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その時は本気で逃げることにします〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様、続〜  作者: みのすけ


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後宮23

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

「ルイーゼ様は王弟妃宮をどのようになさりたいですか?」


公爵閣下に王弟妃宮の改修の許可を頂いてから、私はルイーゼ様と宮の中を散歩する。


「どのように、というのは?」


車椅子上のルイーゼ様は、戸惑った様な声を出した。


「例えば、ルイーゼ様のお部屋を庭園に近い場所のお部屋に変えても良いのです。また王弟殿下と一緒にお過ごしになるお部屋を、新たに定めても良いのです。

折角宮を改修するのですから、ルイーゼ様のなさりたいことを取り入れられるのはいかがでしょうか?」


私はルイーゼ様が具体的にイメージできるように誘導する。


「私が……決めて良いのかしら……?」


「もちろんでございます。

ここは王弟妃殿下の宮、ルイーゼ様が主人です。

それにルイーゼ様が心安らかにお過ごしになられるのは、身体にも良い影響を与えます」


「……私にどうしたいかなんて、そのように聞いてくるのは貴方くらいだわ。私はいつも周りに決めてもらっていたから」


「そうでしょうか?野原を駆け回っていらした頃には、ご自分で進路を決められていたのではないですか?」


「うふふ……それも含めるのなら、そうね」


「この宮は、ルイーゼ様にとっての野原のようなものです。お好きになさって宜しいのでは?」


「そうなれれば、私もまた駆け回れるようになれるかしら?でも色々迷ってしまうかもしれないわ」


「もし何か迷われているのでしたら、王弟殿下にご相談されてみてはいかがでしょう?

王弟殿下のお考えを知ることができるかもしれませんよ?」


「うふふ……それも素敵ね。最近はなんだか楽しいわ」


ルイーゼ様が笑って下さり、私はホッとする。

ルイーゼ様の状態を見定めて、ルイーゼ様の重荷にならないように配慮しながら物事を進める。


ルイーゼ様は穏やかなだけで、主体性がないわけではない。自信を取り戻すこともまた身体のためになる。


同時に王弟殿下に相談する機会を増やすことで、さらにお2人の距離が縮まると良いな。



✳︎



数日後、王弟妃宮の改修が始まった。


ルイーゼ様は王弟殿下と相談され、2人でお過ごしになる部屋を新たに定められた。

内装などは両殿下の意見が反映されており、仕上がりが楽しみである。


宮は基本的に絨毯張りだったが、今回の改修でルイーゼ様の生活圏内は全て床張りにし、滑らないように加工する。

木材の床だが硬すぎると転倒した時に危ないので、魔術で加工した特注品だ。


応接室等、外部の人を招く部屋は毛足の短い絨毯を敷き、格式を保つように調度品を整える。



「セレス嬢、本当にこれが必要なのか?」



私は改修の様子を見守る。魔術で加工した床の仕上がりを確認するためだ。


隣ではビヴィ公爵子息が半ば呆れた顔で立っている。この特注の床張りの見積書を見ているからかもしれない。


「必要だから頼んだのです。

ビヴィ公爵閣下には既に許可を頂いております」


「これで状況が改善されるものなのか?」


このような試みは王宮史上初となるそうなので、特注床張りのお値段も史上初の高値だったようだ。


「わかりません。

私は医者ではなく、素人なので」


「わからないって、ここまでしてそんなことが通るとでも思っているのか?」


「やってみなければ効果がわからないと申し上げているだけですよ。

そもそも今までやってきた事で効果がないから、私のような素人が呼ばれたのです。それで今までと同じような事をやっても、効果は見込めません。それともビヴィ公爵子息には何か良案が?」


「それは……」


「何か思い付きましたらぜひ教えて下さい。

貴方や私のように外部の者の視点が必要なのです。貴方の能力があれば、私の要望を叶えた上で、更なる良案をご提案頂けると期待しております」


「君、年上に対してその物言いは改めた方がいいぞ」


ビヴィ公爵子息は常識人だし意外と世話焼きなのだと思う。こういう小言も、嫌味ではなく私のために言ってくれていることがわかる。


「私がこんな失礼な言い方をするのは、ビヴィ公爵子息だけです」


それなのに、このような返しをしてしまうのは、特使の件の時のやり取りがあったせいだろうか?


「それはそうだろう、私にこんな物言いをする令嬢は君くらいだ。

こんなズケズケと物を言う様子が知れれば、クローディア公爵子息に逃げられるぞ」


ビヴィ公爵子息はため息を吐きながら言った。


「ここにいる限り、知られませんよ」


「クローディア家には既に経緯を説明してある。当初の約束通り、君は公爵家から通えばいい。無理に後宮に留まることはない」


彼は気まずそうに言う。少なからず責任を感じているのだろう。真面目な性格なのかもしれない。


「お気遣いありがとうございます。

ところで、エダ様に不当な指示を出していた者の目的は明らかになりましたか?」


「いや、それがまだ……」


「それが明らかになるまでは、今まで通りに過ごそうと思います」


「なぜだ?帰りたかったのだろう?」


「少々、気になることがあるのです。

とりあえず次の休みは外出致しますので、私のことはお気になさらず。

ところで、後宮に出入りする商会や商人の資格審査の対応をありがとうございます。

後宮側で受け取った賄賂は回収できましたか?」


「まあ、8割程度だがな」


「僭越ながら、その回収分を今回の改修費用に充てられたらいかがですか?床面の特殊加工賃分の支払いくらいになるのではないでしょうか?」


「確かにそうすれば、王弟妃宮の改修も通常の範囲内ということで目立たずに済むな」


「そもそも今回は王弟妃宮エダ様がきっかけで発覚し、ビヴィ公爵子息が迅速に動いて下さったおかげで後宮の不正が取り締まれたのです。それらしい理由を付けて処理すれば不自然に思われないのでは?」


「できなくもないが……まさか君はこれを狙って私を動かしたわけではないだろうな?」


「まさか、私は不当に後宮に留め置かれていた身ですよ?

今回は結果として、このような形に落ち着いただけかと存じます」


「……それが君のやり口なのか?」


ビヴィ公爵子息が眉を顰めながら、こちらを睨む。


「……何のことでしょう?」


私は僅かに首を傾げて淑女の仮面で微笑む。


「……」


ビヴィ公爵子息は盛大にため息を吐いて、がっくりした。


ユリウス様が諦める時と少し似ているなと思った。

ここまでお付き合い頂きました方々、いつもありがとうございます。

完結に向けて、見届けて頂けると嬉しいです。


評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。

ありがとうございます^_^

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