後宮7
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
その後、私に魔力がなく、魔法が使えないことが証明された。
王宮魔術師が数人がかりで判定した結果に、ビヴィ公爵閣下は異を唱えなかった。
ライオール殿下に事前に報告していたユリウス様の言は正しいとされ、王宮魔術師と共に判定に立ち会った王太子殿下もこれを支持した。
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「ユリウス様、お帰りなさいませ。
お呼びですか?」
「遅くにすまない。
後宮に行く準備はできたのか?」
「はい、こちらから通うため、用意するものも少ないのです」
「そうか」
「ユリウス様こそ成婚の儀までお忙しいのに、公爵邸に帰ってきて大丈夫なのですか?」
「レイは明日から後宮勤めになるだろう?
緊張しているかと思って」
「ふふ、お気遣いありがとうございます」
私はユリウス様に抱きつく。
忙しいのにもかかわらず帰ってきてくれたことが、とても嬉しかった。
「それに、これを付けてほしくて」
ユリウス様が自分の左耳を指差す。
クローディア前公爵様の作った術返しの魔導具だ。
「!」
私は咄嗟にユリウス様から離れようとする。
それに気付いた彼に捕まり、引き戻されてしまった。
それでも腕をすり抜けようとしたら、ユリウス様に口を塞がれてしまった。
こうされると私は強制的に大人しくなってしまう。
悔しいが、彼は私の扱いを良く分かっていると思う。
力が抜けて動けない私は、せめてもの抵抗で抗議の視線を送る。
「何度も逃げようとするからだろう?」
ユリウス様に面白そうに言われてしまって、私は結局観念する。
私が逃げられないようにユリウス様に囲われてしまったが、側にいられるのは嬉しいので良しとした。
「ユリウスには申し訳ないのですが、今回魔導具はつけずに行こうと思います」
私が名前呼びに切り替えたので、ユリウス様の表情が少し変わる。
満足そうに笑った後、真剣な顔になった。
「レイの言いたいことはわかる。
後宮は魔導具の持ち込みが厳しいからだろう?」
「お分かりでしたら、どうして?」
「それでも魔導具をつけてほしいと言ったら?」
アイスブルーの瞳が今日も綺麗だと思う。
私は正直に話すことにする。
「ユリウスが言うなら、つけます」
「素直だな」
「心配をかけたいわけではないから。
でも、私はできれば後宮に大事な物は持って行きたくないのです。あの場所を管理しているのは彼の家でしょう?」
「ああ」
「私は昔、彼の家の人に大事なものを奪われたことがあって、それを未だに許せないのです。だから彼の家の管理する場所に、大事なものを持って行きたくないのです」
「……」
「だから私の大事な物は全てここに置いてゆきます。ここに帰ってきたいので」
「……わかった」
私が正直に理由を言えば、ユリウス様が心を痛めることは分かっていた。
「ありがとうございます。
痛いから魔導具をつけたくないわけではないことをわかって頂けました?」
私はわざと戯けて明るく言う。
「このタイミングでそれを言うと、やはりつけたくなる」
ユリウス様が少しムッとしたので、気を逸らす作戦は成功したようだ。
「この魔導具はつけた人にしか外せないのでしょう?
彼の家の人にそう言っても、絶対外させようとしますよ。私はユリウス以外に触れられるのは嫌です」
ユリウス様は少し驚いた顔をした。
予想外の言葉だったようだ。
「はあー、レイには敵わないな」
「ふふ」
良かった、彼に笑ってもらえた。
私はまた彼に抱き付く。
私の作戦は成功したようだ。
彼には、私のことで心を痛めたままにしてほしくない。
いつも彼に心配ばかりかける私が、
いつも彼に笑っていてほしいと思うのは
我儘なことだろうか?
「後宮は王宮内で一番守られた場所と聞いております。
どうか心配しないで下さい。
成婚の儀が終わるまで、お互い仕事を頑張りましょう」
「こちらの成婚も控えているし、それを楽しみに頑張るとするか。でもその前にレイを補充させて」
「なら私もユリウスを補充しておきます」
お互いが手を伸ばす。
私は目を閉じる。
唇が触れ合う。
今回の行き先について、
一つだけ良かったことがあるとしたら
私の一番大事なものを持っていけないことだろう。
ユリウス様は男性だから後宮には入れない。
ライオール殿下の成婚の儀まで約半年、ユリウス様には職務に注力してほしい。
クローディア家は後宮に伝手がないと聞いているので、中の様子も詳細にはわからないだろう。
何かあっても、心配させないようにすれば良いのだ。
もちろん、何もないのが一番良いのだが。
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