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食の都で一番大きく煌びやかな建物、宮廷と呼ばれる場所に魔王達三人はやってきていた。
大きく塀で囲った門を通り、広い中庭を抜けて、宮廷の中へと入る。ちらほらとすれ違う人は居るが、誰も三人を気に掛ける様子は無く、宮廷内を警備する衛兵の姿も見られなかった。
三人が宮廷に入ると広間が在り、少し辺りを見回していると吹き抜けの上層から一人の獣人が飛び降りて来た。猫人の耳に尻尾、髪は短い白髪、白のズボンに黒の上着、赤い羽織に華奢な体型の少女。
上階から飛び降りて来た少女は宮廷に侵入してきた三人に視線を向け、問い掛ける。
「何で、魔族と聖女が一緒に居るんだよ?」
獣人の少女の質問に魔王は答える。
「この女は俺の配下だ。お前は猫人だな? ここに暴食の魔王を名乗る魔族が居ると聞いて来たのだが、お前はその魔王の配下か?」
「僕が暴食のベルだよ」
「そうか、お前が暴食か。この国では猫人の獣人が魔王なのだな」
「見た目は確かに猫人の獣人かもしれないけど、猫人にこういうことが出来ると思う?」
そう言ってベルは腕を口に変形させ、伸ばし、魔王の顔面を食いちぎろうとしたが魔力障壁によって阻まれ、弾かれる。ベルは変形させ伸ばした腕を元に戻し、口を開く。
「なんだよそれ?」
「障壁だ。お前の攻撃程度では壊れないらしいな」
魔王の言葉にベルは不機嫌そうな顔をしながら話を続ける。
「それで、僕に何の用?」
「魔王を名乗る魔族が居ると聞いてな。どんなものか見に来ただけだ。これといって用は無い」
そう言いながら魔王は宮廷内を見回しながら、何処かへ向かって歩き出そうとする。その姿を見たベルは魔王の動きに警戒しながらも声を掛ける。
「ならさっさと出てけよ。僕を見に来ただけならもう十分だろ?」
「ああ、少し中を見て回ったら出て行くとしよう」
「いや、さっさと出てけよ」
「初めて見る建物でな、少し中を見て回りたい」
ベルの話に対して聞く耳を持たない魔王に対して、辛抱強く無いベルはすぐにブチギレた。
怒りと苛立ちの感情をむき出しにした攻撃を放つが魔王の魔力障壁によってそれは防がれる。本能的に魔王には勝てないと理解したベルはすぐに標的を聖女に変え、腕を口に変形させて伸ばし、聖女を食い殺そうとする。だがベルの攻撃から庇う様に魔王は聖女の身体を自身の方へと引き寄せ、魔力障壁によってベルの攻撃を防いだ。
「何なんだよお前は!?」
「俺は魔王だ」
魔王の返答にベルは更に苛立ちの表情を浮かべる。だが、どれだけ攻撃しても魔王の魔力障壁を破ることは出来ず、激しく動くベルは疲れと空腹によってその場に膝を付くのだった。
「何だ、もう終わりか?」
「お前、絶対殺してやる」
そんな二人の戦闘を傍から見ていた着物の女性がベルの方へと駆け寄る。
「ベル様!! 大丈夫ですか!?」
「リンファ、ご飯」
「では、厨房へ参りましょう」
そう言ってリンファはベルを丁寧に抱える様に抱っこして何処かへと去って行くのだった。




