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犬人の集落から西へ離れた場所に集落が在った。アレが猫人の集落だろうと思い近寄ると入り口には二体の獣人が見張りをしていた。
背丈は人間の大人程、二足歩行の人型、顔は猫、身体には体毛が色濃く生えている。簡素な麻の服を着て、鉄製の槍を持ち、集落の入り口に立つ二人の獣人は魔王とアトラに向かって槍を構える。
「貴様、何者だ!!」
「ここは我ら、猫人の土地!! 死にたくなければさっさと立ち去れ!!」
似たようなやり取りを先程もしたなと思いながらも魔王は問い掛ける。
「死にたくなければ食料を寄こせ、二度は言わぬ」
だが犬人同様に猫人も食料を寄こせと言われて、容易く従う者達では無かった。
「貴様、何様のつもりだ!!」
その言葉を発した猫人に対してアトラは五本の爪を伸ばし、猫人の身体を串刺しにしてから答える。
「魔王様だ。猫畜生」
生き残った猫人は隣で串刺しになった同胞を見て、何が起こったのかわからない様子で硬直する。
「それでは魔王様、この集落を滅ぼしてもよろしいでしょうか?」
「待て。ここまで一言一句、犬が猫に変わっただけだ。この先は読めている」
そして魔王の予想通り大声を上げ平伏する猫人の姿がそこには在った。
「魔族様!! どうかご無礼をお許しください!!」
「ほらな」
「流石です魔王様!!」
気を取り直し、魔王は平伏する猫人に再度命令する。
「腹が減った。さっさと食料を寄こせ」
「はっ!! 畏まりました!!」
そう言って猫人は集落の奥へと駆け出して行く。
そして集落の入り口を見張っていた猫人は全力で長の家へと駆け込んだ。
「長!! 長!!」
慌てふためく猫人に対して、年配の猫人が呆れた様子で問い掛ける。
「なんじゃ?」
「魔族だ!! 魔族が来た!!」
「魔族じゃと? なんでこんな何もない場所に魔族が来るんじゃ?」
「そんなの知らねぇよ!! とにかく、一緒に居たサンクが一瞬で殺されて食料を寄こせって言ってきてるんだ!! どうにかしてくれ!!」
「魔族なんて儂らじゃ、どうにもならんじゃろ……」
「じゃあどうするんだよ!?」
慌てふためく猫人の言葉に年配の猫人は思考を巡らせる。
――魔族なんぞロクな奴じゃないのは確か、食料を渡したところで更に何かしら要求されることは決まってる。それならば逃げるか……この人数で逃げるのは大変じゃが死ぬよりはマジだろう。
そう考えを巡らせると年配の猫人は口を開く。
「お前は魔族に食料を渡してこい、儂は残った猫人を集めてコレからについて皆と相談する」
そう指示された猫人は頷き、食料庫の方へと走って行くのだった。
――さてと、逃げる準備をするかのう……