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桃地獄

作者: 葉沢敬一

毎週日曜日午後11時にショートショート1、2編投稿中。

Kindle Unlimitedでショートショート集を出版中(葉沢敬一で検索)

 桃が駅前の軽トラの荷台に載せられて売られていたので買った。


「産地直送」とは段ボールに看板に書いてあったが、産地はどこですか? と聞いたらトラックの運ちゃんは目をそらして答えないし、軽トラのナンバープレートをカメラで撮ったら、すぐさま商品仕舞って他所へ行ってしまった。


 ――盗品かな?

 買った桃三個が入った袋を下げながら帰宅する。そして、警察に画像と共にメールで通報した。

 桃は収穫直前のものを取ったようで、ちょっと固い。まあいいや、食べよう。


 桃に包丁を入れると、「地獄」と書かれた種が出てきた。

 なんだこれ?


まるで、フォーチュンクッキーみたい。知らない人のために書いておくけどフォーチュンクッキーとは、中華のお店で出てくる、吉凶の紙が入っているクッキーのこと。実は僕も話に聞くだけで現物は見たことない。


 ふと見ると、桃は4個になっていた。買ったのは3個だぞ。

 ポン!

 桃が8個になった。倍になった。

 なんだこれ。


 ポン!

 16個になった。数える間もなく増えていくので多分16個。

 倍、倍になっていく。


 どんどん増えていく。

 部屋一杯になって、床には僕は踏んで潰れてしまった桃が転がっている。慌てて、アパートから外に出る。間に合った。


 部屋ぎっしりの桃。ドアから溢れだしてくる。

 バリン!


 サッシを破って出てきた音がした。

 慌てて警察を呼ぶと同時に、アパートの住人を避難させた。


 通報後30分で警察ではなくて自衛隊が来て、アパート丸ごと火炎放射器で焼き払ってしまった。

 軽トラの通報後、緊急招集が掛かっていたという。どうやら、あの桃は研究中の生物兵器みたいなもので、軽トラの運ちゃんはテロリストだったらしい。


 警察に「内緒にね」と念を押され、口外無用とのことだ。マスコミは只の火災として扱い、ほとんど報道なし。僕もSNSに流すタイミングを逃してしまったので、何事もなく日々を送っている。


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