表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
97/204

97 情報ギルトへ突入した








 ドーズの街へ入ると、ちょっとした騒ぎになっていた。

 あちこちで噂話が聞こえてくる。

 もちろん情報ギルドの支部が襲われたってことだ。

 意外と情報が回るのが早いな。


 それに聞き耳を立てつつ早足で情報ギルド本部へ向かう。

 

 目指す場所は通りに面していて、非常に目立つ大きな二階建ての建物。


 あそこか!


 入り口には既に情報ギルドのメンバーらしい、怪しい連中が見張っていた。

 種族はゴブリンやダークオークに昆虫系の亜人までいる。


 だけどな、所詮は情報ギルド。

 戦闘には慣れていないのだろう。

 装備が貧弱で飛び道具もほとんどない。

 逆に俺達はオーク戦闘部隊の精鋭と金等級冒険者だ。

 二倍の数で来ても負ける気がしない。


 俺は建物に近付きながら言った。


「正面から急襲する。デブのダークオークは殺すなよ。行くぞ!」


 俺は小走りしながら小剣を引き抜く。


 通りの店で働くカエル系亜人が悲鳴を上げた。


 それを聞いたギルド連中が一斉に俺達を見た。


「来たぞっ、戦闘準備!」


 連中の一人が叫んだのだ。


 予想通り敵は腰が引けている者ばかり。


 そこへ視認阻害のマントを着けたハピが、空中からマジックミサイルの弓矢を放った。


 入り口付近に固まって陣取っていた為、マジックミサイルの矢がその集団へと集中し、次々と敵に突き刺さる。


 悲鳴を上げながら大混乱に陥る情報ギルドのメンバー達。


 そこへ突入したのがラミだった。


「オラオラオラ~、どきやがれ!」


 突入するやあっという間に数人を斬り伏せるラミ。

 だが、怪我が治り切っていない身体だ。

 胸に巻かれた包帯が赤くにじんできた。


「ラミ、下がれ。これは命令だ!」


 俺が声を掛けるがラミは当然渋る。


「ライさん、まだやれるって!」


 そう言いながらさらに二人を血祭りに上げる。


「オーク精鋭の腕を見たいから下がれ、何度も言わせるな!」


「わ、分かったよ」


 何とか後ろに下がるラミ。


 そこへ十人のオーク兵が、盾でガードしながら敵に突っ込む。


 十人でのシールドバッシュだ。


 小型の亜人たちはそれで後方へ吹っ飛ばされる。


 ほう、連携が取れるんだな。

 さすが精鋭だ。


 オークの突撃で敵は戦意を無くし始め、逃走する者が出始めた。

 そうなるとこっちのもんである。

 一人逃げ出せばそれが連鎖する。

 総崩れとなった。

 

「建物内へ突入しろ!」


 俺の合図でオーク兵十名が、正面入り口から室内へと侵入した。

 続いて俺とダイ、そしてラミにハピも入って行く。


 そこは広いエントランスホールになっていた。

 大きな階段が二階へと続いていて、テーブルやイスが並ぶ広いロビーになっている。


 だがそこはシーンと静まり返っていた。

 ハピがつぶやく。


「あら、誰も居ないですわね」

 

 その言葉が合図かの様に、二回の部屋から敵らしき影が一斉に出て来た。

 十人はいるか。


 ダークオークばかりだ。


 そいつらは階段通路に並び、階段の手すり越しに何かを構えた。


「くそっ、クロスボウだ!」


 俺が叫んだと同時だった。


 クロスボウから一斉にボルトが放たれた。


 オーク達が盾をかざして俺の前に立ち塞がる。


「ウガッ」

「グシッ」

「ギャッ」


 オーク達の悲鳴が上がる。

 俺にきたボルトはオークの盾で防がれたが、それ以外は刺さっている。

 もちろんそれは俺を守って自らの身体をさらしたオーク兵達だ。


 いや、それだけじゃない。

 ハピとラミにも刺さっている……けど、そっちは心配なさそうだ。

 ハピは鳥の毛の部分で、刺さり方が浅いようだし、ラミも蛇のウロコ部分で、ケロッとしている。

 しかしオーク達はそうはいかない。

 酷い有り様だ。

 四人がやられた。


「お前ら、俺をかばったのか……」


 ダークオーク達は次弾装填せずに、クロスボウを投げ捨てる。

 そして腰の剣を引き抜いた。

 接近戦で来るようだ。


 俺は叫んだ。


「ハピっ、タンバリン!」


 ハピは刺さったボルトを気にしながらタンバリンを取り出す。


「やっとこれを使う時がきたのですわね」


 ハピは不気味な笑顔を見せながらタンバリンを手に、空中に浮き始めた。


 すると大慌てでバッグを探るラミ。


「待て、待て、耳栓が見つからねえって」


 俺はダイに耳栓をしてやる。


「始めますわよ~」


 そう言って歌い始めるハピ。


「パララ~、パラリララ~♪」


 今回は初めから歌うし踊り始めた。

 

 いきなり全力じゃねえか。


 違和感にとらわれて、ダークオーク達の脚が止まる。


 そこへハピの情熱のタンバリンの演奏が始まった。


 空中で変な演奏に奇妙な歌、そして想像の斜め上を行く踊り。


 あっという間にダークオーク達はその場でしゃがみこみ、頭を抱えて震え出す。


「助けてくれ~」

「怖い、怖いよお」

「恐ろしい……」


 俺には笑いが込み上げてくるんだがな。


「ふはははは、たわいもない……一階はダイとラミが探せ。二階は俺とハピで探すぞ」


 そう言ってダイはラミに託し、階段を上がろうとして気が付いた。


「ふふふ、そうだな、忘れていた……」


 恐怖で壁に背をつける味方のオーク達。


 まあ良いか。


「オーク部隊、治療を優先しろ。それと入り口からの敵は任せたぞ」


 そう言って、階段の縮こまるダークオークに一撃づつ入れながら、足早に二階へと上がる。


 まだ戦いは終わってないのだが、ハピは何だかやり切った表情をしている。

 

「ライさん、二番の歌と踊りもあるのですわ」


 どうでも良いわ!


 二階には部屋がいくつかある。

 そのどれかがギルド長の部屋なのだが、部屋札が取り外されていて判別がつかない。


 そこで手前から順に確認して行く。


 まずは最初の扉を思い切り蹴破る。


 いきなりビンゴだった。


 部屋の中にはあのデブのギルド長、ヒデルが椅子に座っている。

 ヒデルの前にはテーブルがあり、その上には皿に盛られた骨付き肉が山の様に積まれおり、それに必死でかぶりついている。

 

 本当に見ていて汚い。


 さっさと拉致しようと部屋に入ろうとして気が付いた。

 物凄い殺気が漂って来る。


 ゆっくりと部屋に入ると、部屋の隅の椅子に何者かが座っていた。

 その殺気はそいつから放たれたものだ。


 この俺でさえ背筋がぞっとするほどの、冷たい殺気。


「ハピ、こいつは俺がやる」


 ハピには荷が重い敵だと判断したからだ。

 パピもただならぬ雰囲気を悟ったのか、無言で後ろへと下がった。

  

 そいつはダークオークに間違いないのだが、何より見た目に決定的な違いがあった。


 手が四つありやがる。







 


 



引き続き「いいね」のご協力よろしくお願いします。


その内またランキング発表します。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ