7.冒険者ギルド
門をくぐって少し奥へ進むと馬車がたくさん置かれた場所があって、そこに馬車を預けて街中の移動は歩く事になった。
アーサーが自分で歩くと遅いので、マティスが抱っこして冒険者ギルドへと移動している。
凛々しいもふもふと可愛いもふもふの共演……最高か!!
ほら、町行く人達もチラチラと見てるくらい……ん?
羨望の眼差しを送っているとばっかり思っていたけど、そうでもない視線が混じっているような。
「サキ、そこの角を曲がれば冒険者ギルドですよ。森からの素材を持ち込むから門から近い場所にあるんです」
マティスに声をかけられて思考が途切れた。
ついでにずっと気になっていた事を言ってしまおう。
「あの……、マティス、リアムとユーゴに話すみたいに気楽に話してもらえると嬉しいです。なんというか、心の距離が遠い気がして落ち着かなくて」
『うむ、そうだな。我にもそう構える事はない。恭しい態度と言葉遣いではすぐに我がフェンリルだと周囲にバレてしまうだろう』
「うぐぅ……、ではサキ……も弟達と話すように話してくれ、私もそうする。アーサー様の事もアーサーと呼ばせてもらう」
『それでよい』
「おや、頭の固いマティスがすんなり言う事を聞くとは。もしやアーサー様が何か言ったのかな?」
アルフォンスが目を瞬かせた。
「へ? アルフォンスも聞いてたでしょ?」
「サキ、アルフォンスは眷属じゃないからアーサー……の言葉は聞こえていない。サキが聞こえているのは主従契約をしているせいだ」
そういえば最初は何も聞こえなかったっけ。
考えてみれば、アーサーとアルフォンスが話してる姿を見てないや。
一連の行動を思い返し、マティスの説明に納得した。
「サキ! 冒険者ギルドの中には荒くれ者が多いから、オイラ達から絶対離れちゃダメだよ!」
「手、繋いどく」
「そうだね! サキ、手を繋ごう!」
「う、うん」
三階建ての冒険者ギルドの前まで来ると、リアムとユーゴが左右から手を繋いでくれた。
そしてマティスを先頭にギルドの中へと入る。
ギルドに入った瞬間、中にいた人達が一斉にこっちを見た。
私この空気知ってる、入社試験の待合室に入った時の自分より上か下か値踏みする視線。
だけどマティスが足を止めずに入って行くと、何事もなかったかのように空気が凪いだ。
中にいる冒険者は十人くらいだけど、その中の二人くらいが私を観察している気がする。
よく漫画で読んだような、半分酒場で半分カウンターの内装にドキドキして双子と繋いだ手に力が入る。
すると左右で同時にクスッと笑われた。
「大丈夫だよ、サキ。マティス兄ちゃんは強いから冒険者達から一目置かれてるんだ。一緒にいれば問題が起こる事はないよ」
「そ、そっか。わかった、ありがとう」
ホッとして肩の力が抜け、マティスと話しているカウンターのギルド職員のお姉さんに視線を向ける。
「ではそちらのお嬢さんの冒険者証発行と、従魔登録ですね。お嬢さん、この魔導具に手を置いてくださいね、届くかしら?」
四角い箱のような魔導具は、カウンターの内側に置いてあるせいで背伸びしてギリギリ届く位置にあった。
カウンターがあばら骨に食い込んで手がプルプルしていたせいか、周りから微笑ましい視線を向けられたけど。
「え? あら? ウソ……魔力値が……!」
ギルド職員が魔導具を見て口元を押さえた。
おおっ! もしかして魔導具がエラー起こすくらい魔力が多かったとか!?
「どうしてこんな魔力値で生きているの!? 一にすら満たない数値なんて、赤ん坊でもありえないわ!」
え? ちょっと待って。
どういう事か、私が知りたいんですけどぉぉぉ!?