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人類誕生時代に来たので、人類の支配者になる  作者: 浅霧 瀬智
第2章

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31.友人

―― 地上 酒場 ――


酒場の木の扉が開く音に、弟子が手を止めた。皿を片手に、奥から出てきた客を見るその姿は、血で傷つき、天使から祝福を受けてスカマとなった今でも、どこか平民らしい控えめさが残っている。


しかしその視線が止まった先に立つのは、熱気の塊のような男だった。

スカマの騎士――剣と魔力を備えた青い髪して青いマントした青年で、全身から溢れる汗と活力で酒場の空気を一瞬で変えてしまう。


「おい、君か! 噂のゼマロ上がりのスカマってのは!」


大声で、手を大きく振りながらレオンに近づく。レオンは少し戸惑い、皿を置いた。


「はいそうです。…………あの……あなたは?」


返事は小さかったが、瞳の奥には警戒心と興味が入り混じる。

スカマとしての力を持つレオンは、慎重に目を細めて相手を見据えていた。


騎士はにこやかに手を振る。


「俺はカイルだ!城内部の警備をしてる!いやあ、聞いたぞ、ゼロマがスカマと互角に戦い、勝ったと!」

豪快に胸を叩くその仕草に、酒場の空気が一瞬緩む。弟子は少し眉をひそめた。


「互角……って、そんな大げさな……」


だが、カイルはまったくお構いなしで、にやりと笑った。


「よし、わかった! 俺と模擬戦をして、どれだけやれるか見せてもらおう!」


騎士は笑顔で剣を構える。汗と熱気で少し暑苦しいが、どこか楽しげだ。


「え……模擬戦、ですか?」


レオンは少し眉をひそめたが、やがて小さく頷く。


「……わかりました。では、失礼します」


酒場から出て、スペースを作り、二人は互いに剣を構えた。レオンの動きは以前よりも力強く、スカマのマナを受けた体が、軽やかに、しかし確実に地に足をつけているのがわかる。教会からもらった小さな宝珠で身体強化した結果だ。


カイルが先に攻め込む。


「行くぞ!」


力強く剣を振るうが、レオンは冷静に受け止め、かわす。

体の奥から溢れる信念と鍛え上げた剣技が、マナのあるカイルと互角に渡り合う。


「うおっ、なかなかやるじゃねえか!」

カイルの声が熱く響く。顔は汗で光っているが、笑みが絶えない。レオンも少し微笑み、剣を構え直す。


「僕も、負けません」


挿絵(By みてみん)


剣が交わる音がき渡る。二人の動きは速く、鋭く、まるで息を止めるように集中しているのがわかる。

カイルは豪快な力を前面に出し、突きを繰り出す。

レオンはそれを巧みに受け、逆に軽く斬り返す。


「うわっ、強いな! まさかゼマロ上がりでここまでやれるとは!」


カイルは驚き、興奮の声を上げる。レオンは小さく息を整え、しかし目には鋭さと楽しさが宿る。


マナのあるスカマの騎士と互角に渡り合うゼマロ上がりの弟子。

彼の成長と信念が、ここでまた一段と輝きを増している。


互角の戦いが続く中、通行人たちの声援も大きくなる。

「おおっ、すげえ!」

「どっちも負けるな!」


レオンは汗をかき、呼吸を整えながらも集中を切らさない。

カイルは笑いながら、剣を振るスピードを上げる。


「ふはは、もっと熱く行くぞ! 俺の全力だ!」

弟子もそれに応え、剣を受け止め、かわし、斬り返す。

二人の動きはリズムを生み、模擬戦というよりも、戦いの舞踏のように見えた。


「……くっ、やるな……!」


カイルは汗で顔を光らせながらも、レオンの動きに驚嘆している。


「僕も……負けません!」


レオンは短く力強く返す。声に迷いはなく、剣と心がひとつになっている。


戦いの末、二人は一瞬剣を交えたまま静止する。呼吸は荒く、額には汗が光る。

互角――いや、互角以上の戦いを見せ、二人は自然と笑みを交わす。


「……すげえ、君、強いな!」


カイルは剣を下ろし、肩で息をしながらも、明るく笑った。レオンも剣を下ろし、笑みを返す。


「……ありがとうございます」


二人の間には、戦いを通して生まれた友情が、確かに芽生えていた。

マナの有無を超え、信念と技術で互いを認め合う――それが二人の間の絆の始まりだった。


通行人たちは、二人を称賛し、拍手を送る。

レオンは少し照れくさそうに、しかし誇らしげに笑った。



―― 地上 王城 ――


 ~ 王視点 ~

 

玉座に座るこの時間ほど、心が落ち着かぬ日はなかった。王城の大広間に、慌ただしい足音と怒号が満ちている。


「陛下! 隣国が軍を動かしました!国境の港町が攻撃を受けています!」


……隣国が?私は思わず玉座の肘掛けを強く握った。


あり得ない。あの国とは長年、友好的な関係を築いてきた。

海を持たぬ彼らのため、我が国は漁業権を分け、港の使用も認めていた。海産物も、塩も、交易も。

奪う理由など、どこにもないはずだ。


「理由は何だ! なぜ攻めてくる!」

私の声は、焦りで少し上ずっていた。


側近が青い顔で答える。

「……隣国の使者からは、海が欲しいとだけ……」


理解できなかった。すでに与えている。分けている。それでもなお、欲しいと言うのか?


「正気か……?」


誰かが小さく呟いた。大広間に集まる貴族たちも、王族も、皆一様に混乱している。怒りよりも先に、困惑が広がっていた。裏切られた、という感情より理由がわからない恐怖。


「隣国の王は、これまで理性的な男だったはずだ!」

「交渉を無視して、いきなり戦争など……」


私も同じ思いだった。あの王は、戦を嫌う男だった。それが、まるで別人のように

胸の奥に、言葉にできぬ不安が広がる。何かがおかしい。だが、何が”おかしいのかが、誰にもわからない。


「軍を動かせ!」

「防衛線を固めろ!」


命令を出しながらも、頭の中は混乱していた。なぜ、今なのか。なぜ、海なのか。なぜ、話し合いを捨てたのか。


理屈が通らぬ戦争ほど、恐ろしいものはない。

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