特使7 勧誘
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
「アレクさん、ヤン殿下の昼食の件ですが……」
着任してから4日、殿下の取り巻きメンバーとはそこそこ意思の疎通が取れてきた。
私の名は長いので、下級官吏の通称『アレク』を使用してもらっている。
最初は容姿で気に入られただけの小娘扱いだったが、少しずつ環境を改善してゆくことで信用してもらえているらしい。
そもそも王宮側と連携できていないから、今までは取り巻き達が直接動いていたのだ。掃除、洗濯、食事など、王宮の侍女や侍従と協力して身の回りを整えれば、滞在時の快適さが向上する。
ヤン殿下は、私が同行するなら王宮の使用人を部屋に入れても構わないので、なんとか日々の業務は回るようになっていた。
その日の昼食後、私はユエ執務官と今後の予定について確認する。
王宮側としては、親睦のために王太子殿下と第二王子殿下に会う機会をできるだけ作る事、及び9日後に迫った王家主催の夜会に出席することを求めている。
これらをセッティングするのも、特使付き官吏の役目だ。
「ユエ執務官、この時点でご希望はありますか?」
「アレクさんが来てくれて、ヤン殿下も毎日楽しそうデス。感謝しておりマス」
「ユエ執務官をはじめ、皆様のご協力のおかげです」
「王宮での待遇も改善され、私達としては大変満足しておりマス。アレクさんさえ宜しければ、我が国から個人的に便宜を図る用意がありマス。これからも協力して頂けまセンカ?」
「ユエ執務官、どう言う意味でしょうか?」
「ふ……アレクさん、特使の役目は『昭国の文化を広めること』デス。何か良い案はありマスカ?」
「でしたら、まずは社交を通して昭国の文化を知ってもらうことから始められるとよろしいかと思います。例えば茶会はいかがでしょうか?昼食会よりもヤン殿下の御負担が少ないかと思います」
「それで進めて下サイ。日程は任せマス」
「ありがとうございます。早速調整します」
「アレクさんはお若いのに、しっかりしていらっしゃル。我が国にいらっしゃいまセンカ?」
「ありがとうございます。機会があれば伺いたいと存じます」
「いえ、ヤン殿下の妃として昭国にいらしてほしいのデス」
私はユエ執務官の意図を探る。
ニコニコした笑顔だが細い目は真剣そうだ。どう答えるべきか?
「恐れ多いことですが、私は一介の下級官吏に過ぎません。ヤン殿下には相応しくないと存じます」
「ご謙遜ヲ。
これ以上相応しい相手はいないと思いマス。宝石アレキサンドライトの石言葉は『高貴』、まさに貴方のお名前の通りダ」
「良くご存知ですね。しかし名前だけでは……」
「貴族令嬢でしたら資格はあると思いマスヨ。貴方ならこの国の代表として、我が国に嫁げる立場ダ」
「だとしても、一国の妃になるような資質ではありません」
「ふ……勧誘する方法を間違えた様ダ。ですが考えておいて頂けまセンカ?
まだ時間はありマスカラ」
「ありがたいお申し出ですが、気持ちは変わらないと思います。私は我が国の官吏としてヤン殿下をお支えしたいと存じます」
1人視点なので情報が偏っております。全体がわかるまでは読み進めて頂けると嬉しいです。
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