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88 廃村の教会へ行った










 魔道具屋の店内でひとつ気になる物を見つけた。

 魔法石が付けられたワンドなのだが、その商品説明にライトの魔法が込められていると書かれている。

 暗闇を照らす魔法の明り。

 常に術者について回る空中浮揚する灯り。

 勇者パーティーが使っていた魔法と同じだ。


 二回分のライト魔法が込められていて、値段が金貨二枚とある。

 魔法石に魔力を込めれば、何度でも再使用可能。

 これは欲しい。

 暗闇でいちいちカンテラを使うのは面倒臭い。

 即買いした。


 それ以外にもスクロールなる物も販売していて、有用そうな物も多くあったのだが、予算の問題で今日のところは断念した。

 ポーションもヒール系以外にも色々置いてあった。


 最後に店を出る前に、マジックバッグが置いてないか探したが、やはりここにはなかった。

 例えあったとしても、今は手持ちがないから直ぐに誰かに買われてしまうだろう。


 これで買い物は済んだ。

 今出来るバンパイヤ対策は全てやった。


 俺達は一番最近にバンパイヤの目撃情報があった場所へと向かう。

 街から馬車で半日の所だ。

 相変わらずオークの馬車とボアに騎乗するオークが付いて来る。


 何事もなく現場付近に到着した。

 情報によると、ここを通りかかった伝達屋の早馬が、冒険者に襲い掛かる赤い目をした人間を見たらしい。

 赤い目の人間、つまりバンパイヤだ。

 ただし、その冒険者がどうなったかは分かっていない。

 恐らくもう死んでいるか、バンパイヤのエサになっているな。


 それが数日前の話だ。

 もう逃げてこの辺に居るとは思えない。


 一応痕跡でも探すかと、適当に馬車を止めて周辺を探索することにした。


「ラミとアオは森の方を頼む。俺とダイで川の方を探してみる。ハピは空から探索してくれ」


 俺に付いて来ているオーク達は、放置しておくのも勿体ないので馬車を守って貰う。

 もうすっかり小間使いするようになってしまったな。

 今度オーク領に行って、族長のオウドールにちゃんと礼でもしてくるか。


 俺はダイを小脇に抱えて、川の方へと向かった。

 ボアに騎乗したオーク三人は俺に付いて来るようだ。

 

 川には直ぐに到着し、上流へ行ったり下流へと行ったりしたんだが、特に変わった様子はない。

 ダイにも特に反応はみられない。

 そんな時だった。


 上空にいたハピが俺の所に降りて来た。


「ライさん、ラミが何かを見つけた様ですわ」


 何を見つけたのだろうか。

 とりあえず行ってみるか。


 現場に着くと、ラミとアオが二人して腕を組んで、何やら立ち尽くしている。


「ラミ、アオ、何を見つけたんだ?」


 俺がそう尋ねると、二人が同時に振り返る。

 似つかわしくない者同士なのに、行動が一緒だと不思議と似てくるな。


 そこでラミが答えた。

 

「ライさん、これだよ、これを見てくれよ」


 そう言ってラミが、チェーンの付いたプレートを差し出す。

 金色に輝く金属プレート。

 それは金等級の冒険者バッジだ。

 識別番号が刻印されているが、番号じゃ誰のか分からない。

 ギルドに持って行けば分かるだろう。


 しかし嫌な予感が脳裏をよぎる。


「ダイ、匂いを嗅いでくれるか」


 ダイの鼻先に冒険者バッジをかざす。

 直ぐにダイから念話で返答が返ってきた。


『ベルケって言ったか。ゴーレム使いの大男。あの男の匂いだな』


 エルドラの街はつまらんと言って出て行った、あのベルケか。

 あいつ、バンパイヤにやられちまったか……


「ダイ、匂いを追ってくれ」


「ウォン!」


「ハピは引き続き空から頼む」


「はいですわ」


 陽はまだ高い。

 陽の下なら俺達が有利だ。


 ダイが匂いを追って行くのだが、その方角が徐々に街へ近付いて行く。

 それも街道に沿う様に進んでいる。

 結局、俺達の馬車やオークの馬車も、エルドラの街へ逆戻りすることになった。


 どういうことだ?

 まさかエルドラの街の中に拠点を作ったというのか?


 ダイが丘の上で足を止め、エルドラの街の方を見る。

 遠くに街が見える。

 しかしダイが見ているのは街ではなかった。


 ラミがダイに声を掛ける。


「ダイ、何見てんだ?」


 俺がダイの視線の先を探ると、古い廃墟を見ていると気付く。

 街から少し離れた場所にある、かつて人間が住んでいた村。

 

 確か増えすぎた魔物によって、捨てられた村だと聞いた事がある。

 しかし家屋のほとんどは朽ち果てて、形さえ残っていない。

 残っているのは石造りの教会くらいだ。

 ゴブリンがねぐらにしていたりすると、聞いたことがある。

 あ、今はゴブリンはいないのか。


 まさかねえ……


「ダイ、まさかあの教会にいるとか言わないでくれよ」


 俺がそう言うとダイが俺をチラリと見ながら念話を送ってきた。


『ここからじゃ何とも言えないがな、匂いはあの村の方から風に乗ってやって来る。あの廃村にいることは間違いない。となると教会が一番怪しいとなるだろ』


「バンパイヤが教会に住み着くとか、いくら何でもおかしいだろ」


『まあ行ってみれば分かる。ライ、行くぞ』


「仕方ない、廃村の教会へ向かうぞ」


 俺は皆にそう一声かけて馬車を進ませた。

 実はライカンスロープにとっても教会は苦手な場所。

 教会がバンパイヤの天敵であるように、ライカンスロープの天敵も教会なのだ。

 宗派によるが教会の中には、ライカンスロープがまだ生きていて、バンパイイヤ同様に滅ぼすべき対象だと考えている人間もいるのだ。

 幸いな事にその数は少ないと聞く。

 バンパイヤハンターの方が圧倒的に多い。


 まだ陽は高いが、廃村に行くまでに大分時間を喰う事になる。

 少し急ぐか。


 




 廃村に到着したのだが、日暮れまであと一刻ほどという時間に迫っている。

 結構急いだのだがな。

 仕方がない、今日のところは簡単な調査だけにするか。


 オーク達と俺達の馬車は、離れた所に止めてある。

 いざとなったら別れて逃げる作戦だ。

 二両の馬車それぞれに、オークを二人ずつ配置して直ぐに出せる様にしてある。


「ダイ、この教会で間違いないな?」


『ああ、ここから匂う。間違いないな』


 周囲を確認したところ、出入り口は正面と裏口の二ヶ所だ。


 一気に突入して陽が沈む前に倒す。

 無理そうなら直ぐに逃げる。


 正面突入は俺達で、裏口はオーク達が見張るだけにする。

 バンパイヤが裏口から逃げても追うなと、オーク達には伝えてある。


 勝負をつけるのは正面突入の俺達だ。


「準備は良いか、行くぞ!」


 俺は正面扉から教会内へと入り込んだ。













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