後宮3
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こちらは「婚約破棄?その言葉ずっと待ってました!〜婚約破棄された令嬢と氷の公爵様〜」の続編的な位置付けです。もちろんそのままでもお楽しみ頂けます。
設定や人物像については、前作をご覧頂けるとより楽しめるかと思います。
俺は珍しく父上から呼び出された。
今日の業務が終わったら執務室に来る様にとのことだった。
「ユリウス来たか。こちらに座れ」
俺は父から手紙を手渡される。
差出人はセレス伯爵からだった。
セレス伯爵は現在領地にいるはず。
中を確認して目を疑った。
伯爵によると「王宮からレイに侍女として出仕する旨の通知が来たとのこと」
ライオール殿下からは何も聞いていない。
これはどういうことだ?
執務室の部屋がノックされ扉が開けられる。
入ってきたのは王弟殿下だった。
嫌な予感がする。
「公爵、急にすまないな」
王弟殿下が執務室に来るなんて、普通ではない。
通常はこちらが出向く立場だ。
「わざわざお越し頂き恐縮です」
父が頭を下げる。
「ユリウス、久しいな。夜会以来か?」
「お目にかかれて光栄です、王弟殿下」
俺は叙勲祝賀会の夜を思い出しながら挨拶した。
「楽にして良い。今日は頼みがあって来た。
セレス伯爵令嬢を後宮に侍女として出仕させてほしい」
セレス伯爵に通知された内容は、王弟殿下の思し召しだったのか。
王弟殿下は「ここ数年、王弟妃殿下の具合が良くないため、レイを侍女として側に置きたい」と話した。
「殿下、発言をお許し下さい。
なぜ彼女なのですか?」
「ユリウス、彼女は古代魔法が使えるのだろう?」
「確かに彼女の家には古代魔法を使う儀式があります。
しかし過日魔法士から指導を受けた時の彼女の記憶はなく、今は魔法が使えるとはいえないかと」
過日の記憶退行の件はライオール殿下のおかげで不問にされ、レイ本人も「記憶がないから」と魔法が使えることを否定した。
「私はそれでも一縷の望みを賭けたいのだ」
妃殿下の容態は日に日に悪くなっているらしい。
医師、薬師、魔術師、考えられる専門家には全て診せたのだが、原因がわからないという。
王弟殿下は妃殿下思いなので、王弟殿下の気持ちはよく分かる。
俺は拳を握りしめる。
王弟殿下からの命を拒める程の理由がない。
例え理由があっても、成婚していない今の立場では拒めない。
そもそも王弟殿下が臣下の部屋にわざわざ足を運んで、頼むこと自体が異例なのだ。
しかもセレス伯爵家だけでなく、婚家となる我が家にまで話を通すなんて。
それが王弟殿下なりの、最大限の誠意なのだということがわかる。わかるのだが……。
「成婚に向けて準備をしていることは知っている。
返事は、セレス嬢と相談してからでよい」
王弟殿下はあくまで彼女と俺を尊重してくれた。
すると執務室の扉が叩かれた。
入ってきたのはビヴィ公爵子息だった。
「お話し中、申し訳ごさいません。
王弟殿下に急ぎお伝えしたい件がございまして……」
「良い、ここで申せ」
「セレス伯爵令嬢が後宮に出仕する旨を承知したとのことです。ですが、その後本人が姿を消してしまい、現在消息がわからず……」
俺は驚きのあまり立ち尽くした。
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