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後宮24

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

「ルイーゼ様、痛ければ教えて下さいね。

くれぐれも無理はしないようにして下さい」


「分かったわ」


ルイーゼ様の身体の対処が始まった。


固まった筋肉をほぐすストレッチをして、その後筋力を付けるトレーニングをする。


ルイーゼ様のマッサージ指導を通して、固さのある部位が分かったきたので、ゆっくり伸ばして以前の身体の状態に少しずつ近付けてゆく。


侍医にも全面協力してもらっている。

ルイーゼ様の体調について情報共有し、ルイーゼ様の体質や特性について助言をもらいながら訓練を進める。念の為、膝の痛み止めも手配してある。


王弟妃宮の使用人全員とは情報共有している。侍従と侍女頭に報告を集めてもらうようにして、個人で気付いたことなどもなるべく共有する。


訓練のための部屋のレイアウトや必要な物の手配も分担する。年季の長短に関わらず、得意な分野や興味の度合いで担当を振り分ける。


担当の考えた素案に対して、他の人が意見を出して形にするのだが、最近はルイーゼ様の部屋で、皆で集まってワイワイと進めることが多くなった。

考えていることを皆で共有し、ルイーゼ様から意見を頂戴する。


本来あるべき王弟妃と使用人の距離感ではないことは承知している。


だから「今は1人でも多くの知見を合わせて対処する時で、ルイーゼ様の望みが叶ったら元の王弟妃宮に戻そう」と話した。


私1人の知見など高が知れている。

かたや王弟妃宮には才能を持った12人の使用人がいるのだ。これを利用しない手はない。


王弟妃宮の人は、私のような若輩者の意見も聞いてくれた。

それもひとえにルイーゼ様と一緒に挑戦するという気持ちを、共有できたことが大きい。





「なんだか宮の中が賑やかだね」


王弟殿下は連日お見えになる。


「殿下、騒がしい雰囲気がお嫌でしたら、元に戻しますが……」


ルイーゼ様は以前よりもご自分の意見を口に出すようになってきた。


「今は皆で一丸になる時だと承知している。

それにルイーゼが楽しそうなら良い。

今日はどんなことをしていたのだ?」


王弟殿下とルイーゼ様の距離は確実に縮まっている。

お2人で過ごされる部屋の居心地も良さそうだ。



✳︎



5連勤務の後の休みの日、私は初めて外出した。

後宮を出るのは1ヶ月半ぶりになる。


行き先は王都、まずは傭兵組合にジーク隊長を訪ねる。

ジーク隊長に事情を話して協力を頼むと、快諾してくれた。訓練の仕方や足の動かし方を学ぶ。


「嬢ちゃんも大変だな。なんかあればまた言えよ。ここにいないなら、港にいるから連絡を寄越せばいい」


「今は港でお仕事ですか?」


「ああ、第二王子の成婚の儀の祝いで各国の船が来るからな」


成婚の儀まで後数ヶ月あるが、荷は先に着くからこれから忙しくなるそうだ。


私はジーク隊長にお礼を言って、傭兵組合を後にする。


その次は商会に行き、ニコライさんを訪ねる。


ニコライさんは後宮の商会や商人の資格審査が適正に運用され始めたことを知っていた。

しかも既に資格審査を通過したと言う。


「あの時、お嬢様を伴って審査に行ったのは、間違いではなかったようです。我ながら先見の明がある」


めずらしく自画自賛するニコライさん。


「さて、成婚前のお嬢様が現在後宮住まいで、しかも私のところにいらしたのは、新しい商売のお話ですね?」


ニコライさんができる商人の顔になる。

師匠は話が早くて助かる。


「商売になるかは今後の反響次第です。

取り急ぎお願いしたいことがあります」


「他ならぬお嬢様の頼みですから伺いましょう。もちろん私への見返りを期待していいのですね?」


「実現すれば、大きな市場を開拓することができると考えています」


「私が何を言いたいのかは分かっているようですね。優秀な弟子を持てて私も嬉しいですよ」


ニコライさんがニコニコして言った。


✳︎


商会を出た後は、当面必要な物を王都の店で購入してまわる。


以前茶会で聞いた美味しいお菓子のお店にも寄って、王弟妃宮への手土産を購入した。


店を出てふと、視線を感じた。

この感覚は久しぶりだ。


後ろを振り返らずに、ショーウィンドウの並ぶ通りをゆっくり歩く。


私は手鏡を出して、自分の後ろのショーウィンドウを映す。私の後ろを歩く人達の姿がショーウィンドウを通して、手鏡に映る。


ゆっくり動かし、自分の後ろの人を確認する。


喋りながら歩く女性2人、

小さな子の手を引いて歩く親子、

貴族の女性とお付きの侍女……、

そして一定に離れた距離で、後ろを歩く男性2人。


平民の姿だが、たぶん貴族の家の使用人。

所作が整っているから、高位貴族の家かも。


私は手鏡をしまい、なるべく人の多い通りを進み人混みに紛れる。

彼等の死角に入った直後に横道に逸れて少し走る。

さらに道を逸れて身を隠す。



息を潜めて、周りの音を聞く。

こういう時、私の杞憂なら良いといつも思う。


走ってくる足音がする。2人。

足音が止まる。方向を確認しているのか?

足音が分かれる。二手に分かれた?

足音が遠くなる。


すぐに立ち上がり、足音と逆方向に進路を取る。

最短ルートを算出して馬車が拾える通りへ向かう。


足早に細い路地を2つ曲がる。

もう少しで通りに出られるはず。


後ろで足音が聞こえて、一瞬振り返る。

大丈夫、まだ姿は見えない。


そこの路地を曲がって、真っ直ぐ進めば……。


急に前方から人の気配がした。

警戒が跳ね上がる。


どうする?引き返す?

いや、

このまま進んで馬車通りに出る方が、なんとかできる確率が高い。


私は気持ちを落ち着けて、路地を曲がる。


そうしたら、身体が止まってしまった。

だって予想していなかったから。


長身の体躯、銀色の髪、整った顔

見間違えるはずないその姿、


「ユリウス様、どうして……?」


アイスブルーの瞳は私を捉えている。

私がここに来るのを分かっていたように。

ここまでお付き合い頂きました方々、いつもありがとうございます。

完結に向けて、見届けて頂けると嬉しいです。


評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。

ありがとうございます^_^

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