7.魔法
ー 宇宙要塞ハコシロ 闘技場 ー
太陽が砕けた雲間から姿を現した瞬間、二本の剣が火花を散らした。
「――遅い」
先に仕掛けたのは、ツバイ。人の域を超えた反射神経で踏み込み、常識では見えないはずの速度で斬撃を放つ。大地が割れ、衝撃波が駆け抜ける。だが、その剣は空を斬る。
「まだ、いけますよね?」
鈴の鳴るような声と共に、ハンティが背後に現れる。瞬間移動――いや、空間そのものを踏み越えたかのような挙動。彼女の剣は細身で白く、月光を凝縮したかのように輝いていた。
剣と剣が噛み合った衝撃で、周囲の岩山が粉砕される。
「ここまで、腕を上げるなんて、主様はすばらしいです。」
「訓練に付き合ってくれたおかげだ。」
ツバイの超人的な力が解放され、彼の剣は一振りで空間を切断した。断裂した青空の向こうから、轟音と共に虚無が溢れ出す。しかし、ハンティは微笑んだ。
「本当に強くなりました。」
ハンティが剣を両手で持ち上段の構えをして迎え撃つ。一つが都市を消し飛ばす威力。それを、ツバイは正面から受け止めた。
マナが発生している青い宝石を魔石と名付け、発見してから200万年ぐらいが経ち、第四紀の時代になった。この頃に人類は道具を使い始めた。できる事が増えて、これからもっと人口が増えるだろう。
ツバイは戦闘をした事がなく、剣の持ち方すらわからなかったので、ハンティに指導してもらった。
始めは、ハンティに才能はあまりないと言われ、落ち込んだが200万年間ずっと努力を続けた。
「すばらしいです主様。実力は私とほとんど同じになりました。」
「ありがとうハンティ。だが、まだ限界ではないから努力するさ。」
「私もまだまだ精進いたします。」
ツバイはハンティの主君だから、弱いままではプライドが傷づくから死ぬほど努力してきた。
「マナで身体強化した戦闘はすざましいな。」
ツバイは、周囲を見回すように首を動かした。
所々、強い衝撃を受けたように石畳が割れたり剥げたり、あるいは闘技場の大きな壁が縦に綺麗に切り分けられているが目につく。
マナの研究が進み、様々なことを開発した。マナを宿して、精密な操作を行えば身体強化が行える事がわかった。身体強化はマナの量で強化具合が変わるから、マナ量によっては物理限界を超える。
「ツバイ様。エンリから至急報告があるそうです。」
ハルの声が体内ナノマシンを通してツバイに届く。
「わかった。エンリから呼び出しがあったから、ハンティは闘技場の片づけを頼む。」
「わかりました主様。」
ー 宇宙要塞ハコシロ エンリ研究室 ー
「わざわざすみません~。ご主人様~。研究室を離れるわけにはいかなかったので~。」
「かまわない。それでどうした?」
「無限マナになれる方法を見つけました~。」
エンリは寝不足のクマがある顔で報告してくる。人体にはマナを取り込める量の限界が存在しており、限界を超えると激しい拒絶反応があった。エンリは限界を超える方法を探すのがとても苦労していた。
「方法はマナを限界まで取り込み、マナを精密操作が出来れば、またマナを取り込めることが出来ます~。これを繰り返して、最後は魔石を取り込みます~。」
マナの精密操作はとても難しい技術だった。ツバイやNPC幹部は身体強化で使っていた精密操作が出来るのに、10万年ぐらいの訓練をしていた。
「あの訓練をまたしないといけないのか。まあ、慣れがあるから短縮できるだろう。」
ツバイは憔悴した顔で愚痴をこぼす。
「元気出してください~。魔石を取り込むと、マナに概念を与えることが出来ることがわかりましたからやる気だしてください~。」
「概念を与えたマナは私達が作った魔術を超越した力になります~」
「どんな概念でもマナに与えることが出来るのか?」
それが出来れば、まさに神様の力を手に入れる事になる。
「いえ~出来ないです。1つの概念しか扱えないですし、どんな概念になるかは個人によって違います~。例えば、分解の概念があると~、分解できない物が存在しない~。といった感じです~。」
ツバイ達が作りだした魔術はプログラムで魔術を使えるようにしたから、この力は魔術とは全く別の力の扱いのほうがわかりやすいとツバイは考える。
「これからは、概念を宿したマナを魔法と呼ぶ。魔法は全員使えるようにするぞ。エンリは研究があるだだろうが、訓練励んでくれ。」
「大丈夫ですよ~。どんな魔法が使えるのか楽しみです~」




