表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
人類誕生時代に来たので、人類の支配者になる  作者: 浅霧 瀬智
第2章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

27/37

27.ゼマロ VS スカマ

―― 地上 エル家邸 ――


マナの差は、才能では覆らない。それはこの世界の、絶対的な法則だ。

だから最初から分かっていた。この戦いは、レオンが勝てば奇跡であり、負ければ 当然だということを。


それでも俺は、手を出さない。神となった俺が介入すれば、弟子の人生そのものが歪む。だから、ただ見守る。


「――はぁっ!!」


貴族騎士の槍が振り下ろされる。マナが爆発し、身体強化の魔術を使って、地面を砕ける。

レオンは防御に間に合わない。衝撃が直撃し、青年の体が宙を舞った。


「ぐっ……ぁ……!」


地面に叩きつけられ、血が散る。肋骨が軋む音が、神である私の耳にまで届いた。

マナを持つ者の一撃は、ただの斬撃ではない。それは災害だ。


「どうした? さっきまでの勢いは!」


騎士が嘲笑う。マナで強化された脚で地を蹴り、一瞬で距離を詰める。レオンは立ち上がろうとするが、遅い。槍が腹部を裂いた。


「――っ!!」


血が噴き出す。革鎧など意味をなさない。俺は、拳を強く握る。やはり、マナの 有無は決定的だ。

どれほど剣の才能があろうと、マナは「人を人でなくする力」だ。


レオンはよろめきながらも剣を握り直す。震える指。荒い呼吸。それでも、目は死んでいない。


「……マナが、すべてだと思うな」


かすれた声。騎士が鼻で笑う。


「事実だろう。ゼマロが、貴族騎士のスカマに勝てるわけがない」


人類はいつの間にかマナの有無に俗称をつけていた。

マナが無い人 ―― ゼマロ。

傭兵や貴族に仕える騎士の少量のマナ ―― スカマ。

貴族の多いマナ ―― レズマ。

王族の非常に多いマナ ―― オーブマ。


人類は常に秩序と感情の狭間で揺れ動く生き物だ。だから、形式ばらない呼び名を生み出し、互いの距離を測るためにこの俗称が作られたのだろう。正式名称は作っていなかったから、俗称を正式名称にしても問題ないだろう。



剣が再び振るわれる。レオンは避ける。だが、完全には避けられない。肩が裂け、腕が落ちる。

「……僕は、マナじゃ戦えない。ゼマロでも、剣で戦う!」


その声には、恐怖も諦めも混じっていない。ただ、信念があるだけだった。


騎士が嘲笑する。

「ゼマロごときが、スカマに挑むなど愚かだ!」


だが、レオンは倒れなかった。ふらつき、剣を支えにしながら。


「まだ……立つか。化け物め」


騎士の言葉は正しい。ゼロマが、スカマを相手にここまで生き延びていること自体が異常だ。

騎士の槍が弟子の腹を裂く。血が噴き出し、弟子の膝が折れる。それでも、剣は手放さない。


「……なぜだ」


騎士が苛立った声を上げる。


「なぜ、そこまでして立つ!貴様はエル家とザヘル家の争いに、つい最近から関わっただけだろ。」


レオンは、血と汗に濡れた顔を上げた。その目は、まだ折れていない。


「……僕は」


声は震えている。だが、言葉は、はっきりとしていた。


「力を持つやつが、正しいって世界が……嫌いです」

「マナがあるだけで、偉そうにして。生まれで決まって。才能がないやつは、最初から見下される」


レオンは、剣を握り直す。


「僕は……誰かを守るために剣を振るう。踏みにじられる側だった人間が、立ち上がるってことを……証明したい」


剣を失ったまま、血だらけの体で立ち続ける。


「……剣は、まだ終わってない」


何を言っている、と騎士が眉をひそめた瞬間。レオンは、地面を蹴った。

ゼロマであるレオンが、マナのあるスカマに勝つための唯一の武器――剣の技と読み――それを信じている。


騎士が再び剣を振り下ろす。マナの刃が、レオンの体を引き裂こうとする。だがレオンは回避ではなく、真正面から受け止めた。刃の衝撃を全身で受け止め、踏み込み、反撃の剣を叩き込む。


剣と剣がぶつかる衝撃。火花が散り、騎士の腕がしなる。ゼロマの剣が、スカマのマナを僅かに削る。


「くそ……!」

騎士の叫びが、戦場を震わせる。だがレオンは血と汗で顔を覆いながら、前に出る。ゼロマの体で、スカマに立ち向かう。


最後の一撃。騎士が力を込めたマナの斬撃。レオンの体に深く食い込む。血が吹き出し、膝が崩れる。

だが、その瞬間、レオンは力の全てを剣に乗せ、逆にスカマの喉を突き刺した。


「……マナが、強すぎる……だから……」


血と汗に濡れた顔で、レオンは笑った。


「……動きが、分かりやすい」


レオンはマナに頼る者の「油断」を、剣で学んできた。騎士の視線。重心。一瞬の硬直。

マナの鎧を貫く、純粋な剣の力。騎士が呻き、血が飛び、地に倒れる。ゼロマの弟子が、スカマを討ったのだ。


騎士の目が見開かれ、声にならない音を漏らす。血が流れ、膝が崩れ、そして命が、途切れた。

レオンは剣を引き抜き、その場に崩れ落ちそうになるが剣を杖代わりにして持ちこたえる。


「……勝った。」


かすれた声で、レオンは呟く。


「……逃げなかった。僕は、僕の信念で……剣を振った」


挿絵(By みてみん)


全身が血だらけで、まともに立つこともできない。それでも、生きている。


俺は、ゆっくりと目を閉じた。神である俺が、手を出さずに済んだ。

それは喜ぶべきことではない。だが、この世界で生きるということは、そういうことだ。



マナを持つ貴族騎士を、マナを持たない人間が、剣だけで殺した。それは奇跡ではない。


――執念だ。


マナに屈せず、血にまみれながら、人として戦い、人を殺す決断をした青年。


この世界は、残酷だ。だが同時に、

神ですら手を出せない“強さ”が、確かに存在する。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ