19.ハンティとダンス
―― 空中都市 ダンスホール ――
夜の帳が静かに降りる豪華なダンスホール。ミラーボールの光が、星々のようにきらめき、空気は甘く芳醇な香りで満ちて、二人を祝福しているかのようだった。
「……本当に、ここで踊るのですか、主様?」
ハンティは、少し顔を赤らめ、肩を少し震わせながらツバイを見上げた。紫色の 長髪を後ろに束ね、美しい白いドレスに身を包んだハンティ。肩章の意匠は外されているが、その佇まいからは隠しきれない軍人気質が滲み出ている。
普段は戦場で冷徹かつ的確に指揮を執るハンティも、煌びやかな空間と、ツバイの目の前では、ただの乙女のように見えた。
ツバイは、優雅に微笑みながらハンティの手を取り、静かに導いた。彼の手のひらの温かさは、ハンティの緊張を少しずつ溶かしていく。
「もちろんだ、ハンティ。君と踊るためだけに、この夜を選んだんだ」
その言葉に、ハンティの耳が赤く染まる。普段は冷静沈着なであるが、ここでは言葉に詰まり、微かに震える唇をかみしめていた。
ツバイは優雅にハンティを抱き寄せ、二人の身体が自然に重なる。マリアの心臓は、戦場での激闘を超える速さで高鳴っていた。自分だけの微妙な感情——恋心や期待、そして少しの恥じらい——が、彼女を包み込む。
「主様……私、こんなに……恥ずかしい思いを……」
彼女の言葉を遮るように、ツバイは静かに微笑む。
「恥ずかしがる必要はない。君は君のままで十分美しい」
その一言で、ハンティは無意識に目を伏せ、頬を真っ赤に染める。まるで戦場での指揮を忘れ、少女に戻ったかのようだ。ツバイは軽く彼女の手を握り直すと、優雅に一歩を踏み出した。
「社交ダンスなど、久しぶりです。軍務ばかりでしたから」
「ハンティをここまで働かせたのは、俺の責任だな」
「いいえ。私はあなたの剣であり盾です。誇りに思っています」
その言葉に、ツバイは思わず苦笑する。
彼女は常にそうだ。自分のことより、ツバイの安寧を優先する。
「今夜だけは、司令官ではなく、一人の妻として踊ってくれ」
音楽に合わせ、ツバイはハンティを導く。ステップはゆるやかで、星の光が二人の影を床に映し出す。
ハンティは最初こそ少し硬かったが、次第に身を委ね、流れるように回転した。
「……私、主様と……ずっとこうしていたい……」
その囁きに、ツバイは穏やかに笑った。
「もちろんだ。君と踊るこの瞬間を、俺は永遠に忘れない」
「私もです。主様の配下として、妻として。……そして、あなたを愛する女として」
ツバイはそっとハンティを抱き寄せ、唇にキスをする。
星々が祝福の光を降らせ、神舞の夜は、静かに更けていった。




