9.人類と接触
ー 空中都市 中央城の内部 ー
空中都市は完成して、人類は文明を築き始めた。ツバイは人類最初の文明、メソポタミア文明に接触するにあたってのミーティングをリフコと行っていた。
「これから会う王様は、実力があって現実主義な方です。信仰は形だけで堅実的に国の運営してます。」
リフコはナノマシンで調べた国の実態や生活、王様の個人情報を報告する。
「現実主義の王様が神様にあったらどんな反応するか楽しみだ。食事に誘われても断っておいてくれ。」
古代の料理は発展してないから、まずいと決めつけるツバイ。
「かしこまりました。では空中都市でメソポタミア文明に向かいます。」
~ 王様視点 ~
玉座は、まだ「王の椅子」と呼ぶには簡素すぎた。
石を積み上げ、木を削って作っただけの台座。その上に腰掛ける彼――人類最初の王は、国の代表者たちを前に会議を進めていた。
(争いは減った。だが、完全ではない)
食料の配分、土地の境界、武器の管理。すべてが「人が人を治める」ための、初めての試みだった。彼はそれを理解していた。王とは、神でも英雄でもない。ただ、誰よりも多くの責任を背負わされた存在に過ぎない。
その瞬間に空気が、変質した。言葉では説明できない圧迫感が、会議場を満たす。
火が揺れ、影が歪み、天井の石が軋んだ。
「……?」
誰かが息を呑む音。そして一人の兵士が会議室に入ってくる。
「大変です。空に浮かんだ島がこちらに向かってきます。」
誰もが怪しむ表情をしながら、外に向かう。
雲から現れた巨大な島は、空中に浮かびながら城に向かってくるのが見えた。
天使の羽が生えた絶世の美女が空中に浮かぶ島の周りを守るかようにたくさん飛んでいる。
――神。
――あるいは、天使。
その言葉が、王の頭に浮かんだ瞬間、理解と恐怖が同時に訪れた。
(ああ……本当に、いるのか)
伝承や祈りの中にしか存在しなかったもの。人々が「助け」を求め、「裁き」を恐れ、「希望」を押し付けてきた存在。だが、王の胸に湧いた感情は、畏怖だけではなかった。
(……ならば、俺は何だ?)
神が現れた瞬間、彼は直感した。
自分が築き上げてきた「王」という立場が、一瞬で無意味になり得ることを。
もしこの存在が命じれば、法律は不要。軍は無力。人の合意など、取るに足らない。
(俺は、人を導くために王になった。だが……神の前で、導く資格などあるのか?)
喉が渇き、心臓が早鐘を打つ。逃げたいという本能が、全身を支配する。
それでも――彼は、立ち上がった。
(違う……)
膝を折り、祈ることは簡単だ。神に委ねれば、責任から解放される。
失敗も、犠牲も、「神の意志」で片付けられる。
(それを選んだ瞬間、俺は“王”ではなくなる)
人が人を治める時代を作ると決めたのは、自分だ。恐怖に震える民の代わりに、矢面に立つと誓ったのも、自分だ。
王は、震える足を抑え、空中都市をまっすぐに見据えた。
「……ここは、人の国だ」
声はかすれていた。だが、逃げなかった。
「神であろうと、天使であろうと、この国の未来を決めるのは、人でありたい」
その瞬間、王は理解していた。もし裁かれるなら、ここだ。もし滅ぼされるなら、それでもいい。
(恐れている……だが、それでも立つ。それが、最初の王としての役目だ)
この瞬間、人類は神話の中で、初めて神と対等に向き合おうとしていた、ということだった。




