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人類誕生時代に来たので、人類の支配者になる  作者: 浅霧 瀬智
第二章

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51.魔獣の制作 (イラストなし)

ー 宇宙要塞ハコシロ エンリ研究所 ー


魔獣というものを作り出したのは、純粋に「必要だった」からだ。試練として機能させるため。理屈は通っているし、結果も悪くなかった。


「……ペット、か」


神がそんなものを欲しがるとは、我ながら滑稽だ。だが、魔獣を創ったあの日から、心のどこかで引っかかっていた。命を創り、支配し、裁く。それだけでは足りない。


俺は歩みを止め、進路を変えた。


「……ペットが欲しいな」


歩きながら、俺はそんなことを考えていた。作り出した魔獣は、兵器であり、課題であり、世界の歯車だ。撫でる対象ではない。


もっと神らしく、堂々としていて、強くて、それでいて「私のものだ」と言える存在。そう考えると、自然と行き先は決まっていた。宇宙要塞ハコシロのエンリ研究棟。俺のの配下の中でも、最も生命創造に近い場所だ。


扉を開くと、いつも通りの光景が広がっていた。魔法陣、浮遊する結晶、幾重にも重なる術式の光。


「……あ~、ご主人様~。また、妙な思いつきですか~?」

「失礼だな。今回は割と真面目だ」


そう言うと、彼女は微妙な表情で私を見る。


「割とという言葉がつく時点で~、不安しかありませ~ん」


「何を研究している?」


俺が問いかけると、エンリは机の上の魔法陣を示した。


「新しい生命創造の基礎実験です~。前の魔獣や天使のアンドロイドとは異なる~、より“安定した個”を持つ生命体を作れないかと~」


なるほど。相変わらず、発想が真面目だ。


「魂の定着率は?」

「現段階では七割ほど。感情の自律性が課題ですね」


七割で文句を言うあたり、彼女らしい。


「……それで~主様は、なぜここへ~?」


俺は少しだけ間を置いた。神としての威厳を保つか正直に言うか。いや、正直に言おう。


「ペットが欲しい」


エンリは、数秒、瞬きを繰り返した。


「……え?」

「魔獣を作って思ったんだ。あれは兵器だ。だが、俺は“一緒にいる存在”が欲しい」

「……」

「神らしいペットがいい」


エンリは、額に手を当てた。


「ご主人様~、それは――」

「安心しろ。世界を壊す気はない」

「そういう問題では~ありません~!」

「ただの愛玩動物ではない。神である俺に相応しい存在だ」


エンリはため息をして、数秒考え込み、やがて小さく笑った。


「ふふ……ご主人様でも~、そんなことを考えるのですね~」

「笑うな」

「いえ~、素敵だと思います~」


彼女は表情を引き締める。


「神らしいペット、ですか~……条件を整理しましょう~。まず、寿命です~。有限では意味がありませ~ん」

「当然だ」

「次に、知性です~。最低限、感情を理解できること~」

「一方的ではつまらん」

「最後に~、世界に影響を与えすぎないこと~」


その言葉に、私は目を細めた。


「難しい注文だな」

「はい~。でも、それを可能にするのが“創造”です~」


エンリは、研究台に広げられた設計図を指差した。そこには、巨大な翼、強靭な骨格、膨大なマナ循環を前提とした構造。


「……ドラゴン、か」

「はい~」


彼女は、迷いなく頷いた。


「古来より~、人が畏れ、憧れ、語り継いできた象徴です~。力の化身でありながら、孤高の存在~」


確かに、神の傍に置く存在として、これ以上のものはない。


「だが、大きすぎる。世界に出せば、災厄と誤解される」

「ですから」


エンリは、指を鳴らして、設計図が変化する。


「基本は大きなドラゴンです~。ですが、主神様の許可があれば、縮小・擬態・次元待機が可能な仕様にします~。普段はペットで必要な時は、神の象徴として顕現します~。魂の器としても、ドラゴンは優秀ですし……問題は、感情の制御と、忠誠の在り方ですが」


俺は、少し考えた。


「無理に縛る必要はない」

「……ご主人様?」

「俺に懐けばいい。それだけでいい」


エンリは、少しだけ目を見開いた。


「……それは、ペットというより~」

「相棒だな」


そう言うと、エンリは苦笑した。


「ご主人様は、本当にお変わりになりました~」

「そうか?」


「はい~。以前の主様なら、完全制御下の存在”しか認めなかった」


……否定はできない。人類が制御できるように支配構造を作ったし、NPC幹部達が裏切らないようにナノマシンを注入した。


「だが今は……自分で選ぶ存在が、そばにいてもいいと思っている」


エンリは、しばらく沈黙した後、静かに頷いた。


「……おそらく、弟子の英雄君の影響だと思います。彼の育成や生き方がご主人様を変えたと思います~。」


俺はエンリの言葉に目からウロコだった。確かに最初にレオンに出会って才能が英雄級だとわかった。しかし、わざわざ試練を作る必要はなかった。レオンとの出会いは俺を変えたのだ。


「ありがとうエンリ。お陰で、気づけたことがあった。」

「どういたしまして~。では、さっそく創造を?」

「ああ。俺も手を貸そう」


エンリが、オオトカゲのDNAを持ち出し、改変魔法を行使しながら俺の創造魔法で新しい生物を作り出していく。空間が震え、概念が書き換えられる。


骨格。鱗。翼。心臓に相当する“核”。エンリは新しい魔法陣を展開する。壮大で、繊細で、世界に一つだけの生命を形作る術式。


「名前は~?」

「まだだ」


俺は、少しだけ楽しそうに言った。


「生まれてから、考える」


神である俺が、ただの理由で生命を創る。それも悪くない。きっと、ドラゴンも、退屈はしないだろう。

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