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後宮19

お立ち寄り頂きありがとうございます。

こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。

設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。

「今日も王弟殿下がお見えになっているの⁈」


「ここのところ、連日後宮にお渡りになっているわよ」


「ルイーゼ様、少し体調が良さそう」


「嬉しそうで良かったね、ルイーゼ様」


私は年季の浅い侍女達と雑用に励んでいた。


ベテラン侍女達に比べて年齢が若い彼女達は、遠目から見えた王弟殿下とルイーゼ様の姿を見てはしゃいでいた。


私も彼女達と一緒に、両殿下のお姿を拝見する。

お2人は庭園で花を愛でられているようだ。


仲良さそうに寄り添われる姿に、少し安心する。

おそらく以前よりもお2人の距離が縮まっている。

ルイーゼ様は照れているようだが、嬉しそうだ。



浄化の儀式から数日、ルイーゼ様は少しずつ明るさを取り戻されている。


ルイーゼ様の心が癒されるのには時間が必要だが、王弟殿下と過ごされる中で、確実に良い方向に影響が出ていると思う。


浄化の儀式は、私がそれらしく振る舞っただけなので儀式として成立していない。


昭国の本で見たものを参考に、身の回りにあるもので代用して、それらしい格好をする。

昭国では、鈴の音が場を神聖に清める効果があると考えられている。

そこで武道の足捌きを参考に、鈴を鳴らして場を浄化するというパフォーマンスをした。


予め窓を開けておき、私が鈴を鳴らしたら窓の外に控えている侍女達が、森の緑を思わせる香りを漂わせる。

これはルイーゼ様も好むウッド系の香油で、心を落ち着かせる効果があると言われている。


一連のことは王族を欺す行為だと分かっている。

全体像は私しか知らない。何かあった時のために、関わった使用人に類が及ばないようにした。


こんな危険を冒すリスクは承知しているが、私が出来うる手段の中で最も効力の高いものを選択した。

それに効果さえ現れれば、あのパフォーマンスも儀式と見做されるだろう。


私は、儀式の本質とは関わる者への心の持ちようを示すものなんだと思う。


セレス家の儀式が関わる者への安寧を祈る様に、

今回の浄化の儀式は、ルイーゼ様を縛るものから解き放つための祈り。


だからルイーゼ様とその周りに示す必要があった。

誰にとっても分かりやすい形で。


実際に効果は現れている。


今のルイーゼ様の変化は、王弟殿下に献身によるもの。王弟殿下ならば、ルイーゼ様に確実に影響を与えられると予想していた。


そのため王弟殿下を動かす必要があった。


だから儀式の前に王弟殿下を秘密裏に呼び出し、王弟殿下のお気持ちを確認する。


王弟殿下はルイーゼ様の身を、心から案じられていた。そもそも臣下であるクローディア公爵に直接頼むくらいなのだから、情の厚い御方だということは分かっていた。


私はルイーゼ様の身に起こったことを説明し、王弟殿下にも協力を仰いだ。


「私は最初からルイーゼを妃に迎えるつもりであった」


「ならば殿下のお気持ちをルイーゼ様に直接お伝えすることが、ルイーゼ様の最大の薬となりましょう」


侍女達によると、王弟殿下はルイーゼ様を大切にして下さるが、それは気遣いの範囲で、今まで踏み込んだ態度はなかったそうだ。


おそらくルイーゼ様に対する遠慮のようなものがあって、それがもとで距離を詰められずにいたのかと推察する。


なぜなら王弟殿下は難しい立場の御方だからだ。

国王陛下を支える一方で、目立っても目立たなくてもいけないバランスを保ちながら王族としての務めをこなす。


その御心を察することは叶わないが、王弟殿下がルイーゼ様を助けたいと思うのなら、自らの行動で示さなければならない。


私は王弟殿下から助言を求められたので、僭越ながら申し上げておく。


「どうか殿下の御心のままに、ルイーゼ様に接して頂きたく存じます。できれば立場を越えて、殿下御自身のお気持ちをルイーゼ様にお伝えすることが肝要かと存じます」


その結果なのか、王弟殿下は王弟妃宮になるべく足を運んで頂いている。王弟殿下とルイーゼ様の距離が縮まれば、さらに効果が期待できるかもしれない。


なによりルイーゼ様が嬉しそうだから第一段階はクリアした。


そして次の手を打つ。



✳︎



「お目にかかれて光栄です、ビヴィ公爵子息」


「セレス嬢、父上から話は聞いたが一体どういうつもりか?」


「どういうつもりとは?」


「君には分かっているのだろう?

特使の件で、私が君にしたことを」


「はい、それを見込んで貴方のことをビヴィ公爵閣下にお願い致しました」


「理解できないな。

しかも君は『当家に協力はできない』と言ったと聞いていたが」


「その通りです。

私はルイーゼ様のために動いているので、貴家に協力するのではありません。

それに、ビヴィ公爵子息が私に協力するのです」


「詭弁だな」


「それを仰るなら貴方も同じでは?

政務を外れて、こちらにいらして頂くことを承知して下さったのは、ひとえにルイーゼ様のためですね?」


「君の、その見透かしたような物言いはどうかと思うぞ。よく婚約者に逃げられないものだ」


「ふふ……今私はここから出られないので、好き勝手しても彼には知られませんから」


「出られない?どういうことだ?」


「すぐにわかります。

貴方には早速やって頂きたいことがあります」

ここまでお付き合い頂きました方々、いつもありがとうございます。

完結に向けて、見届けて頂けると嬉しいです。


評価頂いた方々、ブックマーク頂いた方々、リアクション頂いた方々、毎回励みになります。

ありがとうございます^_^

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