、毎回励みになります。

誤字報告も助かります(活動報告でお礼申し上げております)。

いつもありがとうございます^_^

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― 新着の感想 ―
着衣水泳、しかも深い海、下手したら溺れるところ、反省させたいですよね、ユリウス。
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