41.報連相
「ヤダヤダ、かっわい~い! あっ、だけどごめんね、アルフォンスってば裸なのに私ったら!」
マティスがドアを開けた瞬間視界に入ったモノ、それはパジャマに着替えようとしていた全裸のアルフォンスだった。
私とマティス達が話を始めたせいで、先に食堂から部屋に戻っていたのだ。
生まれたままの姿のオランウータンが目の前に!
しかも驚いて顔だけ振り向き、動揺したのか長い前髪をフッと息で舞い上げたのがまた可愛くて!
「サキ、落ち着いて」
「ハッ、ご、ごめん。アルフォンス、一回ドアを閉めるから着替えて……」
ユーゴが肩に手を置いて落ち着かせてくれたので、そっとドアを閉める。
案内係の女性が信じられない物を見たとばかりに、目を見開いたまま固まっている。
しかも私の叫び声のせいで、チラホラ他の部屋からこちらの様子を伺う人達が。
リアムがなんでもないと、私がちょっと驚いただけだと説明してくれている。
一分ほどすると、オーギュストが中からドアを開けてくれた。
クスクスと笑われているのがいたたまれない。
「ふっ、俺の裸を見れてサキは幸運だったな。だがもう覗くんじゃないぞ? 裸を見られるのクセになり……じゃなくて、恥ずかしいからな」
うん、全然恥ずかしそうじゃないね。
元々体毛があるから、見られても恥ずかしくはないんじゃないかな?
とりあえず案内係の女性には一階にあるラウンジっぽい場所で待ってもらう事にして、私達は部屋の中で報告会議。
中に椅子やテーブルなんて物はなかったので、ユーゴのベッドに一緒座った。
「……という事で、私の明日の予定はそんな感じ。明後日のお披露目は夜に終わるみたいだから、その次の日に出発できればいいかな?」
「出発? 神殿から出るのか?」
マティアスが驚いたように言った。
「元々その予定だったでしょ? それに私の泊まる部屋は豪華だったのに、マティアス達がこんな古い建物で過ごしてると思ったら落ち着かないよ! お披露目終わったら集落に戻る? それとも王都でしばらく観光でもする?」
実は異世界の都会を観光したかったのだ。
もしかしたらモヨリ―にはない都会ならではの物とかありそうだし。
しかし、マティス達の反応は楽しみというより戸惑いだった。
「どうしたの?」
「私達はサキは神殿で暮らす事になると聞かされていたんだ。用意された部屋も豪華でとても気に入っていたと。だから私達はここから近い場所に家を借りようかと話し合っていたんだが……」
「いやいやいや、確かに豪華な部屋だったけど、豪華すぎて落ち着かないよ! ベッドだけは持って帰りたいくらいふかふかだったけど」
「ではこれからも私達と一緒に暮らすという事でいいんだな?」
「もちろんだよ!」
即答すると、マティスはホッと息を吐いた。
「よかった」
ユーゴがコテンと私の肩に頭を乗せる。
「だね! オイラ、サキとアーサーとこれから一緒に暮せないって思ったら、お腹がギュウッて痛くなったけど、違うならよかった!」
やだもう、この双子可愛すぎる。
アーサーが私の好意を美味だって言う時って、こんな感じなんじゃないだろうか。
あ、アーサーが口の周りを舐めている、私の嬉しいって感情が美味しいんだね、今ならなんかわかる。
「間違っても私が皆と離れるって事は言わないから。もし誰かが言っても信じないでね、その時は必ず直接私に確認して」
「「「わかった」」」
ちゃんと話しに来てよかった、ヘタしたら勘違いしたまま離れちゃうところだったし。
話が終わり、一安心してアーサーと共に私達の部屋に戻って休んだ。
翌日から安心して眠れなくなるとも知らずに。




