107.報告書提出(一回目)
「これが今回の調査報告書ね。一階層の全域地図と、一階層と二階層に出る魔物の種類が記してあるけど、数時間だけの調査じゃここまでかな。更に奥も調査するなら中で何日か野営をしながらじゃないと無理だね」
「おお! 一階層だけでもあると助かる!」
私が差し出した報告書を、ギルド長室のソファに座るジョセフがホクホク顔で受け取った。
ダンジョンを出た後、三人と合流して森の家で休憩がてら報告書の清書を済ませておいたのだ。
移動はもちろん覚えた転移魔法である。
マティス達は初めて体験した転移魔法に凄く興奮して喜んでいたので、戻る時も転移魔法にしてあげた。
リアムはともかく、マティスとユーゴの興奮する姿は結構レアなのだ。
シリルは本人は隠してるつもりのようだけど、結構喜んだり興奮しているのはバレている。
「ところで何階層まで調査すれば安心できるんだ? 私達に踏破してほしいわけではないだろう?」
「そうだなぁ……、調べたら枯渇前のダンジョンは八階層中の五階層まではBランクでも行けなくはなかったらしい。六階層からはAランクのパーティ以上しか進めなかったと昔の調査報告書に書かれていたから、五階層まで調べてもらえればかなり助かる。もちろん危険度が上がっている可能性もあるから無理はしないでくれ」
マティスの質問にジョセフはふさふさの髭を撫でながら答えた。
「全ての階層の広さが同じだとしたら、五階層まで単純計算であと四日かかるのかぁ。でもまぁ、中で野営して戻って来る時間を無くせばもっと早く戻って来れるか……」
『我が魔物を全て倒すのであればもっと早いぞ! 八階層まで行ってもよいのではないか!?』
アーサーはやる気満々だ。
「んん……? もしかして……」
報告書を見ていたジョセフが立ち上がり、書類が置かれている本棚に向かった。
「おお、これだこれだ! ふむ……やはりそうだ……」
「何? どうしたの!?」
一人だけ頷いて納得してるみたいだけど、私達にはさっぱりだ。
「おっと、すまない。どうもサキが描いてくれた地図に見覚えがあると思ってな。これを見てくれ」
そう言ってジョセフがテーブルの上に置いたのは、随分古そうな地図と私が描いたダンジョンの地図。
古そうな地図を見てすぐに気付いた、私が描いた物と同じだと。
「あ……っ」
「気付いたか? これは枯渇前のダンジョンの地図だ。という事は……だ、もしかしたら前と地形が変わっていない可能性が出てきたな。この他にも七階層までと、部分的に八階層までの地図があるから転写して持たせてやる」
「転写?」
「お? 知らないか? 転写の魔導具を使うと内容が全く同じものがもう一枚作れるんだ。原本は渡せないが、転写した方に新たにわかった情報を書き込むだけなら時間も短縮できるだろう?」
「おお! 確かに! ……って、八階層まで渡すって事は、そこまで行ってほしいって事じゃないの?」
転写という言葉に気を取られて危うくスルーするところだった。
いや、コピー機みたいな魔導具がある事にも十分驚いたけどね!
やはり転生者のカミーユがいたからなんだろうか。
「ははは、時間が短縮できる分奥に行く可能性がゼロじゃないだろう? もしものためだ、もしものな! とりあえず明日から一階層まではEランクまで、二階層はDランクまでの制限つけて開放するがいいか?」
「二階層はまだ地形を把握していないから開放するのは午後からにしてくれ、一階層までなら午前からでも構わないが。…………見てくれ、一階層の罠の場所が以前と違う」
マティスがジョセフの判断に待ったをかけ、新旧の地図の同じ場所を指差した。
「あ……、罠の場所が違う」
「ああ、どうやら以前と同じとはいかないようだな」
どうやらそう簡単に楽をさせてもらえないようだ。




